旅行会社から食専門の出版社へ!理想的な在籍型出向がかなった理由は?

旅行会社から食専門の出版社へ!理想的な在籍型出向がかなった理由は?

「マイナビ出向支援」は、雇用過剰となった企業と人手を求める企業をマッチングし、より良いかたちでの出向をサポートするサービス。ここでは、ユニークな企画で知られる旅行会社の株式会社ファイブスタークラブから、食分野を専門とする株式会社旭屋出版への出向事例をご紹介します。前半では出向実現に尽力した両社の経営者や管理者、後半では出向当事者にお話を伺いました。

【株式会社ファイブスタークラブ】
「旅が大好きで、自分たちも旅をし続ける」旅行会社をめざし、1995年に創業。豊富な渡航歴を持つスタッフたちが提案する、その土地ならではのオリジナルツアーを数多く展開している。

【株式会社旭屋出版】
外食産業の専門誌、料理・食文化の専門書などを手がける食の専門出版社として1968年に創業。国内外を問わず取材・出版活動を続け、食分野を牽引する出版社としての地位を確立している。

〈経営者・管理者の目線から〉

笑顔で話すミドルエイジの男性と女性。左が旭屋出版経営管理マネジャーの假屋園武雄さん、右がファイブスタークラブ代表取締役の崎由香里さん。笑顔でマイナビ出向支援サービスの感想を語る旭屋出版経営管理マネジャーの假屋園武雄さん(写真左)とファイブスタークラブ代表取締役の崎由香里さん(同右)

【お話を伺った方々】
写真左:出向先:假屋園武雄さん(株式会社旭屋出版 経営管理マネジャー)
写真右:出向元:崎由香里さん(株式会社ファイブスタークラブ 代表取締役)
(所属は2022年9月現在)

目次[非表示]

  1. 1.「食と編集」をテーマに相性抜群のスタッフを選出
  2. 2.「継続的な見守り」もあって担当業務が拡大
  3. 3.出向のイメージ一新で、両社にとって大きな実り
  4. 4.コロナ禍で得られた「興味にぴったりのマッチング」
  5. 5.出向は異業種のプロに学べる絶好のチャンス

「食と編集」をテーマに相性抜群のスタッフを選出

崎さん:コロナ禍で多くの旅行会社が打撃を受け、当社も例外ではありませんでした。打開策を模索している中、ダイレクトメール経由で民間企業による出向支援サービスを知りました。いろいろ調べてみると、人材派遣でお世話になっているマイナビさんも手がけていることが分かったので、まずは話を聞いてみることに。サービス内容や金額に納得感があったため、お願いすることに決めました。

假屋園さん:当社では出向者を受け入れた実績があり、新たに人材を探していた中で、どの仲介会社を選ぼうかとネット検索していたとき、目に留まったのがマイナビ出向支援でした。さっそく登録したところ早々に候補がピックアップされ、その後ファイブスタークラブさんとつながることができました。2022年の3月に崎さんと顔合わせをして、4月には出向勤務がスタートするというスムーズな展開となりました。

崎さん:今年度、当社からは7人が異業種へ出向しており、旭屋出版さんにお世話になっている川崎もその一人です。社内に残るスタッフと出向するスタッフは会社側で選定しましたが、最終的には本人の意思を尊重しました。出向するか休業するか選んでもらい、前者を希望したスタッフにはマッチ度の高い出向先を探すことを決意。川崎の場合は、もともと当社でオウンドメディアの編集を担当していたことに加え、食への関心が非常に高かったので、旭屋出版さんとの相性は抜群だと感じました。

假屋園さん:当社としても、モチベーションの高い方に来ていただけるのはありがたいことです。まずは崎さんと私で打合せを行い、条件などをすり合わせてからご本人との面談に至りました。何よりも重視したのが、川崎さんにとってベストな役割を用意すること。大切な人材をお預かりするわけですから、これまでの経歴や思い、キャリアの展望なども考慮してポストを用意したいと考えていました。企業同士の信頼関係や今後のお付き合いにも関わってくる部分ですから、しつこいくらいに詳細を確認した記憶があります。

