ジョブ型雇用とは?企業に求められる人材育成手法も併せて解説

ジョブ型雇用とは?メンバーシップ型雇用との違いや研修方法を解説

「ジョブ型雇用」を採用する企業が増えています。そこで変化するのが、人材育成の手法です。ジョブ型雇用の概要と、ジョブ型雇用における人材育成手法を併せて解説します。

目次[非表示]

  1. 1.ジョブ型雇用とは?企業に求められる人材育成手法も併せて解説
  2. 2.従来の採用手法とは異なるジョブ型雇用
    1. 2.1.メンバーシップ型雇用との違い
  3. 3.ジョブ型雇用が拡大する背景
    1. 3.1.専門性を高め国際競争力を上げるため
    2. 3.2.コロナ禍の影響
  4. 4.ジョブ型雇用がキャリアプランに与える影響
    1. 4.1.職種が固定化する
    2. 4.2.できる人に仕事が集中する
    3. 4.3.キャリアが二極化する
  5. 5.ジョブ型雇用で人材育成はどう変わる?
  6. 6.ジョブ型雇用で求められる研修とは?
    1. 6.1.自律的なキャリア構築のための研修
    2. 6.2.選抜型研修
    3. 6.3.キャリアステージ別研修
    4. 6.4.企業間留学(人材シェア)を活用した研修
  7. 7.ジョブ型雇用においても、従業員の育成は重要

ジョブ型雇用とは?企業に求められる人材育成手法も併せて解説

欧米では主流の人事制度、「ジョブ型雇用」を採用する動きが国内でも目立つようになりました。背景としてはコロナ禍でテレワークが一気に普及し、従来のように労働時間の長さで従業員を評価するのが難しくなったことが挙げられます。コロナ禍による新しい働き方は、労働時間の長さではなく、決められた職務に対する成果で評価するジョブ型雇用に注目が集まるきっかけになったといえるでしょう。

ジョブ型雇用が普及するにつれ、変化するのが人材育成の手法です。ここでは、ジョブ型雇用の概要と、ジョブ型雇用における人材育成の在り方について解説します。

従来の採用手法とは異なるジョブ型雇用

ジョブ型雇用は、企業が必要とするポジションにおいて、そのポジションで仕事をするにふさわしい能力とスキル、経験を持った人材を採用する手法です。欧米では以前からジョブ型雇用が主流でしたが、国内では最近になって導入する企業が増えてきました。

2019年、日本経済団体連合会(経団連)は「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」において中間とりまとめと共同提言を発表しました。そこで、「世界規模で激しくかつ不連続に変化する時代において、これまでのような新卒一括採用と企業内でのスキル養成を重視した雇用形態のみでは、企業の持続可能な成長や我が国の発展は困難」と、産業界側と大学側で認識を共有。「ジョブ型雇用を念頭に置いた採用も含め、学生個人の意志に応じた、複線的で多様な採用形態に、秩序をもって移行すべき」と提言をしています。

ジョブ型雇用の普及は、経団連としても必要不可欠なものであるという認識が強く伺えます。

【参照】採用と大学教育の未来に関する産学協議会「分科会の中間とりまとめ」|一般社団法人日本経済団体連合会(2019年4月)
https://www.keidanren.or.jp/policy/2019/037_bunkakai.pdf#page=14

用語集で見る:ジョブ型雇用

メンバーシップ型雇用との違い

「メンバーシップ型雇用」は、戦後から長く国内企業で取り入れられてきた雇用システムです。採用時には従事する職務を限定せずに新卒を一括採用し、従業員はさまざまなポジションを渡り歩いて経験を積みます。
倒産などが起きない限り原則として定年まで雇用の継続を保証する終身雇用や、年齢や勤続年数で昇格していく年功序列など、日本独特のスタイルを前提とした雇用システムだといえるでしょう。

メンバーシップ型雇用は、いわば「人」と「企業」が密接に結びつくもので、従業員には将来の安定が約束される代わりに、企業の一員としての忠誠心や貢献が求められます。「ご縁のあった会社に最後までつくすのが美徳」とする日本人の価値観にフィットしていたことが、長く受け入れられてきた要因だといえるのではないでしょうか。

採用時に従事する職務を限定しないメンバーシップ型雇用と異なり、ジョブ型雇用は「職務」と「雇用」が直結する雇用システムです。採用の時点で、入社後に従事する業務内容、労働時間、勤務地などが決まっており、人材の採用もその要件に合わせて募集がかけられます。

