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仕事と介護の両立のポイントとは?企業と従業員の対応策と制度を解説

少子高齢化が進む中、親の介護と仕事を両立する「ビジネスケアラー」が増加しています。介護は誰にとっても突然始まる可能性があり、企業にとっても従業員の離職や生産性の低下に直結する重要な課題です。
介護をしながら働き続けるには、従業員が制度やサービスを適切に活用できること、そして企業側が柔軟かつ実効性のある支援体制を整えることが不可欠です。

本記事では、厚生労働省のマニュアルなどをもとに、従業員と企業双方の視点から、仕事と介護の両立に必要なポイントと基本的な支援制度について解説します。

突然やってくる家族の介護。どこに相談すればいい?

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目次[非表示]

  1. 1.従業員が仕事と介護を両立させるためのポイント
    1. 1.1.職場に介護を行っていることを伝えて制度を利用する
    2. 1.2.一人で介護をせず、介護保険サービスを利用する
    3. 1.3.介護保険の申請は早めに行い、要介護認定前から調整を始める
    4. 1.4.ケアマネージャーにこまめに相談をする
    5. 1.5.家族や近所の人々と良好な関係を築いておく
    6. 1.6.介護を一人で抱え込まず自分の時間を確保する
  2. 2.企業が仕事と介護の両立を支援するためのポイント
    1. 2.1.ビジネスケアラーの声を見える化する
    2. 2.2.柔軟で使いやすい制度づくりをする
    3. 2.3.平時から全従業員に向けて情報提供する
  3. 3.仕事と介護を両立するために知っておきたい支援制度
    1. 3.1.育児・介護休業法にもとづく制度
    2. 3.2.2025年4月施行の育児・介護休業法改正
    3. 3.3.両立支援を後押しする国の助成制度
  4. 4.介護と仕事の両立のポイントをもとに一歩ずつ実践を

従業員が仕事と介護を両立させるためのポイント

従業員が仕事と介護を両立させるためには、職場や周囲と連携しながら、公的サービスを適切に利用していくことが大切です。ここでは、厚生労働省が示す、仕事と介護を両立させるためのポイントを紹介します。企業担当者は、従業員が介護に直面した際に円滑に対応できるよう、あらかじめこれらのポイントについて従業員に周知しておくことが重要です。

職場に介護を行っていることを伝えて制度を利用する

仕事と介護を両立する上で、まず大切なのは「自分が介護をしていること」を職場に伝えることです。理由を伝えないまま遅刻や早退、休暇を繰り返すと、周囲の理解が得られにくくなり、業務調整も難しくなります。しかし、介護をしていることをオープンにすれば、上司や同僚から協力を得られる可能性も高まるでしょう。
その上で、「育児・介護休業法」にもとづく介護休業や介護休暇、短時間勤務などの制度を活用することで、仕事と介護の両立に向けた環境を整えやすくなります。

一人で介護をせず、介護保険サービスを利用する

介護をすべて一人で背負うことは、身体的にも精神的にも大きな負担となり、仕事にも大きな影響を及ぼす可能性があります。そうした状況を防ぐためには、介護保険サービスの活用が欠かせません。
介護保険サービスとは、介護が必要な方が自宅などで生活し続けるために、訪問介護やデイサービス、ショートステイなどの支援を受けられる制度です。
これらのサービスを利用するには、まず要介護者が「要介護認定」を受ける必要があります。要介護認定を受けることで、訪問介護やデイサービス、ショートステイなどのサービスの利用が可能となります。これにより、家族の介護負担が軽減し、安心して働き続けられるようになるでしょう。自身が介護をすべて引き受けるのではなく、介護を「マネジメントする立場」であると捉えて、ケアプランを検討することが大切です。

介護保険の申請は早めに行い、要介護認定前から調整を始める

介護保険サービスを利用するには、まずは市区町村への要介護認定の申請が必要です。要介護認定を受けた後、それに応じて作成したケアプランにもとづき、介護サービスを利用することができます。
申請から要介護認定を受けるまでには、原則として最大30日かかるとされています。そのため、介護の必要性が生じたときに備え、早めの申請と準備が不可欠です。
例えば、親が入院中に介護が必要と見込まれる場合には、退院後すぐにサービスが受けられるよう、入院中に申請しておくと安心です。入院中は、病院に認定調査員が訪問してくれます。退院後の生活に向けて、ケアマネージャーを探し、必要な介護保険サービスの選定や住宅改修の検討、福祉用具の準備などについて調整を始めましょう。こうした準備をしておくことで、在宅生活が始まった直後から、認定結果に応じた介護サービスをスムーズに受けられる可能性が高まります。

