高年齢雇用継続給付金とは?給付金の計算法や申請時の注意点など解説

高年齢雇用継続給付金とは?給付金の計算法や申請時の注意点など解説

2021年4月より高年齢者雇用安定法の法改正が施行され、60歳定年制を採用する企業に対しても65歳までの雇用確保が義務付けられました。加えて、65歳から70歳までの就業機会確保が企業の努力義務になり、働く意欲がある高齢者はこれまで以上に長く社会に貢献できるようになりました。
少子高齢化で働き手の確保が難しくなる中、豊富な知識と経験がある高齢者を雇用することは、企業にとっても大きなメリットになるのではないでしょうか。

一方、年齢とともに一部の能力が低下することも考えられ、高齢者の賃金は定年退職時の50~70%に設定されることが多いようです。この賃金ギャップを埋め、労働者の生活を補う目的で支給されるのが「高年齢雇用継続給付金」です。
本記事では、高年齢雇用継続給付金の概要から計算方法、申請の仕方、注意点までを解説。併せて、支給要件や支給対象者、受給期間、給付額などについてもご紹介します。

【参照】厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~」|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/koureisha/topics/tp120903-1_00001.html

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目次[非表示]

  1. 1.高年齢雇用継続給付金とは、雇用保険の給付のひとつ
    1. 1.1.高年齢雇用継続給付金が必要とされた背景
    2. 1.2.高年齢雇用継続給付金は2種類
  2. 2.高年齢雇用継続給付金の変更点と廃止の可能性
  3. 3.高年齢雇用継続給付金の支給要件
  4. 4.高年齢雇用継続給付金の支給対象者
    1. 4.1.高年齢雇用継続基本給付金の支給対象者
    2. 4.2.高年齢再就職給付金の支給対象者
    3. 4.3.高年齢雇用継続給付金を受給できない人
    4. 4.4.高年齢雇用継続基本給付金の支給期間
    5. 4.5.高年齢再就職給付金の支給期間
  5. 5.高年齢雇用継続給付金の支給額
  6. 6.高年齢雇用継続給付金の計算方法
    1. 6.1.高年齢雇用継続給付金の上限額と下限額
    2. 6.2.従業員や企業の責任で賃金が低下すると、みなし賃金が算定される
  7. 7.高年齢雇用継続給付金の申請方法
    1. 7.1.高年齢雇用継続給付金の申請に必要な書類
    2. 7.2.高年齢再就職給付金の申請手順
  8. 8.高年齢雇用継続給付金と年金の関係
  9. 9.雇用者が高年齢雇用継続給付金で押さえるべきポイント
  10. 10.被雇用者が高年齢雇用継続給付金の支給を受けるにあたっては、押さえるべきポイントがあります。押さえるべきポイントを3つにわけて紹介します。
    1. 10.1.高年齢再就職給付金と再就職手当の併給はできない
    2. 10.2.高年齢雇用継続給付金には申請期限がある
    3. 10.3.初回申請後は指定期限までに支給申請書を提出する
    4. 10.4.雇用契約の種類によらず受給申請はできる
  11. 11.高年齢者の雇用にあたっては、高年齢雇用継続給付金を活用しよう

高年齢雇用継続給付金とは、雇用保険の給付のひとつ

高年齢雇用継続給付金は、60歳以上65歳未満の雇用保険の一般被保険者で、賃金額が60歳の時点で支給されていた額の75%未満である従業員に対して支給される給付金のことであり、雇用保険の給付のひとつです。
事前にハローワークに高年齢雇用継続給付金の申請手続を行い、認められれば各月に支払われた賃金の最大15%が支給されます。まずは、高年齢雇用継続給付金が必要とされた背景や、高年齢雇用継続給付金の種類をご紹介します。

高年齢雇用継続給付金が必要とされた背景

65歳までの雇用確保と、就業を希望する70歳までの人の就業機会確保を求める高年齢者雇用安定法により、企業は下記のいずれかの措置を実施することが努力義務となりました。

<高年齢者雇用安定法による企業の努力義務>

  • 70歳までの定年引き上げ
  • 定年制の廃止
  • 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入(特殊関係事業主に加えて、ほかの事業主によるものを含む)
  • 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
  • 70歳まで継続的に「事業主がみずから実施する社会貢献事業」もしくは「事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業」に従事できる制度の導入

