にこやかに対談するスーツの出向元横田社長と出向先柴山役員

コロナ禍の出向マッチングで生まれる新たな価値 雇用維持・人材不足を乗り越えた先にある光明とは

スーツで並ぶ笑顔の参加者(男性)、左から執行役員柴山さん、横田社長、佐々木副部長、川端部長

雇用過剰な状態にある企業から、人手が足りない企業に臨機応変に人材を融通する「在籍型出向」という仕組みは、コロナ禍でいっそうの注目を集めています。しかし、出向した社員が新天地で実力を発揮し、出向元・出向先双方の企業にメリットをもたらすには、両社の抱えるニーズに合った適切なマッチングが必要です。「マイナビ出向支援」によって初めて在籍型出向を実施した株式会社クロノス・インターナショナル(出向元)と株式会社EPファーマライン(出向先)の皆さんに、社員7人の出向をめぐるストーリーと今の思いを伺いました。

文/中澤 仁美(ナレッジリング)
撮影/山本未紗子(株式会社BrightEN photo)
取材・編集/ステップ編集部

【お話を伺った方々】
・柴山靖史さん(株式会社EPファーマライン 執行役員/オペレーション副本部長)
・佐々木浩司さん(株式会社EPファーマライン 事業本部/リクルーティング部副部長)
・横田勝美さん(株式会社クロノス・インターナショナル 取締役社長)
・川端高さん(株式会社クロノス・インターナショナル 営業1部部長)

【会社紹介】
株式会社EPファーマライン
1997年創業。医薬品開発業務受託機関の大手、EPSグループの1社で、医薬品・医療機器・ヘルスケア業界に特化し、「DIサービス(コールセンターサービス)」「BPOサービス」「マルチチャネルプロモーションサービス」「ヘルスケア・医療機器サポートサービス」の4つを軸に事業を展開している。

株式会社クロノス・インターナショナル
1996年創業。グループ手配旅行や視察旅行、報奨旅行など、高品質・低価格の旅行商品を提供。旅行のスペシャリストとして、顧客のあらゆるニーズにこたえている。

※以下本文中では、EPL社、クロノス社と表記を略させていただきます。

「出向」のイメージが前向きなものに一変

在籍型出向について語るブルーのスーツの横田社長

在籍型出向を決断するに至った理由を語るクロノス・インターナショナル、横田社長

――在籍型出向を検討してから、実際に両社がマッチングするまでの経緯を教えてください。

クロノス・横田さん:旅行業界は長引くコロナ禍で大ダメージを受けました。当社も例外ではなく、一時は廃業すら視野に入れていたほどです。しかし社員を解雇することはなんとしても避けたく、なんとか打開策がないか検討を続けていました。雇用調整助成金を受けることも頭にはありましたが、雇用調整、つまり休業をすることが前提の制度ですから、社員の活躍の場を維持できないことが前提になります。そこで注目したのが、人手不足の企業とのマッチングによる「出向」でした。

クロノス・川端さん:2021年4月ごろ「マイナビ出向支援」にコンタクトを取り、出向先のリストアップや面談の設定などをお願いしました。5月にEPファーマラインさんとの顔合わせが実現し、出向を支援する産業雇用安定助成金も活用しながら、7月中旬から7人の社員がお世話になっています。当初は国や他社が運営するサービスも検討し、実際に登録したこともあったのですが、マッチング数が少なくて話が進展せず……。「マイナビ出向支援」では担当者さんからの提案でスムーズに話が進み、素晴らしい企業とのご縁を与えていただきました。

EPL・柴山さん:今回のマッチングをうれしく思っているのは、私たちも同じです。医療業界でCSO事業(医薬品販売業務のアウトソーシング)を展開する当社は、コロナ禍にあって業務量が増加傾向にあり、通常以上に人手が不足していました。2021年の初頭ごろは各派遣会社から人をかき集めている状態だったのですが、それでも充足が難しかったのです。何かいい方法がないかと頭を抱えていたところ、もともとお付き合いのあったマイナビから出向支援サービスについて紹介され、興味を持ちました。

