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100年企業をめざすマエダハウジング、社を挙げて健康経営に注力する背景とは?

撮影/和知 明(株式会社BrightEN photo)
取材・文・編集/百谷 伶奈(ナレッジリング)


地域密着企業として、2024年まで11年連続で「広島県総合リフォーム業売上ナンバー1」の記録を更新し続けている株式会社マエダハウジング(2024年10月『リフォーム産業新聞』調べ)。住宅事業を通してお客様の満足、社員の幸福、地域への貢献を同時に実現するという経営理念を掲げ、健康経営にも力を入れてきました。健康づくりや働きやすい環境づくりを軸に、同社の健康経営関連施策を精力的に展開してきた高野由美子さん(経営本部 総務経理室 主任)に、その背景や詳細を伺います

高野由美子(こうの・ゆみこ)

株式会社マエダハウジング 経営本部 総務経理室。
警備会社の総務部門で6年間勤務した後、2013年に株式会社マエダハウジング入社。2017年の働き方改革活動と時を同じくして、ストレスチェックをきっかけに健康経営推進を進める。健康診断や特定保健指導受診の予約をしくみ化し、100%受診を継続。健康経営優良法人認定を維持するとともに、働きがいのある会社認定や女性活躍推進など、働く環境の改善に貢献。若手社員からは「マエダハウジングのお母さん」と呼ばれ、何かと頼りにされる存在でもある。


目次[非表示]

  1. 1.ストレスチェックを機に健康経営に着手
  2. 2.健診受診率100%を諦めないための方法
  3. 3.誰もが機嫌よく、楽しく働ける職場をめざして
  4. 4.「できるように仕組みをつくる」の精神を大切に


ストレスチェックを機に健康経営に着手

リフォーム専門の会社として1993年に創業した弊社は、お客様のご要望に合わせて事業領域を拡大し、現在では新築、不動産、リユースを含めた4事業を展開しています。時代の流れやライフステージによって住まいに関するニーズは変化していくものなので、「住まいと暮らしのワンストップサービス業」を提供する弊社がずっと寄り添い続けられれば――と考えています。これまでの32年間で3万4000件以上の住まいづくりに携わってきましたが、それにとどまるつもりはありません。広島一「ありがとう」や「良かった」が集まる感動コミュニティー企業として、地域で輝く100年企業になることが目標です。

弊社の特徴の一つが、ワンチームであること。営業成績で給与を変えるようなことはせず(賞与は別)、互いにサポートし合える温かな雰囲気の中で業務に当たっており、月初報告会や懇親会など全社で集まる機会も多く設けています。「素直、前向き、感謝! 自らの成長に挑戦し、共に喜びと感動を味わおう!」という言葉を人事理念に掲げ、採用時からこの理念に沿った人物像であるかどうかを重視してきました。工事完了後のお客様アンケートで98.9%のお客様から「大変満足」「満足」という回答を得るなど(2023年度)、細やかな顧客対応力を評価いただいている背景には、こうしたこともあるのかもしれません。



「住まいと暮らしのワンストップサービス業」として「一度の出会いを、一生の出会いに」三世代先まで安心・快適に住み続けられる住まいづくりを提供する同社は、社員だけではなく家族やお客さま、地域にも寄り添うことを大切にしている

そんな弊社が健康経営に着手したのは、およそ5年前のことです。そもそも、弊社の代表取締役である前田政登己は、2012年ごろから健康経営という言葉を意識していたそうです。まだ本格的な施策として明言しないまでも、社内行事を増やしてコミュニケーションを活性化させることなどに取り組んでいました。本格的な着手のきっかけとなったのは、「ストレスチェックをしてみようか」という前田社長からの提案。当時、従業員数だけを見ればストレスチェックは義務ではなかったのですが、健康状態の把握は重要だと判断し、実施することになりました。
 
これを契機に、弊社では健康経営に注力する流れが加速します。ストレスチェック実施と時を同じくして、前田社長が健康宣言を発出。さまざまな施策を展開し、健康経営優良法人認定 中小規模法人部門で2019年から毎年、認定を受けています。「社員の健康なくして会社の成長はない」という前田社長の強い思いをベースに、まずはトップダウンで健康経営の考えを取り入れ、そこから徐々に現場へ浸透させていったイメージです。私は「社員が元気になれることは何でもやってみよう!」という気持ちで、前田社長と現場の橋渡し役を担ってきました。

健診受診率100%を諦めないための方法

社員の健康管理という意味では、健康診断の受診率にこだわることはとても大切です。もともと弊社の受診率は高い方だったと思いますが、生活習慣病予防健診を含めた100%実施を徹底することに力を入れてきました。また、女性に関しては年齢にかかわらず婦人科健診を受けてもらい、全額を会社負担としています。具体的な管理方法としては、私が作成したエクセル表をクラウド上で社内共有し、各自が予約した受診日程を入力してもらいます。明確に締め切り(例年6月ごろ)を設けますが、忙しくて予約できない人がいれば、どれだけ日程が後ろにずれても追い続けます。「会社に指摘される方が面倒くさい」と思われるくらいでなければ、100%の達成は難しいかもしれません。どうしてもという場合は、本人と相談の上、私が予約を代行することもありました。

特定保健指導については、以前は関与していなかったのですが、毎年同じようなメンバーに通知が来ることに気付き、対策することになりました。協会けんぽからの封筒が来たら総務経理室の私たちが保健師と調整を図り、日程を本人に通知。都合が悪ければ各自で変更してもらう流れです。なお、3年ほど前から、再検査も就業時間内に受診してよいことを明言しています。さらに2024年からは、特定保健指導の対象者には健診センターで必ず声かけしてもらい、その場で指導を行ってもらうシステムを導入。この方法で、特定保健指導の受診率も自動的に100%になりました。
 