60歳以上の再雇用者は知識と経験が豊富である反面、再雇用後に身体能力や記憶力などが衰えていく可能性もあります。そのため、再雇用制度や勤務延長制度を導入した企業のほとんどは、再雇用した従業員の給与を定年時より低く設定するようになりました。

しかし、急激に賃金額が減ると生活レベルを維持することが難しい場合や、従業員のモチベーションが落ちる場合があります。そんな高齢者の経済的なギャップを、少しでも埋めるために高年齢雇用継続給付が作られました。

【参照】厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~」|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/koureisha/topics/tp120903-1_00001.html

高年齢雇用継続給付金は2種類

高年齢雇用継続給付金には、「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」の2つがあります。それぞれの特徴は下記のとおりです。

  • 高年齢雇用継続基本給付金
    高年齢雇用継続基本給付金は、退職後に失業保険による基本手当や再就職手当などを受け取らず、60歳到達後も継続して同じ会社で雇用される人が対象です。いったん退職しても、失業保険を受け取らずに再就職すれば申請が可能であり、最大で5年間受給することができます。
  • 高年齢再就職給付金
    高年齢再就職給付金は、60歳以降に一度離職し、雇用保険(基本手当)を受給している期間中に再就職する人が申請できます。失業保険の残日数に応じて最長2年間まで給付が受けられます。

【参照】厚生労働省沖縄労働局「高年齢雇用継続給付について」|厚生労働省
https://jsite.mhlw.go.jp/okinawa-roudoukyoku/content/contents/000819695.pdf

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高年齢雇用継続給付金の変更点と廃止の可能性

高齢者の雇用をスムーズに拡大したい企業側にも、良い条件で働き続けたい労働者側にもメリットがあった高年齢雇用継続給付金ですが、2020年度の通常国会で段階的な縮小が決まりました。
2025年4月以降、高年齢雇用継続給付金の給付率は、現状の15%に対して原則10%となる予定です。

その背景には、たび重なる就労年齢の引き上げとともに、勤務環境の整備が進んだことがあります。特に、70歳までの就業機会確保が雇用者側の努力義務となったことで、高齢者が働きやすい環境も整いつつあります。

高齢者を多く雇用し、高年齢雇用継続給付金によって定年前との収入の差額を補填していた企業では、今回の縮小による影響を大きく受ける可能性があります。2024年11月現在、段階的な縮小から廃止に向かうことは明言されていませんが、企業は廃止の可能性を考慮して処遇改善などの対策を検討する必要があるでしょう。
なお、60歳から64歳までの高年齢労働者の処遇改善に向けて賃金規定の増額に取り組む場合、高年齢労働者処遇改善促進助成金を申請することが可能です。

【参照】厚生労働省「高年齢雇用継続給付の見直し(雇用保険法関係)」|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000744250.pdf

【参照】厚生労働省「高年齢労働者処遇改善促進助成金」|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/index_00039.html

高年齢雇用継続給付金の支給要件

高年齢雇用継続給付金は、一般被保険者として雇用されている支給対象月(月初から月末まで一般被保険者だった月)において、下記の条件を満たしている人に対して支給されます。

<高年齢雇用継続給付金の支給要件>

  • 支給対象月の初日から末日まで被保険者である
  • 支給対象月中に支払われた賃金が、60歳到達時等の賃金月額の75%未満に低下している
  • 給対象月中に支払われた賃金額が、支給限度額(※1)未満である
  • 申請後、算出された基本給付金の額が、最低限度額(※2)を超えている
  • 支給対象月の全期間にわたって、育児休業給付または介護休業給付の支給対象となっていない

※1 37万円程度。支給限度額は「毎月勤労統計」の平均定期給与額により毎年8月1日に改定される可能性があります。
※2 2,000円程度。最低限度額は「毎月勤労統計」の平均定期給与額により毎年8月1日に改定される可能性があります。

【出典】厚生労働省「Q&A~高年齢雇用継続給付~」|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158464.html

