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事業承継が必要な企業は増加 後継者不足の現状と対応策を探る

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文/横山 晴美

事業承継の課題を抱える会社は少なくありません。その理由には経営者の高齢化や、後継者を育てることが難しいなど、事業承継特有の要因があります。今回は事業承継の課題について見ていくとともに、課題を解決する選択肢となりうる前向きなM&Aについて解説します。

企業が抱える悩み「事業承継」の現状

額に手を当てて悩む経営者

日本政策金融公庫が発表した資料において、2020年1月末に行った全国の中小企業に対するアンケート結果によると、後継者が決まっている「決定企業」は12.5%にとどまっています。一方で「廃業予定企業」が52.6%と過半数を占めており、中小企業の事業承継は厳しい現状にあります。

【後継者の決定状況】
➢ 決定企業(後継者が決まっている) 12.5%
➢ 未定企業(後継者が決まっていない) 22.0%
➢ 時期尚早企業(まだ後継者問題を考える時期にない) 12.9%
➢ 廃業予定企業(自分の代で事業をやめるつもりである) 52.6%
※2020年1月末時点
日本政策金融公庫総合研究所「中小企業の事業承継に関するインターネット調査(2019年調査)」より

廃業予定企業がその理由として挙げたのは、「そもそも誰かに継いでもらいたいと思っていない」が最多(43.2%)でした。また、子どもがいないことや、子どもがいても継ぐ意思がないこと、もしくは子どもの有無にかかわらず後継者が見つからない、といった後継者不在による廃業は、あわせて「29.0%」となっています。

承継者不足の問題を深刻にしているのが、経営者の高齢化です。中小企業庁によると、中小企業経営者の年齢で最も多いのは66歳となっており、ここ20年で20歳近く高齢化が進んだことが指摘されています。

見過ごせないのは、廃業を予定している企業のなかには好業績の企業も存在することです。廃業によって貴重な技術やノウハウが失われてしまうのは日本経済にとって損失です。また従業員にとっても、通常ならば今後も収入が得られるはずの仕事に従事していながら、後継者問題で職場を失うのは大きなダメージでしょう。

事業承継における後継者不足の理由

誰もいないオフィス

事業承継といえば、「親族に事業を譲る」というイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。しかし「2020年版小規模企業白書」によると、親族以外の承継も一定の存在感を持っています。その場合「(親族以外の)役員・従業員」もしくは「社外の第三者」へ承継するケースが多く見られます。傾向として、経営者の在任期間が短いほど、親族への承継は少なく、従業員や社外の第三者といった親族以外への承継が増えているようです。経営者の在任期間が5年間未満の場合の事業承継では、親族外承継の割合が約65%にまで上がっています。

【図:経営者の在任期間別:現経営者と先代経営者との関係】

図:経営者の在任期間別の現経営者と先代経営者との関係

経営者の在任期間別の現経営者と先代経営者との関係
出典:中小企業庁「事業承継に関する現状と課題について」より

親族以外を後継者とすることを見据える企業が増えれば、後継者問題の解決に近づくと考えられます。しかし、現状は厳しいようです。東京商工リサーチによると、2020年に休廃業・解散した企業は、2000年の調査開始以降、最多となる4万9,698件(前年比14.6%増)を記録しました。
飲食業や宿泊業などサービス業の廃業が多かったことから、新型コロナウイルスによる休業や営業時間短縮も背景にあると見られます。しかし、それを差し引いても「前年比14.6%増」の数字は重く受け止めるべきでしょう。

後継者確立までの課題

後継者問題は、問題が発生しても解決しにくい側面があります。それは後継者が親族である場合、家族問題がからんで相談内容がセンシティブになり、専門家が立ち入りにくい部分が生じるからです。
また後継者が親族でない場合も、後継者不足である事実が自社の弱みにつながりかねないため、公にしなくない、といった状況に陥りがちです。例えば金融機関との取引において、後継者不足がその後の融資で不利に働く懸念があるため、相談をためらうケースもあるようです。

後継者の対象を親族以外の従業員や社外にまで広げることは、状況を打開するひとつの方法になります。それでも次のような課題が残ります。

➢ 親族外へと範囲を広げたとしても後継を任せたい人材がいるとは限らない
➢ 後継を任せたい人材がいたとしても、育成に時間がかかる
➢ 新たな人材を後継者にするにあたり、関係者との調整や理解が必要となる
➢ それまでの事業において経営者の信頼や力量が大きいと、事業承継により一時的に事業状況が悪化するリスクが高くなる