その他にも、全館禁煙、「チームがん対策ひろしま」への参画など、従業員の健康管理には積極的に取り組んできました。社内コミュニケーションの活性化も継続しており、スポーツ大会やバーベキュー大会などを定期的に実施。もちろん、費用はすべて会社負担で、出勤扱いとなる行事です。スポーツ系のイベントでは保険に加入する他、応援者に対する賞を設けるなど、競技への参加が難しい人も全員楽しめるよう工夫しています。
 
私自身、健康経営に取り組む前は「個人の問題という部分もあるので、あまり会社が立ち入ってはいけないのでは……」という気持ちを少なからず抱えていました。しかし、健康課題へいち早く気付き、対応することの重要性を知ってから、そうした思いは変化していったのです。従業員が心身を病んでしまえば、本人が大変な思いをすることはもちろん、長期の休職につながるなど会社もダメージを受けます。企業として予防的な対策を講じるため、従業員の健康を積極的に応援する姿勢が大切なのだと感じています。


社員の健康について、企業は積極的に「応援」する姿勢が大切だと語る

誰もが機嫌よく、楽しく働ける職場をめざして

健康経営は事業戦略の一環でもあり、特に「働きがいのある環境づくり」や「人的資本経営」といったキーワードに深く関わっています。そうした観点から弊社では、有給休暇取得促進、時短・時差・在宅勤務制度の導入、時間外労働の削減、社内評価制度の改善、DX推進、女性活躍推進などに取り組んできました。育児休業については、女性はもちろんのこと男性についても100%取得を達成。生産性を上げて、なおかつ機嫌よく楽しく働けるような職場であることが重要です。長く勤められる基盤をつくり、「お父さん/お母さんの働く会社に入りたい」とお子さんに思ってもらえるようになれば最高ですね。
 
DX推進では、遠隔現場管理ロボット/カメラの導入が目玉です。これは、現場を360度カメラで撮影することで、工事に携わるスタッフ全員が 状況をチェックできるようにしたもの。実は、リフォームや新築などの事業では、現場への移動に大きな時間が取られてしまうという課題がありました。複数の現場を訪問する場合、1日の半分が移動時間に費やされることも珍しくありません。職人や現場監督に現場を撮影してもらい、設計担当者やプランナーは事業所にいながら作業の進捗を確認することで訪問回数を減らせれば、サービスのクオリティーは落とさずに生産性を向上できるというわけです。
 
こうして働きやすい環境を整えることは、女性活躍推進にもつながっています。男性の育児休業取得者が増えれば育児の負担感も理解し合えるし、現場訪問の回数や残業時間が減らせれば子育て中の女性でも現場監督を務めやすくなります。弊社の女性比率は約38%と、もともと業界内では多い方ですが、より一層活躍しやすい職場になれるよう工夫を重ねていきたいです。
 
さらに、私を含めた総務経理室の2人が両立支援コーディネーター基礎研修を修了しました。両立支援コーディネーターとは、治療と仕事の両立を望む従業員に対して、両立支援に関わる企業や主治医と円滑にコミュニケーションを取れるようサポートする人材のことで、独立行政法人労働者健康安全機構が養成しています。メンタル不調を予防したり、復職を前提にしたリワーク支援を行ったりするために、必要な知識を備えることも大切だと考えています。

「できるように仕組みをつくる」の精神を大切に

こうしてさまざまな施策に着手してきた結果、健康経営の意義が十分に社内に浸透してきました。健康経営が当たり前のものとして機能し始めた感覚で、「特別なことを行っている」という感覚はないです。現状では困りごともありませんが、今後の課題として見据えているのは、心身の疾患や介護による休職者が出てきた場合の支援ですね。前例がない中ではありますが、よりスムーズな両立や復帰がかなえられるよう、的確に対応していきたいと思います。
 
健康経営にコツコツ取り組んでいくと、広報的な意義が出てくることも実感しています。いわゆるコマーシャルを打ったわけではありませんが「新聞に掲載されていたよ」「すごい賞を受賞したらしいね」などと地域の皆さんに声をかけていただく場面が増えました。もちろん、採用においても大きなメリットとなっています。将来的には、健康経営優良法人の中でもブライト500(中小規模法人部門のうち上位500の企業に与えられる称号)を得ることを目標にしています。


健康経営が浸透し、感じるメリットを嬉しそうに語る高野由美子さん

「素直、前向き、感謝」をモットーに人材育成してきたこともあり、弊社は健康経営を推進しやすい土壌があったように思います。しかし、それでも導入当初は肯定的でない意見が出ることもありました。取り組みが軌道に乗るまでの3年間くらいは、ある程度の辛抱が担当者には求められるでしょう。そして、「自分たちの健康に関わることだ」と従業員が理解してくれるよう、しっかりとその意義を伝え続けることを忘れずにいてください。
 
健康経営に着手した当初は、前田社長と私の二人三脚を中心に、各施策を推進していました。しかし、今では総務経理室という部署も設置され、後進も育成中です。私自身は2024年に定年を迎え、現在は嘱託社員としてこの業務に当たっている立場ですから、健康経営についてもしっかりと引き継ぎをすることが任務です。前田社長の「できないことに目を向けてもしょうがない、できるように仕組みをつくろう」という口癖の通り、これからも新しいことにチャレンジし続けられる会社であってほしいと思います。

株式会社マエダハウジングの「健康経営」について、
詳しくはこちらをご覧ください。

※株式会社マエダハウジングのWEBサイトに遷移します。https://www.maedahousing.co.jp/media/cat11042/


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