高年齢雇用継続給付金の支給対象者

ここでは高年齢雇用継続給付金の支給対象者を具体的に見ていきましょう。自社に支給対象者となる人がいないか、ぜひ確認してみてください。

高年齢雇用継続基本給付金の支給対象者

高年齢雇用継続基本給付金は、雇用保険(基本手当など)を受給しておらず、60歳になった後に60歳時点の75%未満の賃金で継続して雇用されることが決まっている人に対して支給される給付金です。支給にあたっては、下記の2つの条件を満たす必要があります。

<高年齢雇用継続基本給付金の支給対象者>

  • 60歳以上、65歳未満の一般被保険者である
  • 一般被保険者であった期間が通算して5年以上ある(基本手当を受給したことがある人は、受給後の期間に限る)

高年齢再就職給付金の支給対象者

高年齢再就職給付金は、いったん退職して基本手当を受給している最中に再就職する人を対象としています。支給にあたっては、再就職後の賃金が基本手当の基準となる賃金日額を30倍した額の75%未満であることを前提として、下記の条件を満たす必要があります。

<高年齢再就職給付金の支給対象者>

  • 60歳以上、65歳未満の一般被保険者である
  • 基本手当についての算定基礎期間が5年以上ある
  • 再就職した日の前日における基本手当の支給残日数が100日以上ある
  • 1年を超えて雇用されることが確実な安定した職業に就いている
  • 同一の就職において、再就職手当の支給を受けていない

【出典】厚生労働省「Q&A~高年齢雇用継続給付~」|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158464.html

高年齢雇用継続給付金を受給できない人

高年齢雇用継続給付金は、現在の年齢や働き方などによって受け取ることができないケースがあります。高年齢雇用継続給付金を受給できない条件は、下記のとおりです。

<高年齢雇用継続給付金を受給できない主な条件>

  • 65歳以上
    高年齢雇用継続給付金は、60歳以上65歳未満の一般被保険者が対象です。
  • 会社役員などに就任している
    取締役など会社役員の場合は、原則として雇用保険の被保険者にはなれないため、高年齢雇用継続給付の対象外です。
  • 労働時間が短い
    雇用継続後の勤務が1週間20時間未満の場合、雇用保険非加入のため対象外となります。
  • 介護休業給付金を受け取っている
    介護休業給付金は、介護を目的として仕事を休んだ場合の生活を支えるために支給される給付金です。月の初日から末日まで、引き続いて介護休業給付の対象となる休業をした月は、高年齢雇用継続給付の対象外となります。

    【参照】厚生労働省「高齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続について」|厚生労働省
    https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001282595.pdf
    高年齢雇用継続給付金の受給期間

高年齢雇用継続基本給付金と高年齢再就職給付金は、それぞれ受給できる期間が異なります。受給はどの程度の期間まで可能なのか見ていきましょう。

高年齢雇用継続基本給付金の支給期間

高年齢雇用継続基本給付金の支給期間は、60歳になった月から65歳になる月までが対象です。ただし、支給月は、1日から月の末日まで雇用保険の一般被保険者である必要があります。65歳になる月の半ばで退職してしまった場合は、その月の給付金が支給されないため注意しましょう。

高年齢再就職給付金の支給期間

高年齢再就職給付金は、再就職日の前日における基本手当(失業保険)の支給残日数によって決まります。なお、失業保険の支給残日数が100日未満の場合は受給対象となりません。

<高年齢再就職給付金の支給期間>

失業保険の支給残日数が100日以上200日未満の場合:再就職をした日の翌日から、最長1年間

支給残日数が200日以上の場合:再就職をした日の翌日から、最長2年間

失業保険の支給日数について詳しくは、下記のハローワーク インターネットサービスの「基本手当の所定給付日数」もご参照ください。

【参照】ハローワーク インターネットサービス「基本手当の所定給付日数」|厚生労働省
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_benefitdays.html

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高年齢雇用継続給付金の支給額

高年齢雇用継続給付金は、60歳到達時の賃金月額に対する、支給対象月に支払われた賃金額の低下率に応じて支給されます。ここからは、高年齢雇用継続給付金の計算方法や、上限額と下限額などについて見ていきましょう。