メンバーシップ型雇用は「人」と「企業」が密接に結びつく雇用であり、ジョブ型雇用は、「職務」と「雇用」が直結する雇用であると捉えてもいいでしょう。

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ジョブ型雇用が拡大する背景

「ジョブ型雇用」のイメージで、新聞の見出し画像です。

メンバーシップ型雇用が長く導入されてきた日本の雇用において、ジョブ型雇用が普及してきた理由はどこにあるのでしょうか。考えられる理由を大きく2つ挙げて、解説します。

専門性を高め国際競争力を上げるため

2021年、文部科学省は「ジョブ型研究インターンシップ推進協議会」の設立を発表し、そこで「今後拡大が見込まれるジョブ型採用を見据え、産業界と大学が連携して大学院教育を行い、国際競争に耐えうる研究力に裏打ちされた実践力を養成する」と提言をしました。文部科学省は、国際社会で活躍できる経営者、技術者の不足、および世界でシェアを獲得できるビジネスモデルの不足がグローバル化の遅れの原因であるとし、英語力がある海外経験者、最新の技術を熟知した専門家の積極的な登用が必要であるとも指摘しています。

こうした人材の採用・育成にあたって、障壁になるのが従来のメンバーシップ型雇用です。メンバーシップ型雇用の報酬体系は日本独特で、世界的に見れば珍しい仕組みです。そのため、海外経験者や外国人スタッフには、なじみにくいでしょう。

また、ジョブローテーションは広範なスキルの習得を前提としているため、ジェネラリストが育ちやすく、スペシャリストは育ちにくいといえます。

そこで、1つのポジションや業務に精通した専門性の高い人材、グローバルな知見を有する人材を採用しやすいジョブ型雇用に転換し、国際競争力の向上に取り組む企業が増えているのです。

【参照】文部科学省「ジョブ型研究インターンシップ推進協議会の設立について」|文部科学省(2021年8月)
https://www.mext.go.jp/content/20210810-mxt_senmon01-000014929_1.pdf

【参照】文部科学省「「科学技術・イノベーション政策の展開にあたっての課題等に関する懇談会」これまでの議論の取りまとめ」|文部科学省 科学技術・学術政策局(2009年6月)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/gijyutu/014/attach/1283148.htm

コロナ禍の影響

コロナ禍で働き方の多様化が進んだことも、ジョブ型雇用への関心が高まった要因となっています。ジョブ型雇用の場合、それぞれの任務や責務の範囲が明確なので、テレワークでも作業に大きな支障がありません。

また、従業員の勤務時間や労働時間が見えにくいテレワークでも、成果を重視するジョブ型雇用なら正当に評価できる点も、ジョブ型雇用拡大の要因となりました。

ジョブ型雇用がキャリアプランに与える影響

企業主導でキャリアプランが決まるメンバーシップ型雇用に対して、ジョブ型雇用は従業員の自律的なキャリア構築が基本です。ですから、メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用に移行した場合、従業員のキャリアプランには下記に挙げるような影響が出ると考えられます。

職種が固定化する

ジョブ型雇用が適用された従業員は、基本的に社内での異動がなくなり、職種が固定化します。そのため、何らかの理由で担当する業務がなくなった場合、労働契約そのものを終了せざるをえない場合もあります。

できる人に仕事が集中する

メンバーシップ型雇用では、部署のメンバーにまんべんなく仕事を割り振りますが、ジョブ型雇用では今ある仕事を最も適切な人材に割り振ります。そのため、できる人にやり甲斐のある仕事が集中することになるでしょう。

キャリアが二極化する

できる人に仕事が集中すると、なかなかチャンスに恵まれず成果を残せない人が出てきます。結果として、キャリアの階段を順調に上っていく人と停滞したままの人で、キャリアが二極化する可能性があります。

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ジョブ型雇用で人材育成はどう変わる?