ケアマネージャーにこまめに相談をする

ケアマネージャー(介護支援専門員)は、要介護者やその家族の希望に応じてケアプランを作成し、適切な介護サービスの調整を行う専門職です。
仕事と介護を両立させるためには、ケアマネージャーへのこまめな情報共有と相談がカギになります。例えば「仕事の都合でデイサービスを利用する曜日を変更したい」「一時的にサービスの利用回数を増やしたい」といった要望がある場合も、ケアマネージャーに相談することで調整が可能かどうか検討してもらえます。このように、介護状況に応じて無理なくサービスが利用できるよう、ケアマネージャーと継続的なコミュニケーションを行うことが大切です。

家族や近所の人々と良好な関係を築いておく

介護は、いつ始まるか予測がつきません。だからこそ、親が元気なうちから「介護が必要になったとき、どう対応するか」を家族で話し合っておくことが大切です。事前に対応方針を決めておくことで、いざというときの混乱を防げます。
また、介護は家族や地域の協力が欠かせません。兄弟姉妹や配偶者、子どもに加え、近隣の人々との日常的なコミュニケーションも、非常時の支えになります。例えば、日常的に声をかけてくれる人や立ち寄ってくれる人がいるだけでも、介護者にとって大きな安心につながるでしょう。困ったときに頼れる関係を日頃から築いておくことが、仕事と介護を無理なく両立するための土台になります。

介護を一人で抱え込まず自分の時間を確保する

介護に真剣に向き合うあまり、自分の時間を削ってしまう人も少なくありません。しかし、そうした状態が続くと心身に負担がかかり、介護うつや離職といったリスクを招くおそれがあります。そうならないためには、まずは自分の時間を確保することが大切です。
例えば、仕事が休みの日に介護保険サービスを活用して一時的に介護を任せることで、リフレッシュする時間を持つことができるでしょう。無理をせず、自分自身を大切にすることが、心身の健康を保ちながら仕事と介護を両立させるためのカギとなります。

【参照】厚生労働省「仕事と介護 両立のポイント あなたが介護離職しないために」|厚生労働省(2018年3月)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/29_gaiyoban_all.pdf

企業が仕事と介護の両立を支援するためのポイント

企業が仕事と介護を両立する従業員を支援するには、企業側の制度設計や職場風土の整備が欠かせません。ここでは、介護による離職を防ぎ、従業員が安心して働き続けられる環境づくりのために、企業が取り組むべきポイントを解説します。

ビジネスケアラーの声を見える化する

企業がまず行うべきは、自社内のビジネスケアラー(働きながら介護をしている従業員)の実態を正確に把握することです。アンケート調査や個別面談を通じて、介護を担っている従業員の人数や業務の状況など、実態を把握しましょう。また、現在は介護をしていなくても、将来介護を担う可能性がある「潜在的予備軍」にも目を向けることで早期の対策につながります。

柔軟で使いやすい制度づくりをする

まずは、育児・介護休業法にもとづく介護休業制度や介護休暇制度などが、就業規則に定められているか確認しましょう。加えて、自社独自の制度として、時間単位の休暇やテレワーク制度などの柔軟な仕組みも有効です。
ここで重要なのは、制度が「実際に使われるかどうか」という視点です。申請の煩雑さや職場の理解不足があると、制度があっても機能しません。設計段階から実際の運用状況や職場の雰囲気づくりまで見据えて、仕組みを整えることが大切です。

平時から全従業員に向けて情報提供する

介護が生じたときに従業員自身がすぐに対応できるよう、平時からの情報提供が重要です。例えば、社内研修や社内報などで、定期的に介護制度の情報を発信することが効果的です。

安心して話せる場をつくる

自社に両立支援の制度が整っていても、企業は「誰に相談すればよいかわからない」「職場に言いづらい」と従業員が感じることのないように対策をすることが重要です。従業員が安心して相談できるよう、社内の相談窓口の設置や、外部専門機関と連携した相談体制の整備が求められます。

