健康経営を行う企業が使える助成金・補助金10選

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文/深石 圭介 社会保険労務士

こんにちは、社会保険労務士の深石圭介です。
企業の健康経営については、さまざまな雇用関係の助成金があるため、ぜひ活用したいもの。残業の削減や出産育児休暇の付与、生産性向上や受動喫煙防止、テレワークなど広範囲な施策に活用できる助成金10選をご紹介します。
助成金は毎年予算を使い切るといったん受付を停止し、翌年また新年度予算を得て受付を再開する場合が多いので、この記事を参考に2023年の助成金獲得を目指してください。

健康経営企業が使える助成金・補助金(1):業務改善助成金 通常コース・特例コース

★どんな助成金?

中小企業・小規模事業者において、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)の引き上げを図るための制度です。健康経営につながる生産性向上のための設備投資(機械設備、POSシステム等の導入)などを行い、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、設備投資費用の一部を経費助成します。
特例コースの場合は支給額が減少するものの、支給要件のハードルが低くなりますので、状況に応じてコースを選んで申請しましょう。

★いくらもらえる?(通常コースの場合)

引き上げ前の企業内の最低賃金と、引き上げる幅、また対象人数によって変わります。

・最低賃金870円未満:助成率9/10(生産性要件をクリアしているかは問わない)
・最低賃金870円以上920円未満:助成率4/5(生産性要件クリアで助成率9/10)
・最低賃金920円以上:助成率3/4(生産性要件クリアで助成率4/5)

支給金額の上限額は、引き上げ額30~90円以上で上限30~600万円、引き上げる人数によっても変動します。
例外で上限額が大きく上がるのは、事業場内最低賃金が920円未満の事業場、あるいは売上高などの直近3カ月間の月平均値が前年、前々年または3年前の同じ月に比べて、15%以上減少している事業者になります。

★受給のポイント

確認することは、会社の事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内・事業場規模100人以下であることです。
まずは、都道府県労働局に申請し、助成金の交付決定通知を受けます。さらに就業規則等に規定し、申請後に事業場内最低賃金の引き上げ、設備投資等を行います。このような業務改善を行った後に、その費用を提示しつつ支給申請を行いましょう。

健康経営企業が使える助成金・補助金(2):受動喫煙防止対策助成金

★どんな助成金?

受動喫煙による健康障害防止等を図るための助成金です。中小企業事業主が受動喫煙防止対策を実施するために必要な経費のうち、一定の基準を満たす喫煙専用室等の設置にかかる工費、設備費、備品費、機械装置費などに対して費用の一部を助成するものです。

★いくらもらえる?

喫煙専用室等の設置・改修にかかる費用の1/2(支給上限100万円、または喫煙室等の単位面積あたりの助成対象経費上限額60万円/㎡、のどちらか低い方)です。
日本標準産業分類における飲食店を営んでいる事業場は2/3になります。

★受給のポイント

少なくともアルバイト1人以上を雇用している事業所で、喫煙室を設置する措置をする事業主が受給できます。
工事の発注、施工を行う前に、どのような施設を建てるのかを明らかにして、都道府県労働局への交付申請が必要となります。年度内に工事が終わった後も、事業実績報告(環境の審査など)を行い、請求書を提出することになります。

※令和4(2022)年度の交付申請は令和5(2023)年1月31日まで。

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健康経営企業が使える助成金・補助金(3):人材確保等支援助成金 テレワークコース

★どんな助成金?

労働者の生活と健康に配慮し、多様な働き方やワークライフバランスのため、終日在宅で就業するテレワークを新規で導入する、もしくは終日サテライトオフィスで就業するテレワークを活用する中小企業事業主を支援するものです。
導入時の助成(機器等導入助成)と、その後の成果として離職率の基準を満たした場合の助成(目標達成助成)があります。

★いくらもらえる?

