育児休暇とは?育児休業との違いや期間、給付金、男性育休などを解説

育児休暇とは?育児休業との違いや期間、給付金、男性育休などを解説


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  1. 1.育児休暇とは?育児休業との違いや期間、給付金、男性育休などを解説
  2. 2.育児休暇とは、会社が独自に設けている制度の総称
  3. 3.育児休暇と育児休業の違いと、産後パパ育休の内容
    1. 3.1.育児休業:育児休業の取得は、法律にもとづく労働者の権利
    2. 3.2.産後パパ育休:改正育児・介護休業法によって2創設された育休制度
  4. 4.国は育児休暇の導入を推進中
  5. 5.企業が育児休暇を導入するメリット
    1. 5.1.会社のイメージが向上する
    2. 5.2.優秀な人材を採用できる
    3. 5.3.人材の流出を防げる
  6. 6.育児休暇を導入する際の注意点
    1. 6.1.全社に周知し理解を得る
    2. 6.2.復帰後の不利益を防ぐ仕組みづくりをする
    3. 6.3.不明点や不安を相談できるようにする
    4. 6.4.給与面を明確にする
  7. 7.育児休暇の導入は健康経営の観点からも有効

育児休暇とは?育児休業との違いや期間、給付金、男性育休などを解説

少子高齢化が進み、生産年齢人口が減少している中、女性活躍の機運が高まっています。しかし、「妊娠」「出産」「育児」といったライフイベントをきっかけとして、やむなく退職を選ぶ女性は今も少なくありません。育児が一段落した後で再度就業したいと願っても叶わず、あきらめている人も多いのが現状です。

優秀な女性を採用し、離職を防ぐには、仕事との両立が最も難しい「産後」の助けになる育児休暇が有効です。今回は、育児休暇の概要や育児休業との違いのほか、育児休暇の期間、給付金について詳しく解説します。男性育休や育児休暇導入による企業のメリットと、導入する際の注意点も紹介しますのでぜひ参考にしてください。

育児休暇とは、会社が独自に設けている制度の総称

育児休暇は、従業員の育児と仕事の両立をサポートし、一定期間育児のみに集中することができるよう、会社が独自に設けている制度の総称です。法律で定められた育児のための休暇は「育児休業」であり、育児休暇とは異なります。

2017年に改正された育児・介護休業法では、事業主に向けて「育児目的休暇の努力義務化」が記載されました。ただし、育児休暇の内容については会社ごとの判断に任されています。そのため、一口に育児休暇といっても、事業主によって名称はそれぞれ異なります。

【参照】厚生労働省「改正育児・介護休業法が10月1日に施行されました」|厚生労働省(2017年10月)https://www.mhlw.go.jp/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/2017/10_03.html

育児休暇と育児休業の違いと、産後パパ育休の内容

育児休暇を正確に知るためには、育児休暇と育児休業との具体的な違いを押さえる必要があります。また、2022年10月に創設された「産後パパ育休(出生児育児休業)」の制度についての理解も必要です。それぞれどのような内容なのか詳しく見ていきましょう。

育児休業:育児休業の取得は、法律にもとづく労働者の権利

育児休業は、一般に「育休(いくきゅう)」と呼ばれるもので、労働者の権利です。育児休暇は会社が独自に設けている制度ですが、育児休業は、育児・介護休業法第2条 にもとづいています。
対象期間は「養育する子が一歳に達する日まで 」で、保育所が見つからないなどの事情があれば、最長2歳まで認められます。

通常、母親は出産から8週間の産後休業を含め、子供が1歳の誕生日を迎える前日まで育休を取得できますが、パパ、ママがともに育児休業を取得する場合は「パパ・ママ育休プラス」の対象となり、子供が1歳2ヵ月に達するまで期間の延長が可能です。

ただし、育児休業の取得は従業員の権利である一方、企業の義務ではありません。企業には、従業員、あるいはその配偶者の妊娠・出産を知った際に「利用できる制度」を知らせる努力義務があるのみです。そのため、各種育児休業取得にあたっては、従業員みずからが申請する必要があります。