高年齢雇用継続給付金の計算方法

高年齢雇用継続給付の給付額を求める際は、まず賃金の低下率を算出する必要があります。賃金の低下率は下記の計算式で算出します。

<高年齢雇用継続給付における賃金の低下率の計算式>

賃金の低下率=支給対象月に支払われた賃金の金額÷60歳到達時の賃金月額×100

高年齢雇用継続給付は、毎月の賃金から低下率に応じた金額が支給されます。そのため、毎月一律の金額ではありません。

高年齢雇用継続給付金は、賃金の低下率が61%以下の場合と、61%超75%未満の場合とで、支給額の計算式が下記のように変わります。また、低下率が75%以上の場合は支給されません。それぞれの計算式を見てみましょう。

<低下率61%以下の高年齢雇用継続給付金の支給額の計算式>

支給額=支給対象月に支払われた賃金の金額×15%

<低下率61%超75%未満の高年齢雇用継続給付金の支給額の計算式>

支給額=183÷280×支給対象月に支払われた賃金の金額+137.25÷280×賃金月額

支給額は、賃金の低下率によってはこのような複雑な計算が必要になりますが、厚生労働省が公開している「高年齢雇用継続給付支給率の早見表」を使用すれば、おおよその額を簡単に求めることができます。

■高年齢雇用継続給付支給率の早見表高年齢雇用継続給付支給率の早見表

高年齢雇用継続給付金は、60歳到達時の賃金月額と、支給対象月に支払われた賃金額を比較し、低下率に応じた支給率を後者に掛けることによって計算します。

<高年齢雇用継続給付金の支給額の計算式>

支給額=支給対象月に実際に支払われた賃金額×支給率

例えば、60歳時点で30万円の賃金をもらっていた人が、60歳以降では各月21万円の賃金をもらっていた場合、低下率は70%となります。下記の早見表を確認すると、低下率70%の支給率は4.67%です。

高年齢雇用継続給付の支給額の計算式に則り、60歳以降に各月21万円の賃金をもらっていた人の支給額は下記の計算式で求められます。

<60歳以降で各月21万円の賃金をもらっていた場合の計算式>

21万円×4.67%=9,807円

【出典】厚生労働省「Q&A~高年齢雇用継続給付~」|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158464.html

高年齢雇用継続給付金の上限額と下限額

高齢者雇用継続給付金の支給額には、上限と下限が設けられています。上限額は37万6,750円、下限額は2,295円です(2024年8月時点)。賃金と支給額の合計が上限を超える場合は、上限額に収まるよう差額が支給されます。支給額の下限を下回った場合、支給はありません。

【参照】厚生労働省 都道府県労働局ハローワーク「高年齢雇用継続給付」|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/001281481.pdf

従業員や企業の責任で賃金が低下すると、みなし賃金が算定される

従業員本人、または企業の責任で各月の賃金が低下した場合や、雇用保険以外に該当する社会保険がある場合、「みなし賃金」が算定されます。

みなし賃金とは、減額された金額が支払われたものとみなして賃金の低下率を計算する方法です。みなし賃金が算定されるのは、例えば下記のようなケースです。

<みなし賃金が算定されるケース>

  • 冠婚葬祭などを含め、本人の都合による欠勤
  • 疾病、または負傷による欠勤
  • 介護のための欠勤
  • 妊娠、出産、育児による欠勤
  • 事業所の休業

【参照】厚生労働省「みなし賃金について」|厚生労働省
https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-hellowork/content/contents/001330381.pdf

高年齢雇用継続給付金の申請方法

高齢者雇用継続給付金は、事業所を管轄するハローワークに事業主が申請します。続いては、高年齢雇用継続給付金を申請する際に必要な、書類や手順について見ていきましょう。

高年齢雇用継続給付金の申請に必要な書類

高年齢雇用継続給付金の申請には、下記の提出書類が必要です。

<高年齢雇用継続給付金に必要な提出書類>

  • 高年齢雇用継続給付支給申請書:初回の申請時は「高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書」の用紙を使用
  • 雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書:事業主控えとハローワーク提出用の2枚
  • 年齢確認資料:運転免許証や住民票、パスポートなど
  • 振込先確認資料:通帳またはキャッシュカードの写し(マイナンバー届け出済で、公金受取口座への振込を希望する場合は払渡希望金融機関指定届を提出)
  • 添付書類(高年齢雇用継続基本給付金のみ):「雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書」に記載した期間分の「賃金台帳・労働者名簿」と、支給対象期間分の「賃金台帳・出勤簿」

【参照】ハローワーク インターネットサービス「雇用継続給付」|厚生労働省
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_continue.html

【参照】ハローワーク品川「高年齢継続給付申請の概要・手続きの流れ」|厚生労働省(2023年9月)
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-hellowork/list/shinagawa/jigyounushi/koyoukeizoku_00003.html

高年齢雇用継続基本給付金の申請手順

高年齢雇用継続基本給付の申請は、原則として2ヵ月に1度、事業主が支給申請書を提出する必要があります。下記の流れで、高年齢雇用継続基本給付の申請を行いましょう。

<高年齢雇用継続基本給付金の申請から給付までの流れ>

  1. 従業員が受給資格確認票と支給申請書を記入し、企業に提出する
  2. 企業が「1」の書類と賃金証明書をハローワークに提出する
  3. ハローワークから企業に、受給資格確認通知書、支給(不支給)決定通知書、次回使用する支給申請書が交付される
  4. 企業が「3」の書類を従業員に渡す
  5. ハローワークから従業員に給付金が支給される

高年齢再就職給付金の申請手順

高年齢再就職給付金の申請は、企業が従業員を雇用後、すみやかに行う必要があります。下記の流れで高年齢再就職給付金の申請を行ってください。

<高年齢再就職給付金の申請から給付までの流れ>

  1. 従業員が受給資格確認票と支給申請書を記入し、企業に提出する
  2. 企業が「1」の書類をハローワークに提出する
  3. ハローワークから企業に、受給資格確認通知書と支給申請書が交付される
  4. 企業が「3」の書類を従業員に渡す
  5. 従業員が支給申請書を記入し、企業に提出する
  6. 企業が「5」の書類をハローワークに提出する
  7. ハローワークから企業に、支給(不支給)決定通知書と次回使用する支給申請書が交付される
  8. 企業が「7」の書類を従業員に渡す
  9. ハローワークから従業員に給付金が支給される

【参照】厚労省「高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続について」|厚生労働省
https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-hellowork/content/contents/001720145.pdf

高年齢雇用継続給付金と年金の関係

高年齢雇用継続給付金を受給すると、年金の一部を受け取ることができません。65歳になるまでに特別支給の老齢厚生年金などの老齢年金を受給している場合、高年齢雇用継続給付金を受け取ると、在職を理由にした年金の支給停止に加えて、最高で賃金(標準報酬月額)の6%まで年金が支給停止になるためです。

対象となる年金は、1961年4月1日(女性は1966年4月1日)以前に生まれた人で、厚生年金保険または共済組合等の加入期間が1年以上あり、老齢基礎年金の受給要件を満たしている場合に受けられる特別支給の老齢厚生年金などがあります。

【参照】日本年金機構「年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付との調整」|日本年金機構(2024年9月30日)
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/koyou-chosei/20140421-02.html

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雇用者が高年齢雇用継続給付金で押さえるべきポイント

被雇用者が高年齢雇用継続給付金の支給を受けるにあたっては、押さえるべきポイントがあります。押さえるべきポイントを3つにわけて紹介します。

高年齢再就職給付金と再就職手当の併給はできない

雇用保険の失業等給付の就職促進給付には、「再就職手当」「就業促進定着手当」「就業手当」といった就業促進手当があります。

このうち、再就職手当は、基本手当を受給できる安定した職業に就き、一定の要件を満たす場合に支給されるものです。再就職手当は、高年齢再就職給付金との併給ができないため、いずれか一方を被雇用者が選ぶことになります。支給決定後は変更ができませんので注意してください。

<再就職手当の特徴>

  • 一括支給で高年齢再就職給付金との併給調整が不可
  • 再就職後の賃金変動に影響されない
  • 年金と併給調整されない

<高年齢再就職給付金の特徴>

  • 1~2年程かけての支給で年金と併給調整が可能
  • 賃金が変動すれば給付額も変化する
  • 支給額は「基本手当日額×支給残日数×支給率(※3)」

※3 支給率は上記「高年齢雇用継続給付支給率の早見表」参照

高年齢雇用継続給付金には申請期限がある

高年齢雇用継続基本給付金に関する申請に期限があります。期限は、最初に支給を受けようとする支給対象月から4ヵ月以内です。給付金の支払先は従業員の口座ですが、申請手続きは勤務先を通じて行う必要があるため、期限を超過しないよう注意してください。なお、被雇用者自身が希望する場合は、事業主でなく本人でも手続きをすることができます。

一方、高年齢再就職給付金には申請期限はありませんが、雇用後はすみやかに提出しましょう。

初回申請後は指定期限までに支給申請書を提出する

高年齢雇用継続給付金は、初回申請を済ませた後も定期的に支給申請書を提出する必要があります。高年齢雇用継続基本給付金と高年齢再就職給付金、それぞれの提出期限を把握しておき、定められた期間に必ず提出しましょう。

<支給申請書の提出期限>

高年齢雇用継続基本給付金、高年齢再就職給付金共に:事業所を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)が指定する支給申請日指定通知書に記載された期限

【参照】厚生労働省都道府県労働局公共職業安定所(ハローワーク)「高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続きについて」|厚生労働省
https://www.lcgjapan.com/pdf/lb05241.pdf

受給資格は定年の年齢とは関係がない

2025年4月1日以降は、希望者全員に65歳まで雇用機会を確保することが企業の義務になります。ただし、高年齢雇用継続給付金の受給資格が発生するのは、60歳時点の賃金より減っている場合であって、定年の年齢には関係がありません。

通常、60歳を超えて同じ会社で働く場合、同じ業務内容であっても賃金が低下するのが一般的です。厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」によれば、55~59歳の平均月給は37万6,400円であるのに対し、60~64歳は30万5,900円と7万円近くの差があることがわかります。

定年の年齢を65歳に設定していたとしても、60歳を過ぎてから賃金が75%未満に低下した場合は、高年齢雇用継続給付金の受給資格が生じることを覚えておきましょう。

【参照】厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査の概況」|厚生労働省(2024年3月27日
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2023/dl/13.pdf

雇用契約の種類によらず受給申請はできる

高年齢雇用継続給付金は、「60歳以上65歳以上の雇用保険一般被保険者」であり、被保険者としての期間が5年以上あれば、雇用形態によらず受給申請できます。フルタイムの正社員だけでなく、パートタイマーなども対象です。ただし、派遣社員は、雇用契約を結んでいる派遣元と相談してください。

高年齢者の雇用にあたっては、高年齢雇用継続給付金を活用しよう

高年齢雇用継続給付金は、賃金額が60歳の時点で支給されていた額の75%未満である従業員に対して支給される給付金です。

雇用保険に加入していない会社役員や、雇用継続後の勤務が週に20時間未満の人などを除いて、正社員以外も対象になります。また、企業が定年の年齢を65歳に設定していたとしても、60歳以降に賃金が75%以下まで低下していれば、受給資格があります。積極的に高年齢者を雇用している企業は、労働者の生活基盤の安定とモチベーション向上に向けて給付金を活用しましょう。

ただし、2025年4月からは給付率が変わる可能性があるため、高年齢者がいきいきと働ける環境づくり、制度づくりも併せて進めることが大切といえます。高年齢者が活躍できる環境整備に向けたウェルネスサポートなどをご検討中の方は、「マイナビ健康経営」にぜひお声がけください。

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<監修者>

丁海煌(ちょん・へふぁん)/1988年4月3日生まれ。弁護士/弁護士法人オルビス所属/弁護士登録後、一般民事事件、家事事件、刑事事件等の多種多様な訴訟業務に携わる。2020年からは韓国ソウルの大手ローファームにて、日韓企業間のM&Aや契約書諮問、人事労務に携わり、2022年2月に日本帰国。現在、韓国での知見を活かし、日本企業の韓国進出や韓国企業の日本進出のリーガルサポートや、企業の人事労務問題などを手掛けている。