解雇やリストラを避けるための経営努力 雇用調整、配置転換、休業、賃金変更、出向支援など 5つの方法とそのステップ

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文/深石 圭介 社会保険労務士

社会保険労務士の深石圭介です。本稿では従業員の解雇に至るまでに検討すべきいくつかの経営戦略と、企業が利用できる助成金についてご説明します。
社会情勢の変化により、事業の経営状態が思わしくないときには人件費の抑制が必要ですが、解雇(リストラ)は従業員やその家族に大きなダメージを与えるため、なるべく回避し、最後の手段として考えたいものです。また、すぐに解雇する会社というイメージを持たれることによるダメージも避けられるかもしれません。

第1段階:リストラの前に雇用調整-雇用と仕事を守る方法

残業抑制

まずは、残業の削減です。人に辞めてもらわなくても、人件費を削減する方法から始めましょう。生産性を向上させる、部分的に収益性の高い仕事のみ残す「仕事のリストラ」などが考えられます。
仕事の棚卸しを行い、ムダな仕事の洗い出しや、スキルの高い従業員に単純作業を行わせていないかなど、配置の見直しも行いましょう。

中途採用をストップ、有期労働契約の雇い止め、採用内定の取り消し

人を「出す」ことより「入る」ほうを止める最初の方法として、新卒の定期採用より優先して、即戦力前提の中途採用を止めます。次に臨時の従業員を雇用することを止め、既存の従業員のみで事業を回すことを考えます。
さらに新規採用で内定を出している方には、丁重に取り消しを通知します。その理由は隠さず、誠実に対応することがポイントです。

人員異動、配置転換

人事異動は、人が余っており仕事がない部門から、人が足りず仕事のある「生み出す」部門へ異動することが基本です。この段階では、あくまで会社内の異動で行います。
社内に部門を新たにつくる、ということも含まれますが、「リストラ部屋」「追い出し部屋」と称される従業員を自己都合退職等に追い込むための部署は、「嫌がらせであり違法(会社の権利の濫用)」であるとして、罰金刑などが課せられる可能性があります。新しい分野などに販路を広げるなど、建設的・積極的な部署の創設を行いましょう。

第2段階:リストラの前に休業―雇用のみ守る方法

休業

採用を止めてもなお仕事がないという場合には、休業です。自宅に待機していただく、または空き時間を利用して教育訓練を行います。会社都合の休業の場合、従業員に休業手当を支払う必要がありますが、その補填として「雇用調整助成金」が利用可能です。
雇用保険に入っていない方には「緊急雇用安定助成金」、休業手当を支払えない会社は「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」などを利用して、労働者(使用従属関係、賃金は支払われているか、が問われる)である従業員に支給しましょう。

第3段階:リストラの前に労働条件や賃金の変更―雇用と仕事の対価や量を減らす方法

労働条件の変更

シフトの曜日変更、休暇中の賃金保障額を減らす、一時帰休、その他福利厚生の削減などの就業規則や雇用契約の変更を伴う場合には「労働条件の不利益変更の手続き」を行いましょう。一番重要なのは対象者の同意を得ることです。
不利益変更の同意は口頭ではなく、個別の同意による書面が必要で、それに関する十分な説明(個人面談や説明会によるもの)が求められます。対象者の同意を得られるよう、誠実に対応しましょう。

賃金の変更

定期昇給の凍結、基本給の減額、賞与・退職金の減額・不支給、手当の削減などです。特に賃金の減額には厳しい要件が求められます。
労使で話し合いを十分にしたこと、その場で多額の営業損失の計上等、経営状況の説明を行ったこと、賃金減額後も業界・地域で賃金水準が高いこと、就業規則変更時の従業員代表からの意見聴取で、特に意見はなかったこと等が問われます。こちらも要件を満たすように誠実に対応していきましょう。

第4段階:リストラの前に出向-仕事のみ守る方法

会社支援 在籍型出向

出向契約書によって元の会社に在籍し、長くても1年ほどで帰ってくる出向契約を指します。
利用できるのは「産業雇用安定助成金」です。出向元の売上が落ちていて、出向先の雇用人数が減っていない(人を減らしていない)という要件が必要です。

会社支援の転職(転籍型の出向)

転籍は、他の会社に根付くように、ある程度元の会社の支援がある「転職」です。
利用できるのは「労働移動支援助成金 再就職支援コース」です。再就職支援計画に基づいて、再就職のための各種支援を人材紹介会社と連携して行い、対象者の再就職につなげることが目的です。

ただ、グループ会社を豊富に抱える大企業と違い、中小企業は出向先そのものがない問題があります。その場合は出向先をあっせんする産業雇用安定センター、マイナビの「出向支援」サービスなどが利用できます。出向対象者と出向先会社のマッチングを図り、出向元、出向先の賃金の支払い方などの契約も調整可能です。

第5段階:退職勧奨、解雇-雇用と仕事の両方を手放す方法

退職勧奨

経済的にも、心情的にも打撃を受けるだろう対象者については「血も涙もない」と言われないように、思いやりのこもった面談が必要です。できるだけのことをしましょう。落としどころは対象者の今までの経歴や現職でのスキルを伝えた上での再就職支援です。第4段階の「出向」では人材紹介会社と連携しましたが、この段階では対象者個人に会社が勧めるだけの形です。

解雇

解雇には、以下の「整理解雇の4要件」を満たす必要があります。

・経営上で必要か
・解雇回避努力を行ったか
・解雇対象者選定は合理的か
・対象者や組合に十分説明し、協議する手続きの相当性を満たしているか

これまで解説してきた1~4段階をすべて踏んでいれば、解雇予告手当を支払うか、1カ月前に書面をもって予告すれば解雇は可能です。
ただし要件を満たしていても、企業としてこれ以上やりようがない、という状況を客観的な書面(財務諸表など)で証明することが必要です。できるだけ会社に対する禍根を残さないように努力をしましょう。ある程度余裕があれば、退職金の積み増し等を行います。

まとめ

厳しい社会情勢により行わねばならない雇用調整。向かい風が強い時は、雇用と仕事を徐々に減らしたり、国や自治体の助成金、経営努力で乗り切りましょう。
各段階で共通して大切なことは、対象者に対する「思いやり」です。職を失うか収入を失うかの瀬戸際に立たされる対象者の心理を想像し、寄り添うことが必要です。

また、雇用調整を進めるなかで注意するべきことは、解雇などの直接的な表現のほか、退職を強要するような表現、謝るような態度、感情的な発言です。嘘をつかず、建前ではなく、誠実に話をして進めていきましょう。

グレースーツにネクタイの社会保険労務士で労務管理事務所新労社代表、深石圭介さん

深石圭介(ふかいし・けいすけ)
社会保険労務士 労務管理事務所新労社代表
1992年新潟大学法学部卒業。以後、会計事務所に入所。さまざまな業種の企業へのサービスで主として労務分野のコンサルティングを経験。
2004年に開業。得意分野は雇用関連助成金の申請、それに引き続く中小企業のための実践的な労務管理制度運用の提案。現在は賃金アップを含めた「新しい資本主義」助成金に注目し、さまざまなコンサルティング・ツールを用いて実践中。著書として「雇用関係助成金 申請・手続マニュアル」(日本法令)がある。

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