なお、育児休業には、利用する従業員に対して経済的なサポートがあります。 具体的にどのようなサポートなのか、詳しく見ていきましょう。

<育児休業の経済的サポート例>

  • 育児休業給付
    育児休業開始から180日目までは休業開始前の賃金の67%を支給し、181日目からは休業開始前の賃金の50%が支給されます。

  • 社会保険料の免除
    育児休業中は健康保険・厚生年金保険料の納付が免除されます。

  • 社会保険料の特例
    育休終了後、仕事と子育ての両立などを理由に報酬が下がった場合、社会保険料の賦課対象を低下後の標準報酬月額に変更できます。

  • 年金計算額特例
    子供が3歳になるまでの各月の給与水準が子育て開始月の前月より低下した期間について、前月の水準に応じた年金給付が保証されます。

【参照】都道府県労働局雇用環境・均等部(室)「育児・介護休業法のあらまし」|厚生労働省(2023年4月)
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000355354.pdf

【参照】厚生労働省「育児・介護休業法関係パンフレット」|厚生労働省(2010年3月)
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/ryouritu/pamph/dl/06_0004.pdf


産後パパ育休:改正育児・介護休業法によって2創設された育休制度

改正育児・介護休業法により、2022年10月1日から「産後パパ育休(出生児育児休業)」が創設されました。

産後パパ育休は、子の出生後8週間以内に4週間まで、2回に分割して取得できるパパ向けの育休制度です。企業は 、従業員が育児休業や産後パパ育休を遠慮なく申請できる風土を醸成するために、研修の実施や相談窓口の設置、事例の収集・提供・各休業制度の取得促進に関する方針の周知といった措置を講じる必要があります。

また、男性従業員に対して、育休取得の権利があること、さらには権利を行使するか否かの確認をすることが2022年4月から義務づけられました。育休中でも、労使合意のもと「休業期間中の所定労働日・所定労働時間の半分」を上限として仕事をすることも可能です。
産後パパ育休の導入に伴い、妻の産後8週間以内にパパが育児休暇を取得した場合、特別な事情がなくても2回目の育児休業を取得できる「パパ休暇」は廃止されています。

なお、改正育児・介護休業法では、産後パパ育休創設のほかに下記の3つが変更されています。

<改正育児・介護休業法の変更事項>

  • 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
    これまで、有期雇用労働者は「休業を申し出た時点で1年以上継続的に雇用されている」「子供が1歳半まで労働契約期間が満了にならない」の2つを満たす必要がありました。今回の改正で前者の条件が撤廃となり、取得条件が緩和されています。

  • 育児休業の分割取得
    これまで育児休業の取得は、原則として分割取得が出来なかったところ、2回に分けて育児休業を取得できるようになりました。

  • 育児休業取得状況の公表の義務化
    ​​​​​​​従業員数1,000人超の企業は、育児休業等の取得状況を年1回公表することが義務づけられました

【参照】都道府県労働局雇用環境・均等部(室)「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」|厚生労働省(2022年12月)
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000789715.pdf

国は育児休暇の導入を推進中

育児休暇は、2017年の育児・介護休業法改正で努力義務となりました。これは、小学校就学前の子供を持つ会社員が、育児目的で利用できる休暇の設置を企業に求めるものです。国は、想定される休暇の取り方として、下記の2つを挙げています。

<想定される休暇内容>

  • 配偶者出産休暇:配偶者が出産する際の立ち会いなどのために取得できる休暇
  • 多目的休暇:入園式、卒園式など、子供の行事参加に活用できる多目的な休暇

育児休暇の努力義務の設定にあたっては、 分割して取得できるようにすること、有期契約労働者も対象とすることが望ましいとされていますが、明確な規定はなく、強制力を伴うものでもありません。そのため、制度を作るかどうかはもちろん、育児休暇の期間や、有給・無給の判断も企業に委ねられているのが現状です。そして、育児休暇の名称も企業によってさまざまです。

育児休暇推奨の目的は、これまで女性が中心となってきた育児に男性の積極的な参加を促すこと。男女が協力して育児をしていけば、女性に偏りがちな育児・家事の負担を夫婦間で自然に分け合うことができ、女性が就業を継続しやすい環境づくりにもつながります。
また、時代の変化とともに増加している、「自分も育児をしたい」という男性の要望を叶える狙いもあります。

【参照】兵庫労働局雇用環境・均等部 企画課「育児休業と育児目的休暇の違いについて」|厚生労働省(2018年 )
https://jsite.mhlw.go.jp/hyogo-roudoukyoku/content/contents/000363242.pdf


企業が育児休暇を導入するメリット

法律で定められている育児休業をしっかりと取得させることは、従業員とその配偶者の出産に際して企業が最低限行うべきことです。
それでは、育児休暇を導入することには、企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。メリットを大きく3つに分けてご紹介します。