中小事業主のみ受給可能です。機器等導入助成ではテレワーク導入にかかる経費のうち、30%が支払われます。その後、目標達成助成として離職率が一定水準を下回った場合は20%、生産量要件を達成すれば35%が支払われます。
ただし、どちらの助成も1企業あたり100万円、またはテレワーク対象労働者1人あたり20万円のうち低い方の金額が上限となります。

★受給のポイント

機器等導入助成においては評価期間(3カ月)に、在宅またはサテライトオフィスでのテレワークを実施することが必要です。その間に達成すべき目標は以下の2つです。

・評価期間に1回以上、対象労働者全員に、終日在宅で就業するテレワークを実施すること
・対象労働者が終日在宅でテレワークを実施した日数の週間平均を、1回以上とすること

目標達成助成における、離職率目標は以下の2つです。

・計画期間後1年間の離職率が、計画提出前1年間の離職率以下であること
・計画期間後1年間の離職率が30%以下、または評価期間の前後でテレワーク率が向上していること

健康経営企業が使える助成金・補助金(4):新型コロナウイルス感染症 母性健康管理措置 休暇取得支援コース・休暇制度導入助成金

★どんな助成金?

これらの助成金は、どちらも妊娠中の労働者の健康目的とする休暇付与の助成金です。出産直前以外の産前期間も休めるような制度を作って休ませることが対象となります。
休暇制度導入助成金は休暇取得支援コースの「小型版」でほぼ同じものですが、両方受給することも可能です。

★いくらもらえる?

休暇取得支援コースは対象労働者1人あたり 28.5万円、1事業所あたり5人まで。与える休暇は1人あたり20日以上。休暇制度導入助成金は1事業所あたり1回限りで15万円、与える休暇は5日以上です。

★受給のポイント

産前・産後休暇をはじめとする母性健康管理措置を行う必要があります。休暇の付与を就業規則等に規定し、医師または助産師の指導に基づき「母性健康管理指導事項連絡カード」を提出します。
休暇取得支援コースの場合、対象労働者の有給休暇延べ日数が合計20日に達した日の翌日以降、休暇制度導入助成金は5日に達した日の翌日以降から申請可能です。

健康経営企業が使える助成金・補助金(5):中小企業子ども・子育て支援環境整備事業費補助金

★どんな助成金?

くるみん認定に関する助成金です。くるみん認定を受けて、健康のための労働者の業務負担軽減や残業の削減のための施策等を行った場合、その経費補助として定額の助成金が出ます。
くるみんプラス認定、プラチナくるみん認定、さらに、プラチナくるみんプラス認定も対象になりますが、トライくるみん認定は対象になりません。

★いくらもらえる?

1企業につき50万円が支給されます。1つの措置でも複数措置しても、額は変わりません。くるみんは年度で申請するものですので、申請が可能であれば、令和9年度まで毎年申請できます。

★受給のポイント

厚労省のくるみん認定等を受けた企業は、さらに以下のような取り組みをする必要があります。

・育児休業等取得者の代替要員の確保や、代替業務に対応した賃金の支払い等
・労働者の子育てを支援する残業の制限、短時間勤務等の制度の導入・周知等
・労働者の業務負担の軽減や残業の削減などを図るための労働者の確保等
・年次有給休暇の取得促進、コンサルタントを活用した職場環境改善のための取り組み等

これらを行い、成果を報告する形で支給申請を行います。

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健康経営企業が使える助成金・補助金(6):エイジフレンドリー補助金

★どんな助成金?

高年齢労働者に対する設備投資の補助金です。60歳以上の高年齢労働者を常時1人以上雇用する企業が対象で、働く高齢者の健康や体力の状況の把握等、運動指導、栄養指導、保健指導、メンタルヘルスケアの実施が必要です。

★いくらもらえる?

対象となる経費の1/2(上限額100万円)が支給されます。複数の取り組みを行った場合でも100万円が上限です。

★受給のポイント

60歳以上の高年齢労働者を常時1人以上雇用する企業が対象です。また、以下の措置のいずれか、または複数を行う必要があります。

・設備・装置の導入で、転倒災害防止策、危険を知らせるための配慮、暑熱な環境への対応、腰痛の対応等
・安全で健康に働くための運動指導、栄養指導、保健指導、メンタルヘルスケアの実施等
・加齢に伴う労働災害リスク増大を理解促進させるための、教育VR技術を活用した危険体感教育等

※令和4(2022)年度分の申請受付は終了。例年、5月頃から申請受付が始まります。

健康経営企業が使える助成金・補助金(7):65 歳超雇用推進助成金 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース

★どんな助成金?

