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【2023年度版】健康経営銘柄とは? 選定基準や2022年選定企業5つの事例

文/横山 晴美 ファイナンシャルプランナー ライフプラン応援事務所代表

従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、企業戦略に盛り込んでいく「健康経営」。その実施によって業務パフォーマンスや従業員エンゲージメントの向上、企業イメージアップも見込まれます。なかでも、上場企業のなかから優れた健康経営を行う企業を選りすぐりで評価する「健康経営銘柄」は、質の高い取組を実施する企業として注目されています。具体的には、どのような取組を行っているのでしょう。2023年度の認定要件や取組事例を紹介します。

目次[非表示]

  1. 1.健康経営銘柄とは?
    1. 1.1.健康経営にかかる顕彰制度の概要
      1. 1.1.1.【健康経営優良法人】
      2. 1.1.2.【健康経営銘柄】
  2. 2.2023年はどう変わる? 2023年版健康経営銘柄の選定基準とフロー
    1. 2.1.2023年 健康経営銘柄の選定基準
    2. 2.2.2023年 健康経営銘柄の申請、選定フロー
  3. 3.健康経営銘柄のメリットと意義、注意点
    1. 3.1.健康経営銘柄のメリット
      1. 3.1.1.1:企業イメージの向上
      2. 3.1.2.2:健康経営施策による職場環境の改善
      3. 3.1.3.3:従業員の健康改善による生産性の向上
    2. 3.2.健康経営銘柄を目指す際の注意点
    3. 3.3.健康経営銘柄に選定される意義
  4. 4.健康経営銘柄 2022年選定企業の事例
    1. 4.1.1:きめ細かな対応で社員の健康づくりを促進/マルハニチロ株式会社
    2. 4.2.2:女性の健康支援を包括的に実施/株式会社大和証券グループ本社
    3. 4.3.3:自社課題に注力した対応で効果を出す/アサヒグループホールディングス株式会社
    4. 4.4.4:時間と場所にとらわれない働き方へシフト/Zホールディングス
    5. 4.5.5:健康文化を根付かせるための施策を推進/住友ゴム工業株式会社
  5. 5.まとめ :注目される「健康経営銘柄」。取得の意義は高い

健康経営銘柄とは?

疑問符が付いたカードを持った女性の手

2023年度で第9回となる「健康経営銘柄」の選定。本制度は、東京証券取引所の上場会社のなかから「健康経営」に優れた企業を選定するものです。これは、長期的な視点からの、企業価値の向上を重視する投資家にとって魅力ある企業として紹介することを通じて、企業による「健康経営」の促進を目指した取組といえます。

健康経営にかかる顕彰制度の概要

健康経営において、優れた取組を行う企業を認定する制度として、大きく2つの顕彰制度が設けられています。片方が「健康経営優良法人」もう片方が、「健康経営銘柄」です。

【健康経営優良法人】

・非上場企業や団体も応募可能。
大規模法人部門(上位法人には「ホワイト500」の冠を付加する)
中小規模法人部門(上位法人には「ブライト500」の冠を付加する)
に分かれる。

【健康経営銘柄】

・健康経営優良法人に認定された企業の中から東京証券取引所の上場会社で財務状況などのスクリーニングに合格した「健康経営」に優れた企業が選定される

健康経営顕彰制度の概要健康経営における顕彰制度の概要
出典:経済産業省「健康経営の推進について」を参考に作成

健康経営銘柄に選定された企業は、健康経営を積極的に行うのはもちろん、健康経営を普及拡大していく「アンバサダー」的な役割が求められます。特に、近年は企業活動において経営の透明化が求められており、情報開示の重要性が増しています。健康経営銘柄に選定された企業は上場企業として健康経営による効果を分析し、社外へ情報公開することも重要な役割であると考えられています。
さらに、経済産業省の資料によると、サプライチェーンや社会全体へと拡大させていくスコープの拡大も求められるとされています。

2023年はどう変わる? 2023年版健康経営銘柄の選定基準とフロー

CHANGEと書かれた道路標識

2023年版における、健康経営銘柄の選定基準とフローを紹介します。

2023年 健康経営銘柄の選定基準

・健康経営度調査票に自社の健康経営取組状況を記入、健康経営優良法人に申請した法人のうち、上位500位以内の上場企業が候補として選出される
・財務指標スクリーニングや加点等の実施
健康経営優良法人の認定要件はこちら(資料2:事務局説明資料(今年度の健康経営顕彰制度の設計等について) (kenko-keiei.jp)

健康経営銘柄2023選定基準及び健康経営優良法人2023(大規模法人部門)認定要件図表:健康経営銘柄2023選定基準及び健康経営優良法人2023(大規模法人部門)認定要件
出典:健康経営優良法人認定事務局ポータルサイト ACTION!健康経営(日本経済新聞社)

健康経営度調査とは健康経営銘柄だけでなく、健康経営優良法人(大規模法人部門)の選定にも共通で利用されます。健康経営優良法人に選ばれた企業のうち上位500位以内がさらにスクリーニングされ、そこから健康経営銘柄が選ばれます。また調査票は認定の可否としてのみならず、選定に関する基礎情報を収集する目的も持ちます。企業における健康経営の取組状況を蓄積したデータとしても活用できる重要なものです。

2023年 健康経営銘柄の申請、選定フロー

1:自社が東京証券取引所上場企業かどうか確認し、「ACTION!健康経営」ポータルサイトの申請申込ページを閲覧。「新規ID発行サイト」ボタンから申請用IDを必要事項を回答して申し込むと、登録後にメールが届く
2:「健康経営調査票」をダウンロード
3:「健康経営度調査票」に回答の上アップロード
4:請求書が来るので申請料を支払う
5:審査・審議 健康経営優良法人の審査と共通。優良法人認定された中から財務等のスクリーニング
6:経済産業省と東京証券取引所が共同で「健康経営銘柄」を認定
7:健康経営銘柄・健康経営優良法人発表

健康経営度調査
回答期間
2022年8月22日(月)〜2022年10月14日(金)17時 締切
選定・認定時期
2023年2~3月頃(予定)

<健康経営優良法人認定(健康経営銘柄共通) 申請料>

大規模法人
認定申請料
80,000円(税込88,000円)/件
中小規模法人
認定申請料
15,000円(税込16,500円)/件

健康経営銘柄のメリットと意義、注意点

書類やPCなどの置かれた机

健康経営銘柄を目指す意義は大きいものです。しかし、目指すには経営上の注意点もあります。効果と注意点を合わせて確認しておきましょう。

健康経営銘柄のメリット

健康経営銘柄に選定されることで次のようなメリットが考えられます。

1:企業イメージの向上

社会全体における企業イメージの向上により、企業ブランドの強化が見込まれます。また、投資家や取引先等、ステークホルダーからの高評価も期待できます。特に近年は企業が社会的責任経営を果たしているのか、情報開示をしているかという点が重要視されています。求職者から見ても従業員等への健康投資を行う健康経営は注目度の高い施策であるといえます。

2:健康経営施策による職場環境の改善

健康経営の施策には「残業時間の削減」や、「ストレス負荷が大きい人材・業務の発見と対応」なども含まれるため、職場全体における働き方の改善も見込まれます。
また従業員にとって快適なオフィスや清潔なオフィス、もしくはコミュニケーションがとりやすいオフィスなど、いきいきと働けるオフィス環境を整備することも健康経営のひとつです。さまざまな角度から健康経営を実施することで、より大きな効果を得ることができるでしょう。

3:従業員の健康改善による生産性の向上

従業員の健康状態が改善されれば個々の従業員の生産性が向上すると考えられます。また食生活の改善や運動習慣を促進する施策などによって病気を未然に防ぐことができれば、長期的には医療費の削減にもつながる可能性があります。

健康経営銘柄を目指す際の注意点

健康経営への施策は数多くあるものの、そのほとんどは段階を踏んで、少しずつ状況や状態を改善させていくものです。そのため、健康経営に取り組んだからといってすぐに効果が出るものではありません。コストがかかり、かつ回収に時間がかかる施策であるといえます。確実に効果を得るためには、長期的な視野で健康経営に取り組む必要があるでしょう。

また、効果を数値化しにくいため、効果も分かりにくい側面があります。効果が見えにくいと、モチベーションが維持できなくなる懸念があります。
事前に戦略マップ等によって施策の目的と、目的を達成するまでの道のりを設定することが大切です。KPIを設定し、具体的な数値目標を掲げるようにしましょう。社内外でどのように健康課題を解決してくのか、その道筋を共有し、モチベーションを高めていくことをおすすめします。

健康経営銘柄に選定される意義

健康経営に取り組むことで多くの効果を得ることができますが、健康経営の実践は簡単ではありません。なかには、健康経営に興味がありながら実行をためらう企業もあるでしょう。そうした状況のなかで、健康経営を実践している企業が効果を広く発信することで、着手に迷う企業の後押しにつながります。

経営企業規模が大きく、社会への影響力も大きい上場企業は、情報発信を行う意義がより一層高いと考えられます。また資金力のある上場企業ならではの先進的な試みも検討したいところです。積極的な取組と実例の開示によって、健康経営の先駆者としての地位を得られるとともに、得られる効果も相対的に大きくなることでしょう。

健康経営銘柄 2022年選定企業の事例

CASEと書かれた木製ブロック

2022年に健康経営銘柄に選定された企業から5つの成功事例を紹介します。

1:きめ細かな対応で社員の健康づくりを促進/マルハニチロ株式会社

2022年度に健康経営銘柄に初認定されたマルハニチロ株式会の社訓は、「企業は何よりも人にある」。全社的な1on1ミーティングの実施、相談窓口に臨床心理士を配置、在宅勤務環境向けに動画を配信するなど、細やか、かつさまざまな状況を想定した対策を実施しました。
また自社製品(特定保健用食品や機能性表示食品等)を従業員が継続して摂取する「DHAチャレンジ」も実施。2020年度は参加者の中性脂肪減少率が前年度比で平均約19%低下となりました。

2:女性の健康支援を包括的に実施/株式会社大和証券グループ本社

女性の健康を包括的に支援する「Daiwa ELLE Plan」を2018年10月から導入しています。というのも、10年以上も女性活躍支援に取り組んできた同社では、女性管理職の増加とともに、更年期にかかる不調や不妊治療と仕事の両立などの課題が表面化したからです。さまざまな不調に際して取得できるエル休暇制度や女性向けの健康リテラシー研修を実施。管理職が女性の課題を理解するための管理職向け研修も実施するなど、幅広い施策を行っています。これらの施策によって女性活躍を推進させ、女性管理職割合を2021年度3月末時点の13.7%から、2025年度末に25%以上とすることを目標としています。

3:自社課題に注力した対応で効果を出す/アサヒグループホールディングス株式会社

同社では定期検診の結果、高血圧や脂質異常症、高血糖などの有所見率が高いことが分かりました。そのため、メタボリックシンドロームリスクの低減を目標とした飲酒対策を実施。具体的には適正飲酒の理解・実践に向けて、全社員を対象に「アルコールに関するeラーニング」を行い、2021年は96.7%の社員が受講しました。社員の行動変容が促され、多量飲酒の割合が減少しました。

4:時間と場所にとらわれない働き方へシフト/Zホールディングス

よいサービスを提供するためには、自社従業員やそのご家族の心身の健康こそが最も重要な基盤であり、第一の条件であると考えている同社。その考えにもとづき「時間と場所にとらわれない新しい働き方」へとシフトチェンジしました。
新型コロナウイルス禍においても「従業員の健康と安全・安心が最優先」として迅速にテレワークへと移行。て従業員の安全と事業継続を両立させました。

グループの中核子会社であるヤフー株式会社ではリモートワークの回数制限を廃止、より柔軟なフレックスタイム勤務制度の提供など、IT企業である特性を生かすことで新しい働き方への移行を実現しています。

5:健康文化を根付かせるための施策を推進/住友ゴム工業株式会社

定期検診が健康管理の土台であると考え、定期検診の事後対応をルール化。二次検査の受診を徹底させました。コロナ禍でもオンラインを活用することで、在宅勤務者に対する対応が手薄にならないようにしました。
在宅勤務者にはオンラインによる産業保健職面談・保健指導を行うなどして、保健指導実施率は99%、二次検査受診率も89%と高い水準を維持しています。

まとめ :注目される「健康経営銘柄」。取得の意義は高い

夜のビル群を背景に浮かぶビジネスパーソンとジグザグの