トリプル改定とは?ポイントと求められる対応について解説

トリプル改定とは?ポイントと求められる対応について解説

2024年度に行われる「トリプル改定」は、医療、介護、障害福祉サービスに関わる多くの人に注目されています。
トリプル改定にはどのような課題が関係しており、関係者にはどのような対応が必要なのでしょうか。
本記事では、トリプル改定が注目されている理由やポイント、改定に関連して各分野の関係者に求められる対応などについて解説します。トリプル改定と背景にある課題を理解し、正しく対応するための参考にしてください。

目次[非表示]

  1. 1.トリプル改定とは3つの報酬改定が重なること
  2. 2.トリプル改定が注目されている理由
  3. 3.トリプル改定のポイント
    1. 3.1.医療・介護・福祉の連携
    2. 3.2.医療と介護のDX
    3. 3.3.外来医療
  4. 4.トリプル改定と関連する動き
    1. 4.1.第8次医療計画がスタート
    2. 4.2.医師の働き方改革がスタート
  5. 5.関係者に求められる対応
    1. 5.1.地域内連携
    2. 5.2.業務効率化
  6. 6.トリプル改定のポイントを理解し、正しく対応しよう

トリプル改定とは3つの報酬改定が重なること

トリプル改定とは、医療、介護、障害福祉サービスなどの報酬の改定が重なることです。

医療行為の対価である「診療報酬」、介護サービスの対価である「介護報酬」、障害者や難病疾患の患者への障害福祉サービスの対価である「障害福祉サービス等報酬」は、定期的に改定が行われています。
診療報酬は2年に1回、介護報酬と障害福祉サービス等報酬は3年に1回、改定されます。2024年度は、これらの改定が重なるため、トリプル改定と呼ばれているのです。

なお、改定が行われる理由は、必要かつ適切な報酬が、経済状況や技術の進歩などによって変わるためといわれています。

トリプル改定が注目されている理由

トリプル改定が行われることでどのような変化が起きるのかは、医療、介護、福祉それぞれの関係者が注目しています。その背景にあるのは、いわゆる「2025年問題」と「2040年問題」という2つの社会課題です。

  • 超高齢社会が進んでさまざまな課題が生じる「2025年問題」
    2025年問題とは、約800万人いるとされる1947~1949年生まれの「団塊の世代」が、2025年にすべて75歳以上の後期高齢者となり、日本の超高齢社会がさらに進むことによって生じる問題を指します。
    2025年には75歳以上の人口が3,653万人に達するといわれ、さまざまな問題が懸念されていますが、医療や介護のニーズの高まりはそのひとつです。

  • 生産年齢人口が減少して財政などが厳しくなる「2040年問題」

    2040年問題は、1970年代前半に生まれた「団塊ジュニア世代」が65歳以上になって、高齢者が約3,900万人となり生産年齢人口(15~64歳)が急速に減少することです。
    生産年齢人口が急激に減ることなどにより、保険制度の維持が財政面から厳しくなるだけでなく、医療や介護の人材確保も難しくなると予想されています。

トリプル改定は、この2つの問題への対処を織り込む重要な改定となることから、多くの関係者が注目しています。

【参考】厚生労働省「我が国の人口について」|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21481.html

【参考】内閣府「令和5年版高齢社会白書 1 高齢化の現状と将来像 第1章 高齢化の状況」|内閣府(2023年6月)
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2023/zenbun/pdf/1s1s_01.pdf

【参考】日本財団ジャーナル 労働力不足、医療人材不足、社会保障費の増大——間近に迫る「2025年問題」とは?│日本財団ジャーナル(2023年5月24日)
https://www.nippon-foundation.or.jp/journal/2023/89142/health_aging

トリプル改定のポイント

トリプル改定にはいくつかのポイントがあります。主なポイントについて、詳しく見ていきましょう。

医療・介護・福祉の連携

トリプル改定では、医療・介護・福祉の連携体制の構築に対する評価がどのように反映されるかが注目されています。

厚生労働省は2025年を目処に、高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最期まで続けられるよう、地域包括的な支援やサービスを提供する体制「地域包括ケアシステム」の構築を目指しています。
地域包括ケアシステムの実現と推進のために求められるのが医療・介護・福祉の連携です。トリプル改定が医療・介護・福祉の連携に対する評価をどの程度反映させたものになるかは、多くの関係者が注目しているといえるでしょう。

【参考】厚生労働省「地域包括ケアシステム」|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/

医療と介護のDX

医療と介護のDX(デジタルトランスフォーメーション)というテーマがどのように盛り込まれるかという点も、トリプル改定のポイントです。

地域包括ケアシステムの構築や高品質な医療の提供は、情報通信機器(ICT)の活用がカギを握ります。政府は医療と介護においてDXを推進し、保健・医療・介護の各段階で得られるデータを予防や治療、ケアに役立てられるよう変革することを目指しています。
こうした動きがトリプル改定にどのように盛り込まれるかは、関係者には目が離せないポイントです。