最初に「出向」と聞いたとき頭に浮かんだのは、航空会社のCAが一時出向して異業種で頑張っているというニュースでした。スキルを持った人材を迎えられるという点で当社が助かることはもちろん、事業存続を願う企業の一助にもなれるということで、とても魅力的な取り組みだと思いました。当然のこととはいえ、「教育した人材がいつかは元の会社に戻ってしまう」という点はリスクともいえますが、コロナ禍だからこそ一時的に発生する業務も多いため、そこを中心に担ってもらえれば問題なさそうだと判断して、前向きに話を進めていきました。

EPL・佐々木さん:昨今、製薬会社は組織のスリム化に取り組んでおり、早期退職者制度を導入するなど人員削減に動いていた流れがあります。それ故に我々のようなアウトソーシングサービスの活用を検討していただくケースが増えていました。そうした中でパンデミックが発生し、製薬会社社員の多くが在宅勤務に入ったことで、この流れはいっそう強まりました。結果、当社の業務量も大きく増え、今回の出向受け入れがその状況の大きな助けになったことは間違いありません。

リラックスした様子の柴山執行役員と横田社長

医療業界と旅行業界のマッチングについて語る

――「医療」と「旅行」というまったく異なる業界間での実施となりましたが、不安はありませんでしたか。

EPL・柴山さん:クロノス・インターナショナルさんは旅行関連のサービス業、私たちは医療関連のサービス業を展開していて、根本的な性質は大きく乖離していないと思っています。電話対応で航空券を手配するなどテレフォンオペレーションの経験豊富な社員さんが多いということで、医療資材の発注・発送といった取次業務、あるいは問い合わせへの対応業務との親和性は特に高いと感じました。医療業界の知識よりも、入職後にチームになじめるコミュニケーション能力を重視したいという思いもあったので、特に不安はありませんでしたね。

また、横田社長のお人柄に魅かれた部分も大きいです。初めてお会いしたとき本当に気さくで優しい方だということが伝わってきて、「こうした社長さんが経営する会社なら間違いないだろう」と素直に思えたことが、出向をお受けする決め手となりました。

クロノス・横田さん:私は、最初にEPL社のお二方と顔合わせしたとき、「一緒に何かできませんか?」というポジティブなスタンスでお話しいただいたことが強く印象に残っています。もちろん、医療業界ならではの難しさはあると思っていますが、業界に不案内な者へ配慮いただけたこともあり、安心してお任せできました。自社の社員が異業種で経験を積み、さまざまな学びをフィードバックするチャンスを得られるというのは、この上なく貴重なことです。EPL社の皆さんのおかげで、出向に対するイメージが一変しました。

出向人材のモチベーションを維持し続けるために

――出向を決めたとき、クロノス社の内部ではどんな反応がありましたか。

クロノス・横田さん:業務スキルや家庭環境などを考慮して、7人の社員を出向者として選出しました。どんな受け止め方をされるか少し心配だったのですが、誰一人としてネガティブにはとらえず、前向きに引き受けてくれたことに感動しました。逆に、当社に残った社員たちもスケジュールや担当業務の調整など影響があったわけですが、助け合いながらしっかりと業務を回してくれています。「今は自分たちが会社を預かる」という意識を持って動いてくれる社員がいるからこそ、出向が成り立つのだと実感しました。

クロノス・川端さん:この出向をきっかけに、あらためて愛社精神を感じることができた気がします。「一時的に別の場所で働くことになるけれど、いずれ必ず旅行業界はV字回復するから、状況が落ち着いたらまた一緒にやっていこう!」と励まし合い、心を一つにしてから出向組を送り出せたことも大きかったのかもしれません。現在でも社員全体のSNSグループは活発に動いており、精神的なつながりは十分に保てていると思います。

出向者7人のうち、当日取材に参加可能だった3人のメンバー

クロノス社からの出向者のうち、取材日に対応してくれた皆さん

――EPL社での勤務を始めた7人について、受け入れた側の率直な評価をお聞かせください。

EPL・柴山さん:導入研修や製品研修を2~3週間かけて行い、8月頭に本格稼働してから約1か月(取材時)がたちました。フロアに顔を出してみると、すでに皆さん現場の雰囲気になじみ、明るい表情で働いています。もともと当社では日常的に派遣社員の出入りが多いため、新しい人材を受け入れる土壌があったのですが、これだけ短期間でチームの一員として活躍できるのは皆さんのやる気とコミュニケーション能力の高さがあってこそだと思います。

出向前の面談のときも、「旅行業界が長いですが、このタイミングで異業種の経験を積めるのはありがたいです」「いつか自社に戻ったとき、業務にプラスになる何かを持ち帰りたいです」といったお話をされる方ばかりで、愛社精神とチャレンジ精神を併せ持っていることが伝わってきました。

クロノス・横田さん:私たちの社員をこれだけ褒めていただけると、経営者冥利に尽きます。正直、涙が出るほどうれしいですね。もともと当社はB to Bのサービスを提供しており、航空会社と旅行会社の橋渡し役を担っています。エンドユーザーであるお客様の安全で楽しい旅行のために、時に難しい要求を受けながらも最適解を求めて折衝することが仕事です。大企業のような立派な教育制度があるわけではありませんが、「顧客満足」を大原則として社員に伝えてきたことが、マインドとしてしっかり根付いていることが分かりました。出向には、異業種の方から新たな目線でフィードバックをいただくことで、自社の良い部分を再認識できるという効果もあるのですね。本当にありがとうございます。

出向の成功は綿密なマッチングあってこそ

出向を通じて信頼を深め、出向が終了してからもコラボレーションしたいと語るお2人

出向を通じて信頼を深め、出向が終了してからもコラボレーションしたいと語るお2人

――実際に在籍型出向というシステムを体感してみて、特に印象的だったことは何ですか。

クロノス・横田さん:出向した7人は資材発送、電話対応、メール対応という3チームに振り分けていただいたのですが、そのメンバー構成には驚きました。面談を通して個人のスキルや性格などを把握されたのだと思いますが、その振り分けは「自分たちならできないだろうな」と思うようなものだったのです。長く一緒にいるからこそ見方が偏ってしまうこともあると思うのですが、「自分の物差し」を振り返るきっかけになりましたね。こうした発見ができるというのも、出向の意義の一つだといえそうです。

EPL・柴山さん:せっかく当社に来ていただくのですから、その中で各人が最も能力を発揮しやすい環境を用意したい、と考えました。面談記録をもとに業務責任者や現場担当者と議論を重ねた結果だと思います。ただし、今後の感染状況の推移によって必要な仕事が変わることも考えられるため、別の業務にスイッチする可能性も視野に入れています。

ちなみに、7人全員をお引き受けするかどうかについては、当初は社内で議論になりました。人件費というコストを無視することはできませんし、人事担当者の業務負担にも関わってくるためです。しかし、すでにスキルやコミュニケーション能力を持った方々を受け入れるメリットは大きく、大勢のほうが心強いだろうという意見もあり、全員に来ていただくことになりました。

――最後に、出向を検討している企業の皆さんへメッセージをお願いします。

EPL・柴山さん:「親和性の高い異業種」の方々と接する機会は、普通はなかなかないものです。出向という仕組みは双方のニーズとタイミングの一致が重要ですが、うまくいけばwin-winの関係を築くことができます。今回の事例を一つのモデルケースとして、同じように信頼関係を築ける企業が増えていけばうれしいです。また、現在の出向が一区切りしても、継続してクロノス社とお付き合いできれば……という思いも強く持っています。例えば、ヒューマンスキルについて学ぶべき点が多いはずですから、研修のように当社の社員を数週間だけお引き受けいただくというのはどうでしょう?

クロノス・横田さん:いいですね! こちらこそ、ぜひ出向以外の部分でもご一緒させていただきたいです。出向を検討していた当初は、いくつかの企業へ社員を分散させるという選択肢もありました。しかし、「とにかくどこかへ出せばいい」という気持ちでは、その対象となった社員のモチベーションを維持するのは不可能です。個人の思いを無視した出向と、前向きな気持ちで新たな学びを得られる出向とでは、同じ1年間でもまったく異なる結果になるでしょう。コロナ禍で大変な思いもしましたが、今回の出向が一つのきっかけになり、数年後には「結果的に多くの学びを得られた期間」として受け止められるだろうと思っています。

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