異業種からの出向受け入れで、社内に期待できる相乗効果とは?

異業種からの出向受け入れで、社内に期待できる相乗効果とは?

近年、在籍型出向が注目を集めています。在籍型出向を活用する上で知っておきたい、在籍型出向が増加している社会的背景や社内への相乗効果、注意点を解説します。

目次[非表示]

  1. 1.異業種からの出向受け入れで、社内に期待できる相乗効果とは?
  2. 2.出向の契約形態
    1. 2.1.出向者が出向先と新たに雇用関係を締結する「転籍出向」
    2. 2.2.出向元との雇用関係を維持して出向する「在籍型出向」
  3. 3.異業種からの出向が増加している背景
  4. 4.在籍型出向を利用する出向先企業のメリット
    1. 4.1.業界の慣例を覆す発想が生まれる
    2. 4.2.業務の改善点に気づける
    3. 4.3.従業員や経営層が新しい知見を得ることができる
    4. 4.4.社内が活性化する
  5. 5.異業種からの出向を受け入れる際の注意点
    1. 5.1.個別に面談をし、能力を発揮できる部署に配属する
    2. 5.2.出向者に対する給与の支払いや保険料を明確にし、説明する
    3. 5.3.社内のルールや社風について説明する
    4. 5.4.出向者に期待することを明確に伝える
  6. 6.出向者の立場に立った体制整備が重要

異業種からの出向受け入れで、社内に期待できる相乗効果とは?

自社の事業成長に停滞を感じたときや、さらなる飛躍を図りたいときに、異業種の人材を採用することは経営戦略のひとつです。しかし、自社の事業や社風に合った優秀な人材を採用するまでにかかるコストを考えると、そう簡単に実践できる戦略ではありません。

そんなときに検討したいのが、採用コストをかけずに異業種のノウハウを吸収できる「在籍型出向」です。

ここでは、異業種からの出向が増加している背景や在籍型出向のメリット、注意点などについて解説します。

出向の契約形態

出向は、経営戦略のひとつとして有効な手段です。まずは、出向の契約形態である「転籍出向」と「在籍型出向」の特徴について見ていきましょう。

出向者が出向先と新たに雇用関係を締結する「転籍出向」

転籍出向とは、出向者の方が出向元企業との雇用関係を解消し、出向先企業と新たに雇用関係を結ぶことです。雇用関係としては転職に近く、出向者の方が出向元企業に戻ることはありません。

出向元との雇用関係を維持して出向する「在籍型出向」

在籍型出向とは、出向者の方が出向元企業との雇用関係を維持したまま、出向先企業とも雇用関係を結ぶことです。在籍型出向における出向者の方は、あらかじめ両社で定めた雇用条件にもとづいて出向先企業で勤務をし、一定期間を経た後は出向元企業に戻ります。

異業種からの出向が増加している背景

在籍型出向は昭和の時代 からあった働き方ですが、近年特に注目を集め、多くの企業で導入されるようになりました。在籍型出向が増加しているのは、コロナ禍で事業を縮小せざるをえなくなり、一時的な人材過多に陥った企業が、従業員の雇用を維持する手段として導入を進めているからです。

例えば、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から旅行需要が減少した際には、余剰人員が出た航空会社やホテル業界から、小売や物流といった人手不足に悩む業界へ従業員が出向する例が多く見られました。

厚生労働省も、雇用維持の取り組みを支援するため、在籍型出向に賛同する企業の開拓や情報共有を推進しています。併せて、雇用に悩む事業主に対して、在籍型出向により従業員の雇用を維持する際の賃金や経費を支援する「産業雇用安定助成金」もスタートしました。

このように、在籍型出向は雇用調整から注目されるようになってきました。さらに、従業員が異なる業種で経験を積むことで、出向元企業への復帰後に、事業に好影響をもたらす効果も見えてきています。在籍型出向を研修のひとつとして取り入れる出向元企業や、事業拡大に必要な人材をスピーディーに確保する手段として在籍型出向を活用する出向先企業が増えているのです。

企業内の課題を解したいタイミングやニーズが合致した在籍型出向は、出向元企業、出向先企業、さらには新たなスキルやノウハウを習得できる出向者の方、3者にメリットがある仕組みなのです。

なお、「ステップ – 企業と人を健康でつなぐ」では、「マイナビ出向支援」によって初めて在籍型出向を実施し、雇用調整のひとつの方法として在籍型出向を継続的に利用するようになった事例を紹介しています。詳細は下記を参照ください。

【おすすめ参考記事】

  コロナ禍の在籍型出向マッチングで生まれる新たな価値 雇用維持・人材不足を乗り越えた先にある光明とは|ステップ – 企業と人を健康でつなぐ 在籍型出向支援サービス「マイナビ出向支援」による実際の出向成功事例解説。コロナ禍に、社員の出向を実施した側、受け入れた側、両社の経営者による対談。これまで縁もゆかりもなかった両社が、出向支援マッチングを経てかたや社員の雇用を守り、かたや人材不足を乗り越えた方法とは? 株式会社マイナビ

