画像: 健康経営に取り組み笑顔でジャンプする4人の男女

【2022年版】健康経営優良法人とは?概要・認定要件・事例から長所と短所を解説

文/横山 晴美

2022年8月23日更新:【2023年版】健康経営優良法人とは?8月22日から認定申請開始!去年からの変更事項、要件・効果・経済産業省レポートから6社の最新成功事例を解説

  【2023年版】健康経営優良法人とは?認定申請開始!去年からの変更事項、要件・効果・経済産業省レポートから6社の最新成功事例を解説|ステップ – 企業と人を健康でつなぐ 2022年8月申請開始。2023年は申請形式が変更に!第7回を迎えた健康経営優良法人認定制度は、大規模法人部門で2,299社、中小規模法人部門で12,255社もの法人が認定されました。FPでライフプラン応援事務所代表横山さんが2023年度版の要件や概要、効果について、2022年度からの変更点を含めて解説します。 株式会社マイナビ

3月追記:3月9日、経済産業省と日本健康会議から、健康経営優良法人2022が発表されました。大規模法人部門2,299社、中小規模法人部門12,255社、計14554社です。
認定企業一覧は以下のページの下部で見られ、認定企業一覧ファイルのダウンロードが可能です。

  2022年 健康経営優良法人 認定企業発表!(経済産業省公開全リストPDFあり)|ステップ – 企業と人を健康でつなぐ 2022年3月9日、日本健康会議が「健康経営優良法人2022」として、大規模法人部門に2,299法人(上位法人には「ホワイト500」の冠を付加する)、中小規模法人部門に12,255法人(上位法人には「ブライト500」の冠を付加する)を認定し、経済産業省と共に発表しました。全法人リストがダウンロードできます。 株式会社マイナビ

健康経営銘柄2022選定企業発表記事と全法人リストは以下からご覧になれます。

  健康経営銘柄2022 選定法人発表!|ステップ – 企業と人を健康でつなぐ 2022年3月9日、経済産業省と東京証券取引所が「健康経営銘柄2022」として選定発表した50の企業、全法人リストを掲載。健康経営銘柄とは、東京証券取引所の1部・2部上場企業(※TOKYO PRO Marketを除く)の中で、経済産業省が行う「健康経営度調査」に参加して回答し、特に優れていると認められ、なおかつ東証による財務指標スクリーニングで要件を満たした企業です… 株式会社マイナビ

従業員など労働者の安全配慮は使用者の義務と労働契約法で規定されており、これは心身を健康に保つことを含みます。しかし、それ以上に従業員の健康を守ることは企業経営において大きなメリットがあります。近年は従業員の健康維持、増進を経営戦略に組み込む「健康経営」が注目を集めており、積極的に取り組む企業に対して日本健康会議が認定し、経済産業省と共に公表する「健康経営優良法人認定制度」が広まっています。今回は、健康経営優良法人の概要や認定要件、スケジュール、事例などについて詳しく解説します。

目次[非表示]

  1. 1.健康経営優良法人とは?~ホワイト500、ブライト500
    1. 1.1.健康経営が重要視される背景
    2. 1.2.企業規模によって異なる区分 「ホワイト500」と「ブライト500」の違い
  2. 2.2022年版 健康経営優良法人の認定要件
    1. 2.1.大規模法人部門の認定要件
    2. 2.2.中小規模法人部門の認定要件
  3. 3.2022年版 健康経営優良法人の申請フロー
    1. 3.1.2022年 大規模法人部門・ホワイト500の申請フロー
    2. 3.2.2022年 中小規模法人部門・ブライト500の認定フロー
  4. 4.健康経営優良法人制度 2022年版はどう変わった?
    1. 4.1.2022年において変更される部分 
    2. 4.2.状況による制度の変化
  5. 5.認定企業にとっての長所短所と、取り組みへの注意点
    1. 5.1.健康法人優良企業 認定によるメリット
    2. 5.2.健康経営優良法人の取り組みに関するデメリットと注意点
  6. 6.2021年 健康経営優良法人認定企業の事例
    1. 6.1.ボトムアップ型の取り組みで業績上昇/株式会社ライフィ(東京都港区)
    2. 6.2.離職率の低下だけでなく、人材確保にも寄与/協栄金属工業株式会社(島根県)
    3. 6.3.個別面談で従業員のストレス減少/株式会社中沢ヴィレッジ(群馬県)
    4. 6.4.コミュニケーションの促進とともに、企業イメージが向上/明和コンピュータシステム株式会社(栃木県)
  7. 7.まとめ:健康経営優良法人は従業員意識の向上や企業イメージの向上につながる​​​​​​​

健康経営優良法人とは?~ホワイト500、ブライト500

健康経営優良法人に関する本を広げるビジネスマン

健康経営優良法人認定制度とは、経済産業省の定義によると「地域の健康課題に即した取組や日本健康会議が進める健康増進の取組をもとに、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を日本健康会議が認定する制度」とされ、健康経営銘柄と同じく健康経営顕彰制度の一つです。まず、健康経営優良法人が注目される背景や概要を見てみましょう。

健康経営が重要視される背景

経済産業省は健康経営に係る各種顕彰制度として、2014年度から「健康経営銘柄」の選定を行っており、2016年度には「健康経営優良法人認定制度」を創設しました。

健康経営の推進は、安倍内閣が策定した日本再興戦略における「国民の健康寿命の延伸」への取り組みの一環で、医療・介護関係者、関係省庁だけでなく、民間事業者も協力して取り組むべきものとされています。就業期間は成人後の長い時間を占めるため、企業が従業員の健康維持に取り組めば、従業員の心身に大きくポジティブな影響を与えるでしょう。これは「生涯現役社会」の実現に寄与するものとしても注目されています。

さらに、健康経営への積極的な取り組みは、従業員のモチベーション向上や生産性向上につながると考えられ、結果的に企業業績向上や企業競争力向上の効果も得られると期待できます。

企業規模によって異なる区分 「ホワイト500」と「ブライト500」の違い

健康経営優良法人には、規模と評価による区分があります。
2021年においては、大企業が対象の「大規模法人部門」と中小企業が対象の「中小規模法人部門」に分かれ、さらに「大規模法人部門」の上位500社は「ホワイト500」、「中小規模法人部門」の上位500社は「ブライト500」の名称の冠が付加されました。

大規模法人部門と中小規模法人部門の区分は、従業員規模や資本金などにより決まります。ただし、業態により基準が異なるので申請時に経済産業省の申請区分をご確認ください。

なお、「健康経営表彰制度」には、「健康経営優良法人」の他に、東京証券所上場企業を対象とした「健康経営銘柄」を選定する取り組みもあります。両者の大きな差異として、健康経営優良法人では東京証券取引所への上場が不要である点が挙げられます。全体像については下図をご覧ください。

図:健康経営銘柄と健康経営優良法人(ホワイト500、ブライト500)の位置づけ図:健康経営銘柄と健康経営優良法人(ホワイト500、ブライト500)の位置づけ
出展:経済産業省
「健康経営の推進について」より加工

2022年版 健康経営優良法人の認定要件

健康経営優良法人の認定要件が書かれた書類を見る男女

では、健康経営優良法人に認定されるには、どのような条件を満たす必要があるのでしょうか?2022年における健康経営優良法人の認定要件を部門ごとに見てみましょう。

大規模法人部門の認定要件

大規模法人部門において、認定の評価項目は大項目5つに分かれており、その下に複数の小項目が存在します。

1:経営理念
2:組織体制
3:制度・施策実行
4:評価・改善
5:法令順守・リスクマネジメント(自主申告)

この大項目5つそれぞれに複数の「評価項目」が定められています。評価項目への対応は「必須」もしくは「所定の数以上の項目を満たすこと」が求められます。
なお、大規模法人部門における評価項目は同じ内容ですが、「ホワイト500」は「それ以外の大規模法人」よりもやや認定要件が厳しくなっています。

評価項目と認定要件は下図をご覧ください。

表:大規模法人部門認定要件の一覧表:大規模法人部門認定要件の一覧
出展:経済産業省
「健康経営銘柄2022選定及び健康経営優良法人2022(大規模法人部門)認定要件」より引用

中小規模法人部門の認定要件

中小法人の認定要件も、基本の5項目は大規模法人と同一です。しかし評価項目は若干の違いがあります。また認定のために満たすべき項目の数も、大規模法人より少ないのが特徴です(ブライト500を除く)。評価項目と認定要件は下図をご覧ください。

表:中小規模法人部門認定要件の一覧表:中小規模法人部門認定要件の一覧
出展:経済産業省
「健康経営優良法人2022(中小規模法人部門)認定要件」より引用

2022年版 健康経営優良法人の申請フロー

3段階のステップを指さす手

2021年8月30日付で、2022年度に認定される「健康経営優良法人2022」の申請受付が開始されました。続いて、認定を受けるための申請フローについて最新情報を確認してみましょう。

2022年 大規模法人部門・ホワイト500の申請フロー

申請を行うためには、まず、上記の条件を満たすとともに、健康経営度調査に参加する必要があります。実際のフローは以下のとおりです。

1:令和3年度健康経営度調査に回答・申請
2:認定審査の実施
3:日本健康会議において認定
※健康経営度調査については、健康経営銘柄と同一内容です

2022年度選定において、申請までの具体的な日程は次のとおりです。

健康経営度調査
回答期間
2021年8月30日(月)~2021年10月25日(月)17時

選定・認定時期

2022年3月頃(予定)

参照:「健康経営銘柄2022」及び「健康経営優良法人2022」の申請受付を開始しました|経済産業省

2022年 中小規模法人部門・ブライト500の認定フロー

中規模法人部門では「健康宣言事業」に参加することが前提とされます。具体的なフローは以下のとおりです。

1:加入している保険者(※)が実施している健康宣言事業に参加
2:認定申請書の作成
3:日本健康会議人手事務局へ申請
4:認定審査の実施
5:日本健康会議において認定
※保険者=協会けんぽ・健康保険組合連合会・国保組合等

2022年度認定の申請において、具体的な日程はホワイト500と同じです。
申請期間:2021年8月30日(月)~2021年11月1日(月)17時
認定企業の発表:2022年3月頃(予定)

健康経営優良法人制度 2022年版はどう変わった?

2020年から2021年に切り替わる途中の木製カレンダー

健康経営優良法人制度の認定要件は、年々更新されており、常に同じ項目とは限りません。うっかり前年度の要件を見てしまうと、条件に合わない可能性もあります。ここでは、2021年版と比較して、2022年の要件がどのように変わったのかを見てみましょう。

2022年において変更される部分 

2022年では、次のような認定要件の変更が行われます。

  • 大規模法人部門では、実施体制として「産業医・保健師の関与」が必須項目になった
  • 中小規模法人部門では、認定要件について満たすべき項目が増加した
  • 中小規模法人部門ブライト500については、所定の15項目中13項目以上を満たす必要があるなど、認定要件が厳しくなった
  • 大規模法人部門、中小規模法人部門共通の変更では、法令順守の要件として「労働基準法または労働安全衛生法に係る違反により送検されていないこと」が盛り込まれた
  • 同じく両部門における受動喫煙対策について「受動喫煙対策に関する取り組み」に「従業員の喫煙率低下に向けた取り組み」が追加された

細かい点ではありますが、より具体的な要件に変化しています。毎年のように項目の見直しが行われているため、常に最新の情報を把握することが大切です。

状況による制度の変化

健康経営顕彰制度は、社会情勢の変化も反映されます。2021年に引き続き、新型コロナウイルス感染症への対応策が認定要件となっているほか、2022年は職場での感染予防対策に加えワクチン接種に関する項目が新たに盛り込まれました。一方、新型コロナウイルス感染症に伴う特別措置は原則としてありません。例えば実施予定であった取り組みが新型コロナウイルス感染症予防のために中止した場合、該当する取り組みに関する回答をすることはできません。
さらに、制度体制としても申請やフィードバックにおいて電子化も促進しています。今後も制度の改善が図られるでしょう。このように状況に応じた変化は今後も発生すると考えられます。

認定企業にとっての長所短所と、取り組みへの注意点

球の上に乗ったシーソーでバランスを保つプラスとマイナスの箱

健康経営を実施すること自体に大きな利点がありますが、健康法人優良企業に認定されれば、さらにメリットを得られます。具体的な長所短所と、取り組みへの注意点を解説します。

健康法人優良企業 認定によるメリット

2018年に行った健康経営優良法人への経産省のアンケート調査(資料32ページ)によると、認定された法人の中での顕著な意識の変化として、「従業員の健康に対する意識向上」が中小規模法人では1位、大規模法人では2位に挙げられています。企業が実施する健康への取り組みによって、従業員のヘルスリテラシー(健康意識を持ち、生活の質を維持・向上の意思決定を持つ)が向上したことが挙げられています。外からの働きかけをどれほど行っても、本人の健康意識が低いと改善効果は得られにくいので、こうした意識変化は大きなメリットといえるでしょう。

また、同アンケートを見ると、労働時間適正化や有給取得率の向上、社内コミュニケーション、従業員満足度の向上など、他にも社内で多くのメリットがあったことが読み取れます。心身の健康状態が良好になれば、働く意欲も高まり、体調不良に伴う労働生産性の損失を防げます。

加えて、「顧客や取引先に対する企業イメージの向上」といった社外メリットもあったと回答されています。他の経産省の資料では、投資家から中長期的な成長が見込まれると高い評価を得たり、就活生が大幅に増加したり内定辞退率が減った例も見られます。健康経営優良法人に認定されると、広報活動においてそのロゴを使用できます。求職者へもアピールできるため、優秀な人材獲得にも寄与するでしょう。

健康経営優良法人の取り組みに関するデメリットと注意点

健康経営優良法人に認定されることは社内外でのイメージの向上や、従業員満足度の向上などの多くの長所があります。その一方で、認定を受けるには制度を理解したうえで、適切な取り組みを行わなければなりません。
運用担当者の選任や体制づくり、取り組みの周知などやるべきことは多くあります。それらを実施するためには企業内で人材や時間的な余力が必要です。これはデメリットと言えるかもしれません。
企業にとっても従業員にとっても意義のあることとはいえ、運用が負担になってしまうと本末転倒です。手続きの煩雑さと多くのマンパワーを必要とする点は短所であり、自社に即した運用を計画することが必要です。準備が整っていない場合は申し込みを次年度以降に後ろ倒しにすることも検討したほうがよいでしょう。

2021年 健康経営優良法人認定企業の事例

健康経営優良法人認定企業を紹介する若い女性

最後に、2021年に認定された健康経営優良法人(中小規模法人)の事例をいくつか紹介します。

ボトムアップ型の取り組みで業績上昇/株式会社ライフィ(東京都港区)

従業員規模が小さく、取締役1人と従業員4人、さらに外部コンサルタント1人という、少数精鋭体制で健康経営を運用しています。従業員主体のボトムアップ型で取り組みを実施し、生産性向上によって業績も上昇基調となっています。

離職率の低下だけでなく、人材確保にも寄与/協栄金属工業株式会社(島根県)

職場環境の悪化を是正するため、社長や部長などの上層部が中心となって取り組みを推進しています。結果的に離職率は低下し、取り組みは認定によって公的な評価を受け、社長は健康経営を始めてから20件以上の講演依頼を受けました。また県外からの見学者が300人を超え、新卒採用において地元以外からも入社希望者が来るようになりました。

個別面談で従業員のストレス減少/株式会社中沢ヴィレッジ(群馬県)

従業員の個別面談等で健康増進やストレスの減少などの抜本的見直しを実施しました。それによって離職率は28%から11%へと低下。また予防接種の費用補助や有給取得の促進にも力を入れています。

コミュニケーションの促進とともに、企業イメージが向上/明和コンピュータシステム株式会社(栃木県)

従業員用体育館を建設して運動機会を提供するほか、コミュニケーションの促進を目的とした全社イベントを月1回開催するなどの大々的な取り組みを実施。新規採用時の応募者も増加傾向にあるため、企業イメージの向上も実現したと考えられます。

ここで紹介したのはほんの一部です。経営者が主体となって取り組みをけん引する企業、全社一体型、もしくは家族を巻き込む企業など多様な取り組みがあります。健康に関する施策はもちろん、暗黙の社内ルールを就業規則に明文化することで社内周知を図る手法や、人員に余裕がなく、実施が難しい場合に外部委託事業者と協力することでリソース不足を補う、といった手法も見られます。

実施方法に迷う企業は、認定企業の事例を参考にし、自社に合った手法を取り入れていくといいでしょう。

まとめ:健康経営優良法人は従業員意識の向上や企業イメージの向上につながる​​​​​​​

健康経営優良法人の資料の上で握りこぶしを合わせる社員

健康経営優良法人に認定された企業の多くは、従業員の健康意識や従業員満足度の向上などのメリットを実感している様子がわかります。認定には要件がありますが、具体的な取り組みは企業が任意で決定できるのも魅力でしょう。自社の特徴や従業員の状態を見極めたうえで、必要な施策を打ち出すことでオリジナル性の高い施策にもなります。ただし、こうした取り組みは、長期的に続けていく必要があります。無理な取り組みを試みても続かず、マンパワーを浪費しただけとなってしまうかもしれません。認定要件と施策のすり合わせ、そして施策を行うことによるメリットとデメリットを比較し、総合的に判断しながら自社にとってより良い健康経営を実践してみてはいかがでしょうか。

【プロフィール】
横山 晴美(よこやま・はるみ)

ライフプラン応援事務所代表 AFP(アフェリエイティッド・ファイナンシャル・プランナー) FP2級技能士
2013 年にファイナンシャル・プランナーとして独立。一貫して個人の「家計」と向き合う。お金の不安を抱える人が主体的にライフプランを設計できるよう、住宅や保険などお金の知識を広く伝える情報サイトを立ち上げる。またライフプランの一環として教育制度や働き方関連法など広く知見を持つ。


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