高年齢者の雇用管理制度の導入等に要した経費を助成します。法定の健康診断以外の健康管理制度(人間ドックまたは生活習慣病予防検診)の導入が対象に入っています。

★いくらもらえる?

初回に限り、支給金額上限の50万円が支給されます。2回目以降の申請は、50万円を上限とする経費の実費を対象経費として、雇用管理整備計画の実施期間内に実施し、支給申請日までに支払いが完了した対象経費の60%、生産性要件をクリアした場合は75%が支給されます。

※中小企業事業主以外は45%、生産性要件をクリアした場合は60%
支給対象経費とは、雇用管理制度の整備等の実施に要した経費、雇用管理制度の導入または見直しに必要な専門家等に対する委託費、コンサルタントとの相談に要した経費などが該当します。

★受給のポイント

就業規則等で高年齢雇用確保措置を行っていること、雇用管理整備計画の終了日の翌日から6カ月以上継続して雇用され、支給申請日の前日において申請事業主に1年以上継続して雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者がいることが必要です。
要件を踏まえた上で、専門家への委託費、コンサルタントとの相談経費、能力評価制度等の導入等を計画に盛り込む必要があります。「高年齢者だけのための」制度であることがポイントです。
支給申請期間は、雇用管理整備計画の終了日翌日から起算して、6カ月を経過する日の翌日から2カ月以内です。

※令和4(2022)年度分の申請受付は終了。

健康経営企業が使える助成金・補助金(8):働き方改革推進支援助成金 労働時間短縮・年休促進支援コース

★どんな助成金?

健康のための労働時間の短縮や、特別休暇等の取得促進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主を助成します。
以下のいずれかの目標を1つ以上実施して、かかった費用の一部が支給されます。

・36協定における月の時間外労働時間数の縮減
※計画が認定された後に、就業規則の作成・変更を行い、必要な手続きを経て施行します。延長する労働時間数の上限を少なくとも60時間以下に設定することが必要です。

・年次有給休暇の計画的付与制度を新たに導入
・時間単位の年次有給休暇制度を新たに導入
・特別休暇の制度を新たに導入
※特別休暇は、病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇、あるいは不妊治療を行う者など、特に配慮を必要とする労働者のために付与される休暇などの内容を満たす規定です。

上記の成果目標に加えて、対象事業場で指定する労働者の時間あたり3%以上の賃金引き上げを行うと加算があります。
目標を達成すれば経費の助成が出る仕組みですので、達成した目標数が多いほど助成金額は上がります。

★いくらもらえる?

費用の×3/4(常時使用する労働者数が30名以下、所要額が30万円を超える場合の補助率は4/5)、助成額は最大490万円で、目標ごとに上限額があります。

・36協定における月の時間外労働時間数の縮減の上限額

現状の時間外労働が月80時間超の協定の場合
月60時間以下に設定:100万円
60~80時間の設定:50万円

時間外労働が月60~80時間の協定の場合
月60時間以下に設定:50万円
・年次有給休暇の計画的付与制度を新たに導入した場合の上限額:50万円
・時間単位の年次有給休暇制度を整備した場合の上限額:25万円
・特別休暇制度1つ以上を新たに導入した場合の上限額:25万円

これに加えて、賃金引き上げの達成時の加算額や人数、引き上げ額が3%か5%かによって、15~240万円の加算があります。

★受給のポイント

上記の環境整備目標を達成するため、以下の取り組みを行う必要があります。

・就業規則・労使協定等の作成・変更(時間外・休日労働に関する規定の整備等)
・労務管理者、労働者への研修(業務研修を含む)の周知、啓発
・外部専門家によるコンサルティング
・労務管理用ソフトウェア、労務管理用機器、デジタル式運行記録計の導入・更新
・労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新
・人材確保に向けた取り組み等

※申請と予算残額の状況を踏まえて、令和4(2022)年度の交付申請の受付は10月4日に一旦停止しました。受付再開の時期は未定で、再開の場合はホームページで告知。

健康経営企業が使える助成金・補助金(9):働き方改革推進支援助成金 勤務間インターバル導入コース

★どんな助成金?

健康のため「終業から次の始業までの休息時間を確保することを定めている」勤務間インターバル(9時間以上)制度導入にかかる、規定や機器の購入など、各種経費の一部を助成するものです。

★いくらもらえる?