またこれらの課題をクリアしたとしても、後継者には自社株を引継ぐための資金が必要です。救済策として後継者に資金融資する措置もあります。ただし、そうした資金融資は審査があり、必ず受けられるというものではありません。

事業継承の解決となる「M&A」という選択肢

解決策がひらめくイメージ

親族・親族外を見渡しても後継者がいない場合の選択肢として「M&A」があります。M&Aとは企業による合併・買収・分割などのことで、広義では資本提携や業務提携も含まれ、多様性のある有効な経営手法とされています。M&Aによる事業の継続は、従業員を守る手立ての1つと言えるでしょう。

さまざまな手法があるなかで、ここでは企業買収のケース、そのなかでも特に「事業譲渡」「株式譲渡」に絞って紹介します。

事業譲渡

企業が運営している事業を売買するのが事業譲渡です。企業そのものの包括的な譲渡ではないため、柔軟な譲渡が可能です。
経営している複数の事業のうちすべてを譲渡することができるだけでなく、「特定の事業のみ」「AとBの事業のみ」のように範囲を決めて譲渡することもできます。一部経営を自社で存続させることもできるため、完全な廃業も避けられます。「Cの事業は後継者がいるが、それ以外の事業は継続が難しい」といった、イレギュラーなケースでも対応できるのがメリットです。

ただし、事業を個別に譲渡するため手続きが煩雑になりがちです。例えば譲渡につき、従業員との雇用契約や取引先の承認を個別に受けなければなりません。多角経営をしている企業が複数事業を譲渡する場合、事業の分だけ手間も増えてしまいます。

株式譲渡

売り手企業の保有株式を買い手企業が受け取り、その対価として現金を支払う手法です。「特定の部門のみ」のような譲渡はできず、包括的な譲渡を実行します。事業ではなく株式を売却するため、取締役会や株主総会によって承認を得ます。事業承継と比較すると手続きにかかる手間は比較的少ないでしょう。

表:【事業譲渡と株式譲渡の違い】

表:事業譲渡と株式譲渡の違い

事業譲渡と株式譲渡の違い

事業承継のマッチングサービスとは

笑顔で働く従業員

M&Aに魅力を感じても、自社を評価してくれる企業に出会えなければM&Aは実現しません。仮にM&Aを申し出る企業がいたとしても、その価格が適切と感じられなければ、多くの経営者は断ることでしょう。納得できるM&Aにするには、より良い相手とつながる必要があります。とはいえ、M&Aを考える企業は限られており、良い出会いを得るまでに時間がかかるかもしれません。

そんなときに活用したいのが、事業譲渡やM&Aのマッチングサービスです。後継者が見つからず、廃業を予定している企業ならば利用を検討してみるといいでしょう。質の高いマッチング会社を選ぶ際のポイントは次のとおりです。

➢ サービス提供会社自体が信用できるか、倒産などの恐れはないか
➢ 取り扱い件数・業種が多そうなマッチングサービスであるか
➢ じっくり話を聞いてくれるマッチングサービスであるか
➢ 実績のあるマッチングサービスであるか

自社と同じようなケースで実績があるかを、問い合わせフォームやメールなど文字で残る形で問い合わせるなどして、複数社確認するとよいでしょう。
また、中小企業庁が運用する「M&A支援機関」の登録を受けているかどうかも、必ず確認したいところです。M&A支援機関認定の制度は、中小企業が安心してM&Aに取り組める基盤を構築するために設けられたものであり、登録企業は、中小M&Aガイドラインを遵守するように求められているため、安定した品質の対応が期待できます。

まとめ:長期的な視野で事業継承の方向性を考えてみよう

ビル群と働く人々の影

事業承継の問題はすぐに解決できるものではありません。後継者探しや育成、資金面など、多くの課題があるからです。急いで結果を出そうとしても上手くいくとは考えにくく、前もって考えて根回ししておくことが望ましいでしょう。しかし、どうしても後継者のめどがつかないときや、じっくり解決していく時間的余裕がない場合は、M&Aも視野にいれてみてはいかがでしょうか。自社の事業を将来に生かし、従業員を守る事業承継を検討してみましょう。

【プロフィール】
横山 晴美(よこやま・はるみ)
ライフプラン応援事務所代表 AFP FP2級技能士
2013 年に FP として独立。一貫して個人の「家計」と向き合う。お金の不安を抱える人が主体的にライフプランを設計できるよう、住宅や保険などお金の知識を広く伝える情報サイトを立ち上げる。またライフプランの一環として教育制度や働き方関連法など広く知見を持つ。

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