片手をあげながら話をする男性出向者受け入れについて語る假屋園さん

崎さん:時間がない中でのマッチングではありましたが、忌憚なく意見を伝え合い、お互いの「譲れない部分」を明確化した上で調整するプロセスは必須だったと思います。変に妥協してしまうと、出向中のどこかで歪みが生じかねません。本音で話し合うことで、本人も会社も皆でハッピーになれると実感しました。なお、出向契約書の締結や出向実施計画届の提出など、事前の手続き関係には思ったより手間を要しました。特に初めての出向や、出向先が多数あるようなケースでは、事務作業のための時間を確保しておくとよさそうです。

「継続的な見守り」もあって担当業務が拡大

假屋園さん:出向初日は責任者である私がガイダンスを行い、当社の事業詳細やルール、川崎さんに期待することなどを説明しました。最初の1週間は集中的に当社のコンテンツを吸収してもらう期間としたのですが、すぐに机の上が本で山積みになり、夢中になって読みあさる様子が印象に残っています。実際、やみくもに動き出すよりもしっかりと学習期間を設けたほうが、その後も安定して業務を進められるように感じました。その後は教育担当に付くかたちでOJTを進めていき、「フードマニア」という当社が運営するウェブメディアの編集を担当してもらうことに。これまで培ってきた経験を上手に「旅」から「食」へシフトできたようで、即戦力として活躍してくれています。

崎さん:川崎が担当したブログ記事を読んで、遠くから見守ることができるのは安心感があります。毎日のように更新されていくので、今ではとても追いきれないほどです。また、出向が始まってから約1か月後、旭屋出版さんにミーティングの機会を設けていただきました。假屋園さんと私で再び顔を合わせ、本人の様子や仕事内容、今後の展開などをあらためて話し合えたことは大きかったです。「若いけれどしっかりしているので、マネジメント業務にもぜひ挑戦してもらいたい」というお話があったときは、うれしかったですね。

假屋園さん:川崎さんがやる気に満ちているので、任せられる仕事の幅がどんどん広がっています。「フードマニア」ではライティングにとどまらず、他のライターが執筆した原稿の校正や、掲載する企画の選定を手がけるほか、SEO対策の技術などもぐんぐん吸収しています。また、最近ではベテラン編集長に同行するかたちで取材へ赴いたり、書籍編集に携わったりもしています。当初は「1年後に辞めてしまう人」という目で見るスタッフもいたのですが、本人の努力もあって壁が崩れていき、メンバーの一人としてなじんできた印象です。

崎さん:業務に慣れてきたであろう3か月目、川崎を誘って2人でランチに行き、ざっくばらんに近況を聞きました。ジャンルは違えども、好きなものを追求できる会社という点は共通しているため、スタッフの雰囲気も似通った部分があると話していました。また、分からないことはすぐ前任者に質問できる環境を用意していただき、いきいきと学んでいる様子だったのが印象的です。

出向のイメージ一新で、両社にとって大きな実り

崎さん:正直、当初は「出向」という言葉にネガティブなイメージがあったのですが、今回の経験で完全に払拭されました。「社会情勢が厳しい中でもスタッフに活躍の場を与えられる」「社内では得られないような経験ができて新たなスキルも身に付く」「本人の視野が広がる」……。メリットを挙げればきりがないほどです。特に川崎は新卒で当社に入ったので、他社で経験を積むことの意義は大きかったのではないでしょうか。ウェブ関連の知見、特にSEO対策などに精通して1年後に戻ってきてくれれば、今後の事業展開においても百人力です。

会社でパソコンを前に微笑む女性初めは出向させることに心配したが、予想以上に良い効果が出ているという崎さん

假屋園さん:受け入れる側にとっても、出向はメリットが多いと感じています。期間を定めての登用ということでタスクマネジメントがしやすく、いずれ社員を採用する予定だとしても、それが決まるまでの間の「頼れるつなぎ役」を担ってくれます。また、外の風が入ってくる機会は貴重なもので、社内に前向きな影響があることも実感しています。当社への出向者は、期間限定だからこそ「このスキルを習得したい」といった明確なモチベーションを抱いており、そうした姿勢が他のスタッフへの良い刺激となっています。

崎さん:出向したスタッフたちの話を聞くと、「まったくの異業種で本当に役に立てるのか」「逆に迷惑をかけるのではないか」と不安を抱えていることが少なくありませんでした。だからこそ、活躍しやすい場を精査していただけるのは、本当にありがたいことなのです。未知の分野に身を投じたスタッフたちが力を蓄えて戻ってきてくれることを今から楽しみにしています。

