老後の資産形成iDeCo(イデコ)【実践編】 FPが初心者向けに商品の特徴・おすすめ証券会社からわかりやすく解説

老後の資産形成iDeCo(イデコ)【実践編】 FPが初心者向けに商品の特徴・おすすめ証券会社からわかりやすく解説

文/斎藤 勇 ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士

公的年金に積み増しする老後の資産形成の手段として注目されているiDeCo(イデコ)。今回は、実践編としておすすめの商品や、運用方針に合わせた選び方など、iDeCo(イデコ)を始めた人がステップアップするためのポイントをファイナンシャルプランナーの視点から解説します。
前回はイデコの基礎について解説しました。まとめて読む場合はiDeCoかマネーのタグ(タイトル下の#がついて丸で囲んでいる単語)をクリックすると、まとめて読めます。

目次[非表示]

  1. 1.iDeCo(イデコ)にはどのような商品がある? 特徴は?
    1. 1.1.元本割れするリスクの「なし・あり」で分類する
      1. 1.1.1.元本確保型…定期預金や保険
      2. 1.1.2.元本変動型…投資信託など
    2. 1.2.投資信託の運用先によって分類する
    3. 1.3.投資信託の運用のスタイルで分類する
  2. 2.どの商品に投資すればいい? ファイナンシャルプランナーのおすすめをご紹介
    1. 2.1.元本割れは絶対に避けたいという人は「定期預金」で決まり!
    2. 2.2.コストをかけずに資産を増やしたい人は「インデックス型ファンド」がおすすめ!
  3. 3.分散投資をしたいけど、難しいことは考えたくないという人は「バランス型ファンド」にしよう!
    1. 3.1.複数の運用先を選んでもOK!
  4. 4.市場が急変したときにはどうしたらいい?
    1. 4.1.売り急ぎは禁物。焦らずじっくり待つことも大切
    2. 4.2.不安で仕方ないときは、運用方針を見直してみる
    3. 4.3.市場が落ち着いたら、資産の配分をチェック
  5. 5.iDeCo(イデコ)を運用する以上は自己責任、放置は厳禁!運用成績は定期的にモニタリングしよう

iDeCo(イデコ)にはどのような商品がある? 特徴は?

iDeCo(イデコ)は、金融機関が用意した商品の中から運用先を選ばなければなりません。そのため、いざ選ぼうとすると、「どんなリスクがあるのか」「リターンはどの程度期待できるのか」といったことが気になるのではないでしょうか。

そこで覚えておきたいのは、「リスクとリターンは比例する」ということ。資産が増えるスピードが遅い商品は元本割れのリスクが小さく、大きなリターンが期待できる商品は元本割れのリスクも大きくなります。こうした視点に立って、商品の分析をしていきましょう。

元本割れするリスクの「なし・あり」で分類する

最初に確認しておきたいのは元本割れのリスク。リスクの「なし・あり」で元本確保型と元本変動型に分かれます。

元本確保型…定期預金や保険

定期預金は、通常の預貯金のように元本が保証されていますが、利息はごくわずかです。保険も利回りは期待できず、途中で解約した場合には元本割れするケースがあります。
このように、元本確保型は運用利回りが期待できませんが、iDeCo(イデコ)の掛け金は全額所得控除の対象になるため、節税効果が得られるというメリットがあります。

元本変動型…投資信託など

投資信託は、たくさんの人から集めたお金をひとつにまとめ、株や債券、REIT(リート)※などの資産に投資する商品です。投資信託の値段は「基準価額」と呼ばれ、毎日変動しており、上がれば利益が、下がれば損失が発生します。
なお、iDeCo(イデコ)の投資信託は、運用で得た収益は分配されるのではなく、元金に組み込まれて再投資されるのが一般的です。

※REITは、投資家から集めた資金で不動産に投資をし、そこから得られる賃料収入や不動産の売買益をもとに、投資者に配当する金融商品のことです。

投資信託の運用先によって分類する

投資信託は、投資先によって「株式に投資するタイプ(1)(2)」「国債などの債券に投資するタイプ(3)(4)」「REITに投資するタイプ(5)(6)」「複数の資産や地域に投資するバランス型(7)」に大きく分けることができます。さらに、投資先の国や地域によって「国内」と「外国」に細分化されます。

図表1:投資信託の主な分類


株式
債券
REIT
株式や債券、REIT、国内、外国など
国内
(1)国内株式型
(3)国内債券型
(5)国内REIT型
(7)バランス型
外国
(2)外国株式型

(4)海外債券型

(6)外国REIT型

それぞれの投資対象を比較すると、価格変動リスクが小さいのは債券、価格変動リスクが大きいのは株式やREITです。また、外国の資産に投資をすると為替相場の影響も受けるため、国内の資産に投資をするより価格変動リスクが大きくなる傾向があります。
一方、バランス型はそれぞれの投資先に分散するため、価格変動リスクは全体の中間的な位置づけになります。

図表2:株式・債券・REITの特徴

株式
価格変動が大きく、リターンが期待できますが、そのぶん元本割れのリスクが高くなります。
債券
国債などの債券も価格が変動しますが、変動幅は株式のように大きくありません。そのため、株式のようなリターンは期待できませんが、そのぶん元本割れのリスクも小さくなります。
REIT
株式同様に価格が変動するため、リターンが期待できますが、そのぶん元本割れのリスクが高くなります。

投資信託の運用のスタイルで分類する

運用のスタイルで分類すると、日経平均株価などの指数と同じ値動きを目指して運用する「インデックス型(パッシブ型)」と、指数を上回る運用成果を目指す「アクティブ型」に分けることができます。

パッシブ型は、目標としている指数(日経平均株価など)を見ていれば値動きをある程度判断できるため、資産の値動きを把握しやすいといえます。
一方アクティブ型は、パッシブ型より高いリターンが期待できますが、ファンドマネージャーの投資手腕によって成績が左右されることや、投資信託を保有している間ずっと支払い続ける信託報酬が高くなる傾向があります。

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どの商品に投資すればいい? ファイナンシャルプランナーのおすすめをご紹介

商品の特徴がわかったら、次はどこに投資するか検討してみましょう。その際には、どんな運用方針で投資をするのかを決めておくことがポイントです。今回は、インターネットで投資情報を広く紹介しているネット証券を中心に、3社の金融商品を比較しながら、運用方針に合わせたおすすめの商品を紹介します。

元本割れは絶対に避けたいという人は「定期預金」で決まり!

元本確保型には、定期預金と保険がありますが、保険は解約時に元本割れのリスクがあるため定期預金がいいでしょう。
定期預金の金利は証券会社が取り扱う商品によって違いがありますが、現在の金利はかなり低く、ほとんど無視してもいいレベルです。iDeCo(イデコ)の節税メリットだけで、手数料などのコストもカバーできるでしょう。

図表3:定期預金の金利比較


楽天証券
SBI証券
松井証券

みずほDC定期預金(1年)
あおぞらDC定期(1年)
みずほDC定期預金1年定期
金利
0.002%
0.01%
0.002%

※金利は2022年7月時点のものです。(出所:各証券会社サイト)

コストをかけずに資産を増やしたい人は「インデックス型ファンド」がおすすめ!

なるべくコストをかけずに資産を増やしたいと考えている人は、信託報酬が低めに設定されているインデックス型ファンドがいいでしょう。信託報酬は、保有している間ずっと支払わないといけないので、60歳まで保有し続けることを考えて、なるべく安い商品を選ぶことをおすすめします。

今回は、日経平均株価と東証株価指数(TOPIX)、ダウなど外国の指標を目標にしたインデックス型ファンドの中から、信託報酬が安く、資産総額も高めの商品を選んでみました。資産総額が高い商品は、それだけ多くの人が投資をしていると考えることができるので、参考になるかと思います。

図表4:おすすめのインデックスファンドの比較


楽天証券
SBI証券
松井証券

たわらノーロード 日経225
三井住友DS-三井住友・DCつみたてNISA・日本株インデックスファンド
eMAXIS Slim 先進国株式インデックス
運用方針
日経平均株価に連動する投資成果が目標
TOPIXに連動する投資成果が目標
日本を除く先進国の株式市場の値動きに連動する投資成果が目標
信託報酬
0.187%
0.176%
0.1023%
資産総額
686.82億円
679.96億円
3562.44億円

※情報は2022年8月4日時点のものです。(出所:各証券会社サイト)

分散投資をしたいけど、難しいことは考えたくないという人は「バランス型ファンド」にしよう!

投資には「卵はひとつのカゴに盛るな」という格言があります。これは、特定の商品に限定して投資をするのではなく、複数の商品に投資をしてリスクを分散させた方が良いという「分散投資」の考え方です。しかし、実際に分散投資をしようとしても、どの商品にどのくらいの配分をしたらいいのか、迷ってしまうのではないでしょうか。その点、バランス型ファンドは、運用のプロがさまざまな資産に分散投資をしてくれるので、チェックは必要ですが、あまり難しいことを考える必要がありません。
今回は、信託報酬が安く、投資方針がそれぞれ異なる商品を選んでみました。

図表5:おすすめのバランス型ファンドの比較


楽天証券
SBI証券
松井証券

楽天・インデックス・バランス(DC年金)
セゾン-セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド(9月名称変更予定)
eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)
運用方針
日本を含む世界中の株式と債券に投資。投資比率は株式15%、債券85%
世界中に分散投資をし、株式と債券の投資比率はそれぞれ50%
国内株式、先進国株式、新興国株式、国内債券、先進国債券、新興国債券、国内REIT、先進国REITにそれぞれ12.5%投資
信託報酬
0.162%程度

0.56%±0.02%程度

0.154%

資産総額

165.56億円
3264.38億円
1564.10億円

※情報は2022年8月4日時点のものです。(出所:各証券会社サイト)

複数の運用先を選んでもOK!

iDeCo(イデコ)のいいところは、「定期預金に50%、株式の投資信託に30%、債券の投資信託に20%」など、投資の配分を自分で決められることです。投資先に迷ったときや、他にも気になる投資先が見つかったときは、投資先をひとつにまとめるのではなく、複数の商品に投資するのもいいでしょう。
ちなみに、複数の金融資産を組み合わせて投資することを「ポートフォリオを組む」といいます。

市場が急変したときにはどうしたらいい?

iDeCo(イデコ)は原則60歳まで掛け金と運用益を引き出すことができません。そのため、株価や為替相場が急変して、運用先の基準価格が急落するとどう対応するか慌ててしまうことがあります。そのようなときの対処法をいくつか紹介します。

売り急ぎは禁物。焦らずじっくり待つことも大切

iDeCo(イデコ)は他の商品に預け替える「スイッチング」をすることができます。株価などが急落すると、「ひとまず元本確保型の定期預金にスイッチングして、値下がりが止まるのを待った方がいいかな」と思うかもしれません。

しかし、これは必ずしも正しい選択肢ではありません。マーケットが変調をきたしているときには、パニック売りが出て、想定以上に市場が値下がりしているときがあります。特に、iDeCo(イデコ)は長期保有が前提なので、短期的な値動きに惑わされるのではなく、長い目で投資をすることも大切です。

また、iDeCo(イデコ)は、選択した投資信託を毎月(毎回)・一定額ずつ自動的に投資する「ドルコスト平均法」で運用しています。投資金額を一定にすることで、基準価格が低いときには購入量(口数)が多くなり、商品の平均購入単価が安くすむ効果が期待できます。下落をチャンスととらえ、じっくり待つことも大切です。

不安で仕方ないときは、運用方針を見直してみる

じっくり待とうと思っても、不安が募ってしまうのは避けたいもの。そのようなときには、投資信託の一部を定期預金にスイッチングすることや、次回以降の掛け金で定期預金の比率を多めに変更するといった「配分変更※」を検討してみるといいかもしれません。
ただし、短期的な思惑で配分変更を繰り返すと、長期投資のメリットが薄らいでしまうので注意しましょう。

※配分変更…掛け金で購入する金融商品の種類や購入比率を変更すること

市場が落ち着いたら、資産の配分をチェック

市場が急変すると、「債券型の配分が増えて、株式型の配分が減ってしまった」というように、運用資産のバランスが崩れてしまうことがあります。市場が不安定なときは成績の良い商品に多くの資産を移したくなるものですが、長期投資ではその逆、目減りした商品を買い増して元の配分に戻す「リバランス」をする必要があります。
リバランスは相場の急変時だけでなく、運用状況をチェックする際に、必要に応じて調整するのが理想的です。

iDeCo(イデコ)を運用する以上は自己責任、放置は厳禁!運用成績は定期的にモニタリングしよう

iDeCo(イデコ)は資産運用のひとつですのでほったらかしはいけません。最低でも年に4回程度は運用の状況をチェックしましょう。また、運用の目標を立てたら、その目標が達成できそうなのか、できそうにない場合はどうすればいいのか、必要に応じて軌道修正をしていきましょう。

老後の資産形成に有効なiDeCo(イデコ)。【基本編】【実践編】でご紹介したメリット・デメリットや商品の特徴、運用のポイントなどをおさえ、自分に最適な運用方法をさぐっていけるといいですね。

【プロフィール】
斎藤 勇

オフィスISC代表
ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士
保険や貯蓄、住宅ローンなど、お金にまつわる疑問や悩みごとの相談に応じている。不動産取引では不動産投資を通じて得た豊富な取引経験をもとに、売り手と買い手、貸し手と借り手、それぞれの立場でアドバイスを実施。趣味はマリンスポーツ。モットーは「常に感謝の気持ちを忘れずに」。

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