多様な働き方の選択肢を準備する

仕事と介護の両立支援にあたっては、時間的な制約が生じることを前提に働ける環境づくりが求められます。具体的には、長時間労働の是正や年次有給休暇の取得促進に加え、業務のマニュアル化による属人化の排除などが挙げられます。
さらに、多様な働き方が実現できるよう、「お互いさま」と助け合える風土を育てることも大切です。介護をしている人だけでなく、すべての従業員にとって働きやすい職場づくりこそが、両立支援の本質といえるでしょう。

【参照】厚生労働省「介護支援プラン策定マニュアル」|厚生労働省(2025年3月)
https://www.mhlw.go.jp/content/001475077.pdf

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仕事と介護を両立するために知っておきたい支援制度

仕事と介護の両立には、制度の正しい理解と活用が不可欠です。ここでは、従業員と企業担当者の双方が知っておくべき基本的な支援制度について解説します。

育児・介護休業法にもとづく制度

従業員の仕事と介護の両立を支援するため、「育児・介護休業法」では、一定の条件を満たす従業員に対し、企業が各種制度の利用を認めることが義務付けられています。以下の主な制度の内容を正しく理解しておくことが、従業員への適切な対応の第一歩となります。

■仕事と介護の両立支援に関する主な制度

制度
概要
介護休業

要介護状態にある対象家族1人につき、通算93日の範囲内で合計3回まで分割取得できる(介護休業給付の給付率:賃金の67%)

介護休暇

要介護状態にある対象家族が1人なら年5日まで、対象家族が2人以上なら年10日まで、1日または1時間単位で取得できる

所定外労働の制限

介護を行う従業員が請求した場合、所定労働時間を超えて労働させてはいけない

時間外労働の制限

介護を行う従業員が請求した場合、月24時間、年150時間を超える時間外労働をさせてはいけない

深夜業の制限

介護を行う労働者が請求した場合、午後10時~午前5時までの間、労働させてはいけない

所定労働時間の短縮などの措置

介護を行う従業員が3年以上の期間内で2回以上、以下いずれかの措置を利用できる

① 短時間勤務制度
② フレックスタイム制度
③ 時差出勤制度
④ 介護サービス費用の助成

【参照】厚生労働省「介護支援プラン策定マニュアル」|厚生労働省(2025年3月)
https://www.mhlw.go.jp/content/001475077.pdf

2025年4月施行の育児・介護休業法改正

2025年4月に施行された改正育児・介護休業法では、企業に求められる対応がより具体的に強化され、以下が新たに義務付けられました。

<企業に義務付けられた措置>

  • 介護と仕事の両立支援制度を利用しやすくする「雇用環境の整備」
  • 介護に直面した従業員に対する「個別の周知・意向確認」
  • 介護に直面する前段階での「情報提供」

また、介護の状況に応じて、テレワークを柔軟に適用することも努力義務として定められています。企業は、こうした義務を確実に履行するための体制を整える必要があります。

【参照】厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」|厚生労働省(2024年12月)
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001259367.pdf

両立支援を後押しする国の助成制度

国は、仕事と介護の両立を支援し、介護離職を防ぐために「両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)」を設けています。この助成金は、企業が介護休業や両立支援制度の導入・周知・運用に取り組み、実際に従業員が制度を取得・利用した場合などに支給されるものです。
制度導入に伴う初期コストの負担を軽減しつつ、従業員の定着促進や職場環境の整備にもつながる施策として有効です。

【参照】厚生労働省「両立支援等助成金のご案内」|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/ryouritsu01/index.html

介護と仕事の両立のポイントをもとに一歩ずつ実践を

仕事と介護の両立は、今後ますます多くの企業にとって避けられない課題となります。介護離職を防ぎ、長期的に安定した就業を実現するためには、従業員自身が早期から備えるためのサポートを企業が率先して行うとともに、両立支援のための制度や職場環境を整えることが不可欠です。
企業にとって従業員のキャリアを守ることは、人的資本への投資という観点からも大きな意義があります。
まずは、自社でできることから一歩ずつ、着実に取り組んでいきましょう。

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<監修者>
丁海煌(ちょん・へふぁん)/1988年4月3日生まれ。弁護士/弁護士法人オルビス所属/弁護士登録後、一般民事事件、家事事件、刑事事件等の多種多様な訴訟業務に携わる。2020年からは韓国ソウルの大手ローファームにて、日韓企業間のM&Aや契約書諮問、人事労務に携わり、2022年2月に日本帰国。現在、韓国での知見を活かし、日本企業の韓国進出や韓国企業の日本進出のリーガルサポートや、企業の人事労務問題などを手掛けている。

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