假屋園さん:正直、お話を頂いたところでマッチングに至らない会社もあります。ファイブスタークラブさんからの出向がこれだけ順調で意義あるものになったのは、「社員を大切にしている会社だ」とお互いに確信できたから。単純に労働力のやりとりととらえるのではなく、人を財産と考えてリスペクトし合える関係になったとき、出向という制度を成功に導けるのかもしれませんね。

〈当事者の目線から〉

会社で笑顔を見せる女性本棚の前で微笑むファイブスタークラブの川崎彩乃さん​​​​​​​

【お話を伺った方】
川崎彩乃さん(株式会社ファイブスタークラブ)

コロナ禍で得られた「興味にぴったりのマッチング」

両親の仕事の関係もあって、私は生後8か月ごろから世界中の国や地域を訪れ、現在までの渡航歴は150か国。もちろん旅が大好きで、自分らしいツアーを提案したいと新卒で当社に入りました。ところが、いざ自分で予約を取り始めようというタイミングで、新型コロナウイルス感染症が拡大し始めたのです。そうして1件も予約が取れないままコロナ禍に突入し、新規事業の一環として立ち上げた情報サイト「FIVE PENGUINS」で記事作成に従事していました。当サイトはグルメに関する情報発信も多く、収入の大半を費やすほど食に関心がある私にとっては魅力ある仕事でした。

そうした生活を2年ほど続けるうち、2022年3月の頭に出向の話が舞い降りてきました。正直、「紹介される仕事によっては休業したほうが……」とも思っていましたが、崎から話を聞いてびっくり。食専門の出版社という、あまりにも自分の興味にマッチする提案だったからです。以前から「いつかは食に関わる仕事にも挑戦したい」と考えていたほどなので、旭屋出版さんへの出向は願ってもないチャンスでした。当社の出向者としては私が第1号だったのですが、「待っているから1年間頑張って!」「何かを持ち帰ってきてね」と激励の言葉で送り出してもらったことが心に残っています。

出向して少したってから、崎に近況報告する機会がありました。自分の現状を伝えられることに加えて、ファイブスタークラブのことを聞けたのがうれしかったです。何もなければ出向元の状況がまったく分からないので、「皆はどんな様子だろう?」「戻る場所はあるかしら?」と不安が募っていたかもしれません。

出向は異業種のプロに学べる絶好のチャンス

出向勤務の初日はさすがに緊張しましたが、事前に面談していただいた假屋園さんがいろいろと調整してくださり、スムーズなスタートを切れました。偶然にも勤務地が自宅に近く、勤務時間もほとんど同じだったので、生活パターンが変わらずに済んだことも大きかった気がします。同じく他社から出向してきた前任者が期間満了となる6月までに引き継ぎをしていただき、現在では自分が「フードマニア」の実務を取り仕切る立場になりました。取材に同行する機会も増え、普段は入ることのできない厨房でレシピや調理過程を見せていただくなど、新鮮な驚きや喜びにあふれた毎日です。

身振り手振りを交えて話す女性おいしいご飯も旅行も大好き!という川崎さん

以前から仕事でライティングを担当していたとはいえ、自分の主観で文章を紡いできたにすぎません。しかし、プロの編集者に学ぶことで、「より公平な目線で客観性のある記事を書く」「正しい情報を掲載するため入念に裏取りする」「誰でも読みやすい表現を追求する」など、大切なことをたくさん吸収できています。また、皆さん食にこだわりがある方ばかりなので、「ちょっとそこまでランチに」というときも遠くまで足を伸ばすなど、労を厭わず新規開拓する情熱に刺激を受けています。

残りの期間でさらに編集スキルを高めていき、ファイブスタークラブに戻ったら、まずはオウンドメディアの内容をさらに充実させたいです。また、食への知見が深まったからこそ実現できる、グルメからアプローチするようなツアーを企画できたら、とも考えています。

これから出向する方に伝えたいのは、「行ってしまえば何とかなる!」ということ。ジャンルの違うプロの中で働くことにはハードルを感じがちですが、分からないことを素直に尋ね、吸収する姿勢があれば大丈夫。より多くの方が出向をチャンスととらえ、自身のキャリアを輝かせることができたら素敵ですね。

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