取り組みの実施に要した費用の3/4を成果目標の達成状況に応じて支給されます(常時使用する労働者数が30名以下、所要額が30万円を超える場合の補助率は4/5)。
上限額はインターバルの時間数等に応じ、9時間以上11時間未満の場合は新規導入で80万円、適用範囲の拡大または時間延長で40万円。11時間以上の場合は新規導入で100万円、適用範囲の拡大または時間延長で50万円となります。

また、賃金引き上げ達成時の加算額があります。
3%以上の場合は人数によって15~150万円、5%以上の場合は人数によって24~240万円となります。

★受給のポイント

新規導入でも、すでに導入している企業でも適用範囲、時間の拡大をすれば助成金が出ます。措置をする上で、以下の長時間労働対策のいずれか1つ以上実施した場合はその経費が対象になります。

・労務管理担当者、労働者に対する研修、周知・啓発
・外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など)によるコンサルティング
・就業規則・労使協定等の作成・変更、人材確保に向けた取り組み
・労務管理用ソフトウェア、労務管理用機器の導入・更新
・デジタル式運行記録計など労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新

これらのことを行う実施計画を作り、承認されてから上記各種の措置を行い、費用を支出します。計画は少なくとも措置を行う2カ月前には提出します。
その計画に付随して、労働時間等設定改善委員会(労使の話し合いの場)の設置を行い、議事録を作る、労働時間等に関する個々の苦情、意見等を受けつけるための担当者の選任を行う等の施策が必要です。

※令和4(2022)年度の交付申請は11月30日まで。

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健康経営企業が使える助成金・補助金(10):働き方改革推進支援助成金 労働時間適正管理推進コース

★どんな助成金?

健康のための労働時間の適正管理を推進する中小企業事業主に対して、システム導入の費用を助成するものです。労働時間管理のITシステムを導入する企業におすすめです。

以下3つの目標を達成することが必要になります。

・勤怠管理と賃金計算等をリンクさせる統合管理ITシステムを用いた労働時間管理方法を採用すること
・労務管理書類について5年間保存することを就業規則等に規定すること
・「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」にかかる研修を労働者と労務管理担当者に実施すること

また、賃金を3%以上、または5%以上引き上げることも目標として設定でき、引き上げ率に応じて助成額が加算されます。

★いくらもらえる?

かかった費用の3/4を助成します(常時使用する労働者数が30名以下、所要額が30万円を超える場合の補助率は4/5)。上限額は、下記のいずれか低い方の額です。

・100万円
・対象経費の合計額×補助率3/4(または4/5)

賃金引き上げを成果目標に加えた場合の加算は15~240万円で、すべて合わせると助成上限額は最大340万円です。

★受給のポイント

IT化の助成対象の経費を何の名目で使うか、IT化によって目標を達成することがポイントです。以下のような取り組みを1つ以上実施しましょう。

・就業規則等の作成・変更費用、研修費用(業務研修を含む)
・外部専門家によるコンサルティング費用
・労務管理用機器等の導入・更新費用
・労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新費用
・人材確保等のための費用等 労働時間短縮や生産性向上に向けた取り組みに必要な経費

※令和4(2022)年度の交付申請は11月30日まで。

まとめ

「健康経営」のための雇用関係助成金は、具体的に設備投資を行い、制度を活用する利用者がいることが重要です。何をやるのか事前に考え、構想がまとまったら、それらの行動を起こす前に社労士等に相談するようにしましょう。

出典

グレースーツにネクタイの社会保険労務士で労務管理事務所新労社代表、深石圭介さん

深石圭介(ふかいし・けいすけ)
社会保険労務士 労務管理事務所新労社代表
1992年新潟大学法学部卒業。以後、会計事務所に入所。さまざまな業種の企業へのサービスで主として労務分野のコンサルティングを経験。
2004年に開業。得意分野は雇用関連助成金の申請、それに引き続く中小企業のための実践的な労務管理制度運用の提案。現在は賃金アップを含めた「新しい資本主義」助成金に注目し、さまざまなコンサルティング・ツールを用いて実践中。著書として「雇用関係助成金 申請・手続マニュアル」(日本法令)がある。

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