第2部の座談会の様子。(左から)グレイス杉山クリニックSHIBUYA院長の岡田さん、「みんリプ!」共同代表の宋美玄さん、Woman’s way理事の狩野舞子さん、Woman’s ways代表の潮田玲子さん、日本テレビアナウンサーの鈴江奈々さん

女性の健康課題とキャリアを学ぶ人事向け勉強会「2030年SRHR先進国を目指して」の開催レポート

取材・文/ステップ編集部
撮影/和知 明(株式会社BrightEN photo)

目次[非表示]

  1. 1.第1部/基調セミナー「知識を得て自分の身体を理解し、行動することが大切」
  2. 2.第2部/座談会「女性の身体とコンディションについて」
  3. 3.編集後記

任意団体みんリプ!(共同代表:稲葉可奈子、宋美玄、重見大介)と一般社団法人Woman’s ways(代表:潮田玲子)は2月28日、東京都渋谷区のグレイス杉山クリニックSHIBUYAで「2030年SRHR先進国を目指して」と題した人事担当者向けの勉強会をリアルとオンラインのハイブリッド形式で開催しました。卵子凍結保管サービスを展開する株式会社グレイスグループ(代表取締役CEO:勝見祐幸)が事務局を務め、参加者は、女性特有の健康課題とキャリアについて学びを深めました。

第1部/基調セミナー「知識を得て自分の身体を理解し、行動することが大切」

タイトルにある「SRHR」は(Sexual Reproductive Health and Rights/セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ)の頭文字で「性や生殖に関する健康と権利」と訳され、WHO(世界保健機関)も提唱しています。

  • S(セクシュアル・ヘルス):自分の「性」について心身ともに満たされ社会的にも認められていること
  • R(セクシュアル・ライツ):「性」のあり方を自分で決める権利
  • H(リプロダクティブ・ヘルス):妊娠したい/したくない、産む/産まない、いずれの選択においても心身ともに健康でいられること
  • R(リプロダクティブ・ライツ):産む/産まない、いつ/何人子供を持つか、妊娠・出産・中絶について充分な情報を得て自分で決める権利

※「2030年SRHR先進国を目指して」開催告知より抜粋

イベントは2部構成。第1部の基調セミナーでは、産婦人科医でグレイス杉山クリニックSHIBUYA院長の岡田有香さんが妊娠前の健康管理について解説したほか、産婦人科医で「みんリプ!」共同代表の稲葉可奈子さんが登壇し、「みんリプ!みんなで知ろうSRHR」と題して活動が紹介されました。

岡田さんは、現代女性の月経の回数が月経開始年齢の低下や出産回数の減少によって昔の女性は50~100回程度だったのに対して約450回に増えていると述べ、さまざまなトラブルが起こっていると指摘。「生理痛はないのが普通。痛みの背景に子宮内膜症があり、将来の不妊につながることもある」と話しました。アメリカでは13~15歳でかかりつけの産婦人科を持つことが推奨されていたり、ヘルスリテラシーが高いと仕事のパフォーマンスも高いことがわかっていたりすることから「知識を付け、自分の体を理解し、行動することが大事」とかかりつけの婦人科を持つことの大切さを呼び掛けました。

杉山クリニック SHIBUYA 院長の岡田有香さん
産婦人科医として多くの患者を診てきて「婦人科に来る前の啓発が大事だと思った」と話すグレイス杉山クリニックSHIBUYA院長の岡田有香さん

稲葉さんは、日本のSRHR実現を阻む主な壁として教わる機会がないことと生理や性がタブー視されていることを挙げました。SRHRを享受できる社会を実現するために産婦人科医の有志で「みんリプ!」を2022年に設立し、包括的な性教育の推進や医薬連携による緊急避妊薬のOTC化など5つの目標の実現を目指していると説明しました。欧米での中絶や緊急避妊薬の現状などを紹介し、「避妊も中絶も自分の身を守る大切な手段」とした上で「産まない権利だけでなく、産む権利も享受されるべき」と強調。合計特殊出生率と希望出生率のギャップを埋めることの重要性を訴えました。

る「みんリプ!」共同代表の稲葉可奈 子さん「リプロダクティブ・ヘルス&ライツ実現の壁として、アクセスの悪さや教育機会の少なさ、社会の風潮などがある」と訴える「みんリプ!」共同代表の稲葉可奈子さん

基調セミナーの前には東京都の小池百合子知事のビデオレターが公開され、小池知事は都のSRHR関連の取り組みを挙げながら「妊娠・出産を希望する人への支援に力を入れます」と語りました。東京都は2023年度から健康な女性の卵子凍結にかかる費用を1人あたり30万円程度助成します。

第2部/座談会「女性の身体とコンディションについて」

第2部の「一般社団法人Woman’s waysのみなさんとの座談会~女性の身体とコンディションについて~」では、元バドミントン日本代表でWoman’s ways代表の潮田玲子さん、元バレーボール女子日本代表でWoman’s ways理事の狩野舞子さん、産婦人科医で「みんリプ!」共同代表の宋美玄さん、グレイス杉山クリニックSHIBUYA院長の岡田さんが登壇し、日本テレビアナウンサーの鈴江奈々さんが進行を務めました。

第 2 部の座談会の様子
第2部の座談会の様子。(左から)グレイス杉山クリニックSHIBUYA院長の岡田さん、「みんリプ!」共同代表の宋美玄さん、Woman’s way理事の狩野舞子さん、Woman’s ways代表の潮田玲子さん、日本テレビアナウンサーの鈴江奈々さん

潮田さんと狩野さんは現役時代を振り返り、「大会に合わせてトータルで考えて調整していたのに、生理のことだけは無視していた」「生理痛があっても言い訳にしたくなくて言えなかった」と明かしました。宋さんは「アスリートのお2人も生理はどうにもならないものと思っていたんですね」と驚いた表情を見せ、産婦人科医は生理の痛みやホルモンバランスの乱れを整えるところで関われると語りました。話題は卵子凍結や定期的な婦人科検診の意義にも広がり、岡田さんが卵子凍結の現状や採卵方法などを説明。宋さんは「卵子凍結は保険ではないので女性の生き様をがらりと変えるとは思わないけれど、私は35歳で第一子を産んでいなかったらしたかもしれない」と話しました。狩野さんは「検診に行く選手はまだ少ないので、そのきっかけを作りたい」と力を込め、潮田さんは「我慢の一択でやってきたがおかしかったと思う。後輩アスリートにはストレスのない環境づくりで還元していきたい」と意欲を示しました。

Woman’s ways の潮田玲子代表
座談会で話すWoman’s waysの潮田玲子代表

Woman’s ways の狩野舞子理事Woman’s waysの狩野舞子理事

「みんリプ!」の宋美玄代表「みんリプ!」の宋美玄代表

編集後記

ある調査では「将来何人子どもがほしい?」という問いに対し、最も多い答えは「2人」で約6割を占めたそうです。2人欲しい場合、達成確率90%なのは自然妊娠なら27歳まで、体外受精なら31歳まで。そんな年齢別の妊娠達成確率のデータがまとめられた表をグレイス杉山クリニックSHIBUYAの岡田院長の講演の中で紹介されました。2021年には第1子出生時の母親の平均年齢が30.9歳(2021年)になり、子どもを持つことを望んでも叶わない人が増えていることが分かります。将来の妊娠に備えたリテラシー向上や自分の体への理解、かかりつけの産婦人科医を持つことの大切さを再認識すると、卵子凍結という選択肢の意義もより理解できました。マイナビ健康経営では、女性の今と未来の健康や選択肢が増やせるよう情報を収集しお届けしてまいります。

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