首をかしげる働く人々。

ジョブ型雇用の導入によって、人材育成にはどんな変化が起こるのでしょうか。

ジョブ型雇用にシフトすると、従業員と企業の関係性が変化します。メンバーシップ型雇用における企業は従業員の雇用を保証する体制ですが、ジョブ型雇用においては従業員がみずからを鍛える必要性のある体制となるからです。

ジョブ型雇用の従業員は、「キャリアは自己開発するもの」というマインドセットのもと、みずからをブランディングしながらキャリアを形成していきます。

ですから、ジョブ型雇用を採用する企業に求められるのは、従来型の画一的な研修ではなく「職種別のキャリアパスの見える化」と、その支援です。従業員の希望に応じて職務に必要な能力を開発できるよう、多彩なプログラムをそろえておくことが、ジョブ型雇用における人材育成のカギになるといえるでしょう。

注意したいのは、キャリアの固定化が進むと、多様なスキルを持った経営幹部候補の育成が難しくなることです。経営幹部については、企業側が早期に対象者をピックアップし、戦略的なローテーションで育成していかなくてはなりません。

ジョブ型雇用で求められる研修とは?

研修の様子。

ジョブ型雇用の企業に対して、求職者は「どんな学びが得られるか」「自分のキャリアにどれだけプラスになるか」というポイントに注目しています。ですから、「ジョブ型雇用は従業員の流動性が高いから」と研修をおろそかにしていると、優秀な人材の獲得や確保につながりません。

ここでは、ジョブ型雇用で企業に求められている研修について、詳しく見ていきましょう。

自律的なキャリア構築のための研修

これまでの日本企業は、「役職」「職務」「役割」「勤続年数」などで従業員を分け、それらのグループごとに集合型で行う階層別研修が一般的でした。

しかし、終身雇用を前提としないジョブ型雇用では、階層別研修は減少すると考えられます。企業には、従業員自身が「学びたい」と思ったときに最適なプログラムを選択できるよう、集合研修以外の職種別プログラムを豊富に用意することが求められるでしょう。

その際には、知識習得型のeラーニングやオンライン研修を活用すると、より手軽に受けられる研修を増やすことができます。

選抜型研修

ジョブ型雇用では、経営幹部も「ジョブ」のひとつとして、戦略的に育成するプログラムを実施することがあります。できるだけ早期に可能性のある若手人材を選抜し、経営陣の近くで経験を積んでいく体制を構築することが大切です。

キャリアステージ別研修

キャリアステージ別研修とは、入社年次や職種とは関係なく、キャリアプランのゴールに到達する過程で、自分に不足していると感じる能力や知識を習得するための研修です。ジョブ型雇用で成果を出しきれていない従業員に対して、現在の業務やポジションにとらわれない学び直しを支援する研修や、企業の事業戦略に沿ったスキルと知識を提供してキャリアチェンジを促す研修もこれに含まれます。

企業側は、いくつかのキャリアプランを想定し、外部の研修システムと連携するなどして、プログラムを設定する必要があるのです。

企業間留学(人材シェア)を活用した研修

従業員に新しい学びを提供する手法としては、企業間留学も活用できます。企業間留学は、従業員を他社に送り出して成長させたい企業と、自社の活性化に向けて他社の従業員を受け入れたい企業を結ぶサービスです。

留学する従業員は、留学先の企業と研修契約を結び、一定期間働いた後で、送り手の企業に戻ります。

ジョブ型雇用の対象となる人材は、「1つの職場でずっと働く」というよりも、「環境を変えながらキャリアを磨いていく」という考え方で、流動的な働き方を求めることがあります。そのため、送り手となる企業に籍を置いたまま、異なる環境で経験が積める企業間留学にメリットを感じる人は多いでしょう。

送り手企業にとっても、社外で経験を積んだ従業員のエンゲージメントが高まったり、留学先での経験を社内に還元してもらうことによって組織が活性化したりといったプラスの効果が期待できます。

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用語集で見る:企業間留学

ジョブ型雇用においても、従業員の育成は重要

工場で社員教育をする風景。

メンバーシップ型雇用は、新卒一括採用からの年功序列・終身雇用が基本であり、就職ではなく「就社」となるのに対して、ジョブ型雇用は文字どおり、職務に人をあてはめる「就職」の雇用スタイルです。

働き手は1社に固執せず、職務におけるステップアップを目指して流動的にキャリアを形成していくため、企業は従業員研修にどこまで投資すべきか悩むかもしれません。

しかし、他社との差別化を図る上でも、人材育成に対する取り組みは重要です。ジョブ型雇用に適応した研修を用意すれば、従業員のパフォーマンスが高まり、経営の安定に不可欠な幹部候補を育成することもできるでしょう。

ジョブ型雇用を導入する際は、研修の内容や実施方法も見直し、制度に合った人材育成の在り方をぜひ追求してください。

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