【参考】厚生労働省「地域における医療及び介護を総合的に確保するための基本的な方針」|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000057828.pdf

外来医療

トリプル改定は、外来医療に関わる課題に影響を与える点からも注目されています。

外来医療の主な課題は、患者の医療機関選択における大病院志向や、患者が外来機能に関する情報を十分に得られていないというものです。厚生労働省はこの課題に対し、かかりつけ医機能の強化、病院・診療所それぞれの外来機能の明確化と分化・連携などを推進しています。
トリプル改定はこの動きにも影響を与えるため、注目が集まっています。

【参考】厚生労働省「外来機能報告等について」|厚生労働省(2023年9月)
https://www.mhlw.go.jp/content/000996355.pdf

トリプル改定と関連する動き

2024年度は、トリプル改定以外にも医療分野に動きがある年です。特に下記の2つの動きは、トリプル改定とも関連しているため覚えておきましょう。

第8次医療計画がスタート

2024年度は、第8次医療計画がスタートする年です。医療計画とは、各地域の実情に応じて適切な医療を提供できる体制を確保するために厚生労働省が策定するもので、現在は6年ごとに再検討されています。

第8次医療計画は2024年度の開始を目指し、地域医療の構想、医師の確保に関する計画、在宅医療、医療と介護の連携などについて、複数のワーキンググループによる検討を実施。トリプル改定のポイントとも重なる部分があるため、改定とともに注目すべき動きといえます。

【参考】厚生労働省「第8次医療計画及び地域医療構想に関する状況」|厚生労働省(2023年1月)
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001040950.pdf

医師の働き方改革がスタート

働き方改革関連法は2019年4月から順次施行されていますが、医師については業務上の諸事情が考慮され、2024年4月から適用されることになっています。

2024年4月以降、徹底されるようになると考えられているのが、労働時間の短縮や連続勤務の制限、勤務間のインターバル確保などです。
トリプル改定のひとつである診療報酬改定は、こうした変化も盛り込んだものとなることが予想されます。

【参考】厚生労働省「医師の働き方改革」|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/ishi-hatarakikata_34355.html

【参考】厚生労働省愛知労働局「「働き方改革関連法」の概要」|厚生労働省愛知労働局
https://jsite.mhlw.go.jp/aichi-roudoukyoku/jirei_toukei/koyou_kintou/hatarakikata/newpage_01128.html

関係者に求められる対応

トリプル改定が行われると、医療・介護・福祉の関係者は、それぞれ現場での対応が必要です。各関係者は、トリプル改定とその背景にある問題への対応を含め、主に下記の取り組みが求められると考えられています。

地域内連携

医療・介護・福祉の関係者に求められる対応のひとつは、地域内連携です。トリプル改定をはじめとした変化を受け、今後は各分野のサービスが「地域完結型」へと移行していくことが予想されます。

地域完結型への移行を実現するには、かかりつけ医や病院、介護・福祉の各施設による「横の連携」がカギを握ると考えられています。
各事業を地域内で多角的に展開し、連携させていくことが大切です。

業務効率化

ICTを活用した業務効率化も重要です。これは、トリプル改定や関連する動きにとどまらず、あらゆる分野における今後の課題といえるでしょう。

遠隔医療の実施はもちろん、医療・介護・福祉の各事業を同一の法人が展開する場合などでも、データを共有するためのシステムやソフトの導入が求められます。
また、各サービスを提供するエリアや機関を集約することで、職員の移動を減らしてサービスの質と量を増やすなどの対策も必要です。

【参考】厚生労働省「令和6年度診療報酬改定に向けた基本認識、基本的視点、具体的方向性について」|厚生労働省(2023年10月)
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001161921.pdf

トリプル改定のポイントを理解し、正しく対応しよう

2024年度のトリプル改定は、診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス等報酬の改定が重なる大きな変化です。その背景には、2025年問題や2040年問題といった日本社会のさまざまな課題があり、トリプル改定に関連する今後の動きからは目が離せません。
医療・介護・福祉の地域内連携やDX、医師の働き方改革など、関係者が取り組むべき課題は多くあります。トリプル改定のポイントを理解し、変化に正しく対応していきましょう。

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<監修者>

丁海煌(ちょん・へふぁん)/1988年4月3日生まれ。弁護士/弁護士法人オルビス所属/弁護士登録後、一般民事事件、家事事件、刑事事件等の多種多様な訴訟業務に携わる。2020年からは韓国ソウルの大手ローファームにて、日韓企業間のM&Aや契約書諮問、人事労務に携わり、2022年2月に日本帰国。現在、韓国での知見を活かし、日本企業の韓国進出や韓国企業の日本進出のリーガルサポートや、企業の人事労務問題などを手掛けている。

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