在籍型出向を利用する出向先企業のメリット

続いては、在籍型出向を利用するメリットを具体的にご紹介します。異業種からの出向を受け入れる企業には、どのような相乗効果が想定できるのでしょうか。

業界の慣例を覆す発想が生まれる

在籍型出向を利用すると、出向先企業に業界の慣例を覆すような発想が生まれる可能性があります。従業員は、特定の業界や企業の中に在籍し続けることで、既存の枠組みの中での発想に終始してしまいがちです。

在籍型出向の採用によって社内に異業種の人材の視点が入ると、まったく新しい事業のアイディアが浮かぶかもしれません。

業務の改善点に気づける

在籍型出向には、異業種出身者の視点によって業務改善点が見えてくるメリットもあります。企業内では習慣化している業務も、外部の人間から見ると改善すべき点があるように見えることは少なくありません。

異業種人材によるフラットな目線で、旧態依然とした習慣への指摘があると、社内環境の改善や経営判断の効率化が進みます。

従業員や経営層が新しい知見を得ることができる

異業種からの出向者の方が持っている知識やノウハウが、経営課題の解決につながることもあります。社内の人材からは得られない知見を、事業開発のスピードアップに活かせれば大きなメリットとなります。

社内が活性化する

在籍型出向によって、高いスキルや経験を有する人材が出向先企業に出向をしてくると、出向先企業の従業員の刺激になり、業務のモチベーションも上がります。人材育成の観点からも、ポジティブな効果が期待できます。

異業種からの出向を受け入れる際の注意点

在籍型出向には多くのメリットがありますが、注意点もあります。在籍型出向を受け入れる場合には、特に下記の4つの点に注意してください。

個別に面談をし、能力を発揮できる部署に配属する

出向先企業は、出向者の方と個別に面談の時間を取り、能力を発揮できる環境に配属するよう注意しましょう。その際、出向者の方の出向に対する意識や意欲、人となり、スキル、出向期間中に解消したい自身の課題などを確認してください。

さらに、人事担当者や現場の責任者、配属予定部署の上長など、仕事で関わる機会が多い人と出向者の方が直接話をする機会を設ければ、入社前に互いの信頼関係を醸成することができます。

出向者に対する給与の支払いや保険料を明確にし、説明する

在籍型出向の場合、出向者の方への給与の支払いについて、法律上の決まりはありません。一般的には、出向元企業と出向先企業が話し合い、下記2つのうちいずれかを選択することになります。

  • 出向元企業、出向先企業いずれかが出向者の方への給与を負担する
  • 出向元企業と出向先企業で、出向者の方への給与支払額の割合を決める

なお、 出向者の方に給与を多く支払う企業が、出向者の方の社会保険料も支払うことになるでしょう。このとき、出向元と出向先の加入している健保組合が異なれば、保険料率が変わる可能性もありますので、出向者の方への丁寧な説明が必要です。

社内のルールや社風について説明する

出向者の方は、新しい職場や仕事に少なからず不安を抱いています。ルールや社風の違いがストレスになることもあるでしょう。

少しでも早く職場に慣れてもらえるように、社内のルールや社風などについても事前に共有しておくことをおすすめします。

出向者に期待することを明確に伝える

出向者の方が出向期間中にやりたいこと、実現したいことを聞くだけでなく、出向先企業として出向者の方に期待することも伝えましょう。出向先企業の期待値を伝えると、出向者の方はやるべきことが明確になり、意欲的に仕事に取り組めるようになります。

具体的には、下記のような点を伝えます。

  • 業務の改善点に気づいたら、どんなことでも遠慮せずに言ってほしい
  • 社内の既存のやり方にとらわれず、積極的にアイディアを出してほしい
  • この事業の収益を120%まで伸ばしてほしい

出向者の立場に立った体制整備が重要

異業種からの出向受け入れは、採用コストを削減しながらも新しい知見を出向者の方から得られ、事業と従業員の成長を促すことができる有用な経営手段です。ただし、出向者の方に、期待どおりの活躍をしてもらうには、万全な受け入れ体制の準備が欠かせません。

異業種出向の効果を最大化するためにも、出向者の方への待遇の明確化やストレスケアは徹底しておきましょう。​​​​​​​

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<監修者>
丁海煌(ちょん・へふぁん)/1988年4月3日生まれ。弁護士/弁護士法人オルビス所属/弁護士登録後、一般民事事件、家事事件、刑事事件等の多種多様な訴訟業務に携わる。2020年からは韓国ソウルの大手ローファームにて、日韓企業間のM&Aや契約書諮問、人事労務に携わり、2022年2月に日本帰国。現在、韓国での知見を活かし、日本企業の韓国進出や韓国企業の日本進出のリーガルサポートや、企業の人事労務問題などを手掛けている。

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