育児・介護休業法2022年4月から2023年4月までの3段改正!これから子育てする人に朗報 大企業は公表義務化へ

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文/横山 晴美

2022年4月1日より、改正「育児・介護休業法」の一部が施行されました。段階的に5つの内容が変わっていく今回の改正は、男性の育児参加がひとつの軸となっています。男性の育児参加への意欲が高まるなか、多くの従業員にとって注目度の高い施策でしょう。行政から要件を満たした企業に支給される、中小企業に手厚い「両立支援等助成金」も数通りあります。しかし、自社が改正に正しく対応できているのか不安な企業もあるかもしれません。今回は、改正内容と助成金の内容、企業がすべき対応について解説します。

育児・介護休業法 2022年改正の背景とポイント

2022 STARTと書かれた道路

今回の育児・介護休業法の改正にはどのような背景があるのでしょう。2021年に厚生労働省 雇用環境・均等局 職業生活両立課が公表した資料「育児・介護休業法の改正について」では、女性の仕事と出産・育児の両立が難しい現状について触れ、両立を阻む課題を挙げています。具体的には、次のようなものがあります。

出産・育児により退職する女性が一定割合存在すること

上記資料によると、出産前女性の有職者を100とした場合、2010年から2014年の時点で出産後の継続就業者の割合を算出すると、約5割の結果でした。2014年までのデータであり、現在は多少数値が変わっている可能性もあります。しかし、2020年(令和2年)の政府目標として「第1子出産前後の女性の継続就業率 55%」が掲げられており、今もなお多くの女性が出産・育児を機に退職に至っている状況が見て取れます。

仕事と育児の両立は簡単ではないこと

また、同資料より「妊娠・出産を機に退職した理由」を見ると、「仕事と育児の両立の難しさで辞めた」という回答が41.5%で最多です。

上記が課題として挙がっている一方で、夫の家事・育児時間が長いほど、妻の継続就業割合が高く、また第2子以降の出生割合も高い傾向にあることも指摘しています。つまり、女性が育児と仕事を両立させるためには夫婦で家事・育児する視点が欠かせないことがわかります。

男性の育児休業取得率は、1996年時点で0.12%でしたが、徐々に上昇し、特に2016年以降大きな伸びを継続しており、2020年で12.65%となっています。しかし、2007年以降80%超が続く女性の取得率と比較するとまだまだかなり低い水準です。また男性の育児休暇取得日数も「5日未満」が最多で、一方の女性は9割近くが6か月以上となっています。

こうした状況から、男性の育児休業取得は女性の就業継続のため、また、出生率を上げつつ、誰もが活躍できる社会を実現するための重要なポイントだといえます。こうした背景もあり、2022年4月からの改正では、男性の育児休業取得を促進する内容が盛り込まれています。次章以降で詳しく解説します。

育児・介護休業法 2022年4月以降の改正内容と企業が取り組むべきこと

法律や規則に関する書籍

では、具体的な改正内容を見てみましょう。2022年4月から、2023年4月1日まで段階的に5つの内容が施行されます。5つの改正内容を、実施されるスケジュールごとに見てみましょう。

2022年4月1日から実施されている内容

2022年4月には、大きく次の2つが義務化されました。

1:雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化

まず一つ目は、育児休業を取得しやすい雇用環境の整備とともに、申出をした労働者に対して個別の周知や意向確認を行う内容です(本人もしくは配偶者の妊娠・出産についての申出)。配偶者の妊娠、出産について申出をした男性に対しても制度を周知、取得の意思確認をすることが義務付けられています。
雇用環境整備としては、育児休業と、産後パパ育休(出生時育児休業)が円滑に進められるよう、具体的には次の4つからいずれかの措置を講じなければなりません。

  1. 育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
  2. 育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備等(相談窓口設置)
  3. 自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
  4. 自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知

上記のうち、いずれかの措置とありますが、複数の措置を講じることが望ましいとされています。

さらに、妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置として、具体的には次の制度等について個別に周知することが義務化されました。ただし、取得を控えさせるような形での個別周知と意向確認は認められません。

  1. 育児休業・産後パパ育休に関する制度
  2. 育児休業・産後パパ育休の申し出先
  3. 育児休業給付に関すること
  4. 労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取り扱い

単に育児休業が取得できることを周知するだけでは足りず、育児休業給付や社会保険料など、収入面についても周知が必要です。周知の方法は面談(対面・オンライン)のほか、書面を交付することやFAX・電子メール等の通達も可能です。ただし、FAX・電子メール等での周知は労働者が希望した場合のみ取れる手段です。