会社のイメージが向上する

育児休暇の導入は企業ごとの判断によるため、導入している企業はそこまで多くありません。他社に先駆けて導入することで、「従業員のワークライフバランスに理解のある企業」「女性の働きやすさや、男性の育児に対する価値観の変化に配慮がある企業」として、良い企業イメージが定着します。

優秀な人材を採用できる

仕事に対する価値観や働き方が多様化している今、就職や転職にあたって労働環境を重視した企業選びをする人が増えています。例えば、「ワークライフバランスを重視したいから、テレワークなど柔軟な働き方ができる企業が良い」「最短でキャリアアップできるように、副業を許可している企業が良い」といったことです。

出産、育児を経ても働き続けたい女性や、配偶者とともに積極的に育児参加をしたい男性にとって、育児休暇は非常に魅力的な制度です。育児休暇を制度化して企業の姿勢を周知させれば、優秀な人材を採用できる可能性が高まります。

人材の流出を防げる

育児との両立が難しいことを理由に離職を選択する女性は、依然として多くいます。しかし、育児休暇があることで、女性の心と体に余裕ができれば、仕事を辞めずに済む人も増えるでしょう。
育児休暇の制度化によって、「長く働いてほしい」という企業の思いが従業員に伝わることもメリットのひとつです。

育児休暇を導入する際の注意点

育児休暇を導入する際には注意点もあります。企業は、下記の点に注意して取り組みを進める必要があるでしょう。

全社に周知し理解を得る

育児休暇の導入を決定したら、従業員に向けて取得条件、休暇中の処遇などについて説明をしてください。周知が行き届かず、「取りたかったのに取れなかった」という従業員がいると、せっかくの制度化がマイナスに働く可能性があるからです。

全員に育児休暇制度を利用する権利があることを周知し、従業員の企業に対する信頼感を高めて、モチベーションアップにつなげましょう。
また、育児休暇制度がスタートした後も、定期的な説明会を実施したり、社内サイトに情報をアップしたりして、啓蒙活動を継続してください。新入社員に対しては、研修などで明確に情報を伝えることが大切です。

復帰後の不利益を防ぐ仕組みづくりをする

同じ企業理念に共感する仲間同士でも、出産や育児に対する価値観はさまざまです。中には、法律で定められた育児休業に加えて、育児休暇を導入することに不満を持つ人がいるかもしれません。価値観の相違が復帰後の不利益な扱いにつながれば、育児休暇取得者は働きにくくなり、制度も浸透しにくいでしょう。

また、誰かが育児休暇を取ることによって作業が滞り、残された人にしわ寄せが来れば、休暇取得者に反感が向く恐れもあります。
企業は、従業員間の価値観の相違や、ネガティブな感情を放置せず、丁寧な説明と職場環境の整備に努めることが大切です。

不明点や不安を相談できるようにする

育児休暇中の給与や復帰後の扱い、休暇中の企業との連絡手段など、休暇取得者が不安や疑問を感じたときにすぐ相談できるよう、相談窓口を用意しましょう。育児休業中の社会保険料のことや育児休業給付金の受給に関することなど、育児休業にまつわる諸手続きと併せて相談できると便利です。
会社がしっかりサポートする姿勢を打ち出すことで、従業員は安心して休暇を取ることができます。

給与面を明確にする

育児休暇を取る際、休暇後の仕事への復帰の仕方や、休暇中の処遇は気になるところです。特に給与面については、休暇を取得するか否かの判断を大きく左右するでしょう。
育児休暇制度の詳細は企業の判断で決めるものであるため、社内で十分に検討して決定・周知していってください。

育児休暇の導入は健康経営の観点からも有効

育児休業に加えて企業が育児休暇を導入すれば、従業員は安心して育児に専念できるようになり、エンゲージメントが高まります。育児休暇の充実化は、採用力強化の施策としても非常に有効でしょう。
福利厚生の一環として育児休暇の導入をお考えの方や、その他福利厚生についてお悩みの方は、ぜひマイナビ健康経営にご相談ください。福利厚生にまつわるプロフェッショナルが、具体的なご提案とサポートをさせていただきます。


<監修者>
丁海煌(ちょん・へふぁん)/1988年4月3日生まれ。弁護士/弁護士法人オルビス所属/弁護士登録後、一般民事事件、家事事件、刑事事件等の多種多様な訴訟業務に携わる。2020年からは韓国ソウルの大手ローファームにて、日韓企業間のM&Aや契約書諮問、人事労務に携わり、2022年2月に日本帰国。現在、韓国での知見を活かし、日本企業の韓国進出や韓国企業の日本進出のリーガルサポートや、企業の人事労務問題などを手掛けている。

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