5月病とは?うつ気味な社員の5月病対策について

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文/大久保 ゆうこ

新年度を迎え、入社・転職や異動などで多くの社員が環境の変化を経験します。こうした人たちがゴールデンウィークの連休を過ぎたころから、気力が落ちたり体調が優れなくなったりすることを5月病といいます。医学的には、「適応障害」や「軽度のうつ病」と診断されるケースが多く見られます。今回は5月病について、どんな状態になるのか、自分で行える予防法、なったときの対策、5月病と思われる人への対応方法について、臨床心理士・精神保健福祉士資格を持つカウンセラーの視点からお伝えします。

多くの人がうつっぽくなる5月病とは?

パソコン画面内で握手を求める人と、その画面を見る人の手

そもそも「5月病」では、どのような状態になるのでしょうか。まずは、その傾向について見てみましょう。

5月病の具体的な症状は?

2019年にマイナビが、5月病になったことがある人を対象に行った調査によると、5月病の具体的な症状として最も回答が多かったのが、「やる気が出ない(64.2%)」でした。次いで、「疲労感がある(49.6%)」、「気分が優れない(42.9%)」、「人との関わりが億劫になる(38.8%)」、「なんとなく不安な感じが続く(35.8%)」となっています。

一般的に5月病の原因としては「新しい環境になじめない」、「人間関係をうまくつくることができない」、「理想と現実のギャップが埋められない」、「入社・転職がゴールとなってしまい目標を見失う」「アクティブに動きすぎて疲れてしまった」といった理由を挙げることができます。

入社や異動・転職などによる環境の変化は、大きなストレスがかかります。「自分は問題ない」と思っていても、いつの間にか調子が優れなくなったり、落ち込んだりしていることもありえます。5月病がどのようなものかを理解して、対策を立てておきましょう。

マイナビによるアンケート調査結果

「五月病」経験者268名に症状と対処法を聞いた(単数回答n=268)
出典:「五月病」経験者268名に症状と対処法を聞いた|マイナビニュース

5月病の疑いのある状態と性格の傾向

5月病が疑われる状態としては、気分が落ち込んだり、物事をネガティブに考えるようになったり、仕事や家事などに集中できなくなるなどが挙げられます。体調面では、疲れやすくなったり、よく眠れなかったり、食欲がでないまたは食べ過ぎてしまう、下痢になるなどの症状が出てくることもあります。
5月病になりやすい性格として考えられるのは、まじめで責任感があり、忍耐力のある人、内向的な人といわれています。これらはうつ病になりやすい人の特徴とよく似ています。がんばりすぎてストレスをためないように日頃から気をつけることで、5月病を防ぐだけでなくうつ病予防にもつながります。

うつ気味・連休明けでやる気が出ない社員が自分で行える対策

青空の中に飛んでいるオレンジ色のクレイターゲットディスク

先述したマイナビの調査では、「症状が出た後に取った対策」についても質問しています。その調査結果では、「趣味に没頭した」「気晴らしに旅行に出かけた」などが挙げられています。「何もしなかった」という人も多かったですが、今回は改善するための対策に焦点を当てて話を進めます。
趣味、旅行については、5月病になりやすい人の特徴を考えると、こうした行動は理にかなった対策だと思われます。なぜなら、5月病になりやすいような真面目で責任感の強い人は、相手に合わせてがんばりすぎてしまい、自分の気持ちを過度に抑えてしまう傾向があるからです。挙げられた「趣味」や「旅行」は、自分の気持ちを表現したり満たしたりする行動であり、自分を取り戻して回復するために有効な方法といえます。

そのほか、「睡眠を取る」、「昼間に太陽の光を浴びる時間を増やした」といった回答も多く見られました。これらの行動は、自律神経を整えるのに役立つなど、身体面の回復を促すために理にかなった方法です。詳しくは次の項目で説明します。

心身のストレスを緩和して、体調を整えるための対処法とは

環境の変化によるストレスは、心身にさまざまな影響を与えます。ストレスを緩和しながら体調を整える方法として、日常生活でできることから始めてみましょう。「睡眠」「運動」「日光浴」の3つの視点から対処法のポイントを紹介します。

睡眠

睡眠は、体を休めるためだけに行うものではありません。記憶の整理・定着や、気分の上がり下がりにも影響するほか、免疫機能を正常に働かせるためにも不可欠です。心身の健康に大きく関わることから、睡眠不足が続くとうつ病になりやすくなるだけでなく、高血圧や脂質異常症などの生活習慣病になりやすくなることも指摘されています。ゆっくり眠れる環境を作り、十分な睡眠時間を確保することが大切です。7時間以上の睡眠時間をつくり、次の日に疲れを持ち越さないようにすることをおすすめします。

運動

ウォーキングなどの軽い運動は、うつ予防・軽度のうつ病や不安な気分の改善に効果があることが研究で示されています。(注:文末の参考文献「うつ病と運動」参照)週2~3回程度、1日5分くらいから開始し、少しずつ距離を伸ばしていくのがおすすめです。個人差はあるものの、軽い運動を20~30分行うだけでも効果的です。やってみて気持ちのいい範囲で行いましょう。

日光浴

朝の日の光を浴びることで体内リズムが整います。また、昼間に日光を感知することで、夜に分泌されるメラトニン(眠りを促すホルモン)が増えるため、夜の良質な睡眠につながります。ウォーキングを兼ねて朝日を浴びる時間を作ると効率的です。

連休から休み明けまでどのように過ごしたらいいか

連休がある場合などに、普段できない仕事をする人もいるかもしれません。それもいいのですが、自分のやりたいことにも時間を使うことをおすすめします。おいしいものを食べる、ボーっとする、友達としゃべるなど、自分らしく過ごせる時間をつくりましょう。そして、できるだけ入眠・起床時間など生活リズムを崩さずに過ごすことが理想です。

また、連休中から休み明けの仕事への準備をしなければならないのなら、「ギリギリ合格」と思えるレベルを目指しましょう。完璧を求めるとその仕事のことばかり考えるようになり、休めません。早めに終わらせ、休み後半に余裕があればブラッシュアップするくらいの心もちで行きましょう。休みボケはある方が自然です。
休み明けに仕事のスケジュールを考える際は、一度に対応しようとせず、優先順位を考えて、メモなどに書きだしておくといいかもしれません。マストなものだけ片付けばOK、できるだけ自分のペースで仕事を再開できるようにしましょう。

朝から好きなものを食べたり、仕事が終わったあとの自分へのご褒美を考えたり、休み明けの楽しみを織り交ぜながら準備するのもおすすめです。加えて、連休明け初日の服装などは、自分の好みに合っていて、楽に過ごせるものにするといいでしょう。
好きな色のネクタイを選んだり、着心地の良いシャツや腹回りがきつくないパンツを選んだり……。気分が上がり、体も楽な服装はストレスを減らしてくれます。

5月病の傾向がある上司や後輩への対応方法は?

模型を囲んで打ち合わせをする男女のビジネスパーソン

もし、職場に5月病の傾向がある人がいたら、どのように対応したらよいのでしょうか。5月病になりやすい人の中には、休むことにネガティブな印象をもち、毎日出社してがんばり続ける人がいます。「休むことで周りに迷惑をかける」という認識が強く、周囲から休むことをすすめられると戦力外通告を受けたかのように捉えてしまうこともあります。本人に心理的負担を与えないようにしながら、コミュニケーションをとるポイントを紹介します。

相手の変化に気づいた自分の気持ちを率直に伝える

「最近、普段より顔色が悪いように見えてなんだか心配です」といったように、相手に起こっている変化を具体的に伝えましょう。その際、「心配です」「気がかりです」のように、自分の気持ちを伝えるのがポイントです。
相手の変化と自分の気持ちを一緒に伝えることで、意図が伝わりやすくなります。やってはいけないのは、一般論を用いて伝えること。「普通は、このくらいになったら心配になるでしょう」「常識で考えるとこんな時間までやらないですよ」といった言い方は、相手に心理的負担を与えてしまいます。

能力を認めていることを伝える

いつもと様子が違うことや調子が悪いことを指摘されると、自分へのネガティブな評価と受け取ってしまう人がいます。「現状を心配していて、ネガティブな評価を伝えているわけではない」ということを示すために、相手の良いところを言葉にして伝えましょう。「いつも、たくさんの登録手続きを正確にやってくれて助かっています」など。上司に対しては「〇〇さんには、いつも仕事でサポートしてもらって感謝しているんです」というように感謝の気持ちを伝えるといいでしょう。そのうえで温かく声をかけたり、ときに話を聞いたりすることも本人の助けになります。

休むように指示するときは「休んで回復するのも仕事」であることを伝える

場合によっては仕事を減らしたり、休むように伝えたりすることもあるでしょう。そのときは、本人に「休むことをすすめられたのは自分が戦力外だからだ」とネガティブに受け取られないために、ポジティブな言葉で伝えます。後輩に対しては「休むことも仕事のひとつ。良い休みを取ることで、良い仕事ができるようになる」など、社会人教育の一環として説明すると理解してもらいやすくなります。一方で、上司や先輩にあたる人に対しては「自分が調子を崩したときに安心して休めますから、そのためにもまずは〇〇さんが休んでください。」のように、相手の立場を考えて伝えるといいでしょう。

1か月過ぎても改善しない場合は医療機関へ

ハートのモチーフを持つ手

気力が落ちたままであったり不眠が続いたりするなど、うつ気味の症状が1か月を過ぎても改善が見られない場合、一度、病院やクリニックなどの医療機関で診察を受けることをおすすめします。その際は、心療内科か精神科を受診しましょう。ほとんどの医療機関が予約制のため、事前に連絡をしておくと安心です。病院・クリニックを選ぶ際は、ホームページを見たり、評判を聞いたりしながら自分に合いそうなところを探すとよいでしょう。

医療機関ではどのような診察・治療を行うか

初診時には、症状などを詳しく聞いてくれます。病院によって異なるものの、20分~1時間程度、話を聞く時間を設けている医師もいます。ただし初診以降では、15分程度の問診になることが多く、時間が限られているのであまり深い話ができません。基本的には、気分を安定させたり、症状を緩和させたりする効果を持つ薬での治療になります。希望であれば漢方薬を出してもらえる場合もあります。

心理面のケアを希望する場合はカウンセラーのいる病院へ

心療内科や精神科がある病院・クリニックのなかには、臨床心理士などのカウンセラーが在籍しているところもあります。薬の処方は医師が行い、症状や必要性に応じてカウンセラーが対話による心理療法を行うケースが多いです。
医師以外によるカウンセリングは、保険適用外となる場合も多い点に注意が必要ですが、薬によって症状を改善させるだけでなく、自分の性格や物事の考え方などを見直し修正していく必要があると感じたら、カウンセリングを受けることも検討してみましょう。
カウンセリングを受けたい場合は、受診を希望する病院でカウンセリングが行われているかを事前に確認するか、インターネットを活用してカウンセリング対応可能な病院を探してみるといいでしょう。

カウンセリングはさまざまな場所で受けられますが、医療機関に在籍しているカウンセラーはある程度研鑽を積んでいる可能性が高いうえに、主治医と連携しながら対応してくれます。カウンセリングはつらいことや苦しいことも話すため、ときにはそれが心の不調を抱える人には負担となり、病気の悪化を招くこともありますから、カウンセラー選びはとても大切です。医療機関でのカウンセリングであれば、こうした点においても比較的安心です。

カウンセリングを受ける際は、方法よりも信頼関係で選ぶ

カウンセラーが大切にしていることのひとつに、カウンセリングを行ううえでの信頼関係を指す「ラポール」があります。信頼関係なしに心の深い問題に触れるのはとても危険なことです。
カウンセラーとして大切なのは相手を傷つけないことと、相談者のことを理解すること。受ける側にとっても、「この人ならわかってくれる」「この人のアドバイスなら受け入れられる」と思えるような信頼関係ができていてこそ安心して心を開き、心のケアを受けられるのではないでしょうか。

著名な心理療法の研究者ランバートは、さまざまな臨床データをもとにセラピー効果の要因を割り出しています。それによると、「技法」の要因は15%、「セラピーにおける人間関係」は、その倍の30%としています。(注:文末の参考文献「心理療法の共通要因に関する考察」9p参照)
つまり、カウンセリングのやり方よりも、カウンセラーとの信頼関係の方がカウンセリングの効果を左右するといわれているのです。
信頼関係を築きやすく技法にも精通したカウンセラーの多くは、研鑽を積み続けています。「研修を受け続けているようなカウンセラーをお願いしたい」「年齢が近い人をお願いしたい」など、直接病院で希望を伝えるといいでしょう。それでも、カウンセリングを数回受けて信頼関係が築きにくいと思ったら、別のところを探すのもひとつの方法です。

まとめ:5月病かなと思ったら、早めの対策を

オフィス街に立つ笑顔の女性

5月病もうつっぽさも、がんばったからこそ出る症状です。どんなに性能のいい車でもガソリンがなければ走れないように、人間も心のエネルギーが切れると動かないようにできています。自分なりの対策をたてて心のエネルギーを貯め、調子が悪いときはゆっくり動き、これからの季節も乗り越えていきましょう。

専門家に相談するときに、「~をすれば治る」といった断定調の宣伝文句を多用する人物や団体などは怪しいと思った方がいいでしょう。効果には個人差があり、認知行動療法のように科学的効果が示されているセラピーですら「治る」と表明することはありません。また、統計的に効果が示されているからといって、その療法が必ず自分に合うかどうかは、やってみないとわかりません。医療機関やカウンセラーとの相性を大切にして、自分に合った方法を探ってみましょう。

【プロフィール】
大久保 ゆうこ(おおくぼ・ゆうこ)
臨床心理士 公認心理師 精神保健福祉士
どのような人でも自分らしい人生を生きるために。10代から高齢者まで、病気や障害に関わらず幅広く相談に応じている。現在は心療内科やEAP(従業員支援プログラム)電話相談、研修講師として活躍。著書に『食べる順番健康法-好きなものはがまんしないでいい』がある。

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