2:有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

2つ目は、取得要件の緩和です。以前は育児休業を取得する場合には「引き続き雇用された期間が1年以上」とする要件がありましたが、撤廃されました。これによって、雇用されて間もない従業員も、育児休業を取得できるようになります。ただし、「(子が)1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない」の要件については存続しているため注意が必要です。また、育児休業給付についても同様に緩和されています。

2022年10月1日から実施される内容

続けて、2022年10月1日からは、以下の2点が施行されます。

3:産後パパ育休(出生時育児休業)の創設

産後パパ育休として、育休とは別に取得できる男性従業員の出生時育児休業が創設されます。子の出生後8週間以内に取れる育児休業で、取得可能日数は「4週間まで」です。

出産した配偶者の体調が思わしくない場合や、育児負担が想像以上に大きかった場合など、状況に鑑みて育児休業を取得できるため、家庭の状況に応じたフォローがしやすくなると考えられます。

4:育児休業の分割取得が可能に

従前は原則、育児休暇は連続で取得とあり、分割不可でしたが、今回の改正により分割して2回の取得が可能になります。また「子が1歳以降」となる育児休業の延長について、従前の育休開始日は「1歳、または1歳半の時点に限定」されていましたが、育休開始日が柔軟化されます。開始日を柔軟化することで、夫婦で育休を途中交代しながら活用できるようになります。さらに、子が1歳以降の育児休業は再取得不可でしたが、特別な事情がある場合は再取得が認められる可能性があります。

2023年4月1日から実施される内容

ここまで、2022年に施行となる4つの内容を紹介しました。5つ目は、2023年4月から施行となるもので、従業員数1000人超の企業を対象として、次の点が義務化されます。

5:育児休業取得状況の公表の義務化

育児休業等の取得の状況として、「男性の育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」を年1回公表することが義務付けられます。取得率の算定期間は、公表を行う日が属する事業年度(会計年度)の直前の事業年度です。自社の公式サイトなど、誰もが閲覧できる形で公表することとなっており、厚生労働省が運営するWEBサイト「両立支援のひろば」の活用も推奨されています。

【施行スケジュール】

施行日と概要
2022年4月1日施行
1 雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化
2 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
2022年10月1日施行
3 産後パパ育休(出生時育児休業)の創設
4 育児休業の分割取得
2023年4月1日施行
5 育児休業取得状況の公表の義務化

育児・介護休業法2022年4月から2023年4月 改正の施行スケジュール
出典:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」より

改正育児・介護休業法、経営者がすべき就業規則の見直しと運用準備

子供を膝にのせて自宅でパソコンを操作する男性

改正育児・介護休業法により、企業がすべき具体的対応として、まずは就業規則の見直しと、それに伴う周知などが挙げられます。

有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和について

前述したように、2022年4月1日より取得要件が緩和されました。就業規則に従前の要件が記載されている場合は削除・修正が必要です。就業規則の見直し対応は、2022年4月1日までとなっており、対応済みの企業が多いかもしれません。ただし、就業規則を変更した場合は、その旨を社内で周知しなければなりません。また、常時10人以上の労働者を使用する事業場は、労働基準監督署への届出も必要です。規則の見直しだけでなく、周知や届け出に関する対応が漏れていないかも確認しましょう。

産後パパ育休(出生時育児休業)の創設と育児休業の分割取得について

産後パパ育休や、分割取得についても、就業規則の追加や変更が生じるでしょう。就業規則見直しの対応は、2022年10月1日までとなります。また、周知の際には創設される産後パパ育休(出生時育児休業)と育児休業の分割取得について、従前の制度とどのような点が違い、どのようなケースで活用しうるのかまで伝えると良いでしょう。ポイントをまとめました。

【創設される産後パパ育休について】

産後パパ育休(育休とは別に取得可能)
対象期間 子の出生後8週間以内に
取得可能日数 4週間まで取得可能
申出期限 原則休業の2週間前まで
分割取得 分割して2回取得可能 (初めにまとめて申し出ることが必要)
休業中の就業 労使協定を締結している場合 に限り、労働者が合意した範 囲で休業中に就業すること が可能

【育児休業の分割取得について】

育休制度
(2022.10.1以降)
育休制度
(2022.9.30まで)
対象期間
取得可能日数
原則子が1歳 (最長2歳)まで
申出期限 原則1か月前まで
分割取得 分割して2回取得可能 (取得の際にそれぞれ申出) 原則分割不可
休業中の就業 原則就業不可
1歳以降の延長 育休開始日を柔軟化 育休開始日は1歳、1歳半の時点に限定

創設される「産後パパ育休」と「育児休業の分割取得」の変更点について
出典:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」より

企業が活用を考えたい両立支援等助成金

ビジネスマンが手を重ねて植物の芽を支えている様子

企業が育児と仕事を両立できる職場環境づくりを進める際、都道府県労働局などが支給する「両立支援助成金」が活用できます。2022年度版の助成金を紹介しましょう。

1:出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)

所定の要件を満たした場合に支給されます。第1種と第2種がありますが、基本となる第1種の主な要件は次のとおりです。

  • 育児・介護休業法に規定する雇用環境整備の措置を複数実施すること
  • 男性労働者が、子の出生後8週間以内に開始する連続5日以上の育児休業を取得すること
  • 育児休業取得者の業務を代替する労働者の業務見直しに係る規定を策定し、当該規定に基づき業務体制の整備をしていること

対象は中小企業のみとなっており、原則として20万円(1事業主1回限り)の助成が受けられます。育休代替要員を新規雇用した場合、20万円の加算があり、3人以上確保した場合には45万円の加算があります。
また、この助成金を取得した事業主において、「育児・介護休業法に規定する雇用環境整備の措置を複数実施した」「男性労働者の育児休業取得率が3年以内に30%以上上昇した」などの要件を満たすことで、上乗せして受けられるのが第2種の助成金です。1年以内だと最高で75万円(1年以内かつ生産性要件を満たした場合)もらえます。第2種は2022年度に新設されたもので、育児目的休暇の助成金は廃止されました。

2:育児休業等支援コース

育児休業に関わる支援コースも中小企業が対象で、「①育休取得時・職場復帰時」「②業務代替支援」「③職場復帰後支援」の3つに分かれています。

① 育休取得時・職場復帰時

「育休復帰支援プラン」をあらかじめ労働者に周知すること、労働者と面談を実施して面談結果を記録した上でプランを作成すること、プランに沿って対象労働者に連続3カ月以上の育児休業を取得させることを満たす場合(育休取得時)。
また、育休中に復帰プランに基づく措置を実施して職務情報・資料提供をすること、休暇終了前に人事労務担当者が面談を実施して面談結果を記録すること、その後原則として原職に復帰させ6カ月以上継続雇用していることを満たす場合(職場復帰時)、それぞれに助成金を支給。
※職場復帰時については、育休取得時に受給していない場合には申請不可

② 業務代替支援

労働者が育児休業を取得した場合の「業務代替」にかかる支援です。次の助成金があります。

  • 「新規雇用」 育児休業取得者の業務を代替する労働者を新規雇用した場合の助成金
  • 「手当支給等」 育児休業取得者の業務を社内の他の労働者に代替させ、業務の見直し・効率化を行うとともに、当該業務を代替した労働者に対して増額して賃金を支払う場合の助成金
  • 「職場復帰時」 育児休業取得者を原職等に復帰させたときの助成金

また、主な要件は次のとおりです。

  • 育児休業終了後、育児休業取得者を原職等に復帰させる旨を就業規則等に規定すること
  • 対象労働者が3か月以上の育児休業(産後休業の終了後に引き続き育児休業をする場合は、産後休業を含む)を取得し、事業主が休業期間中の代替要員を新たに確保すること、または代替要員を確保せずに業務を見直し、周囲の社員により対象労働者の業務をカバーさせること
  • 対象労働者を上記の規定に基づいて原職等に復帰させ、復帰後も申請日までの間、雇用保険被保険者として6か月以上継続雇用していること

③ 職場復帰後支援

法を上回る子の看護休暇制度を導入、または、保育サービス費用補助制度(ベビーシッター費用補助など)を導入し、育休復帰後の労働者に一定以上利用させた場合。

最新情報をチェックしながら、活用しましょう。

まとめ :誰もが働き続けることができる職場環境を目指そう

腕を組んで空を見上げる男女

少子高齢化が急速に進行する現在、今後ますますの労働力人口の減少が懸念されています。人材確保競争が激化していくなかで出産・育児等による従業員の離職を防ぐことは、企業における重要課題です。男女双方の従業員が仕事と育児等を両立できる社内環境の整備は企業イメージの向上に寄与し、生産性向上や優秀な人材確保・定着にもつながるでしょう。

【プロフィール】
横山 晴美(よこやま・はるみ)
ライフプラン応援事務所代表 AFP FP2級技能士
2013 年に FP として独立。一貫して個人の「家計」と向き合う。お金の不安を抱える人が主体的にライフプランを設計できるよう、住宅や保険などお金の知識を広く伝える情報サイトを立ち上げる。またライフプランの一環として教育制度や働き方関連法など広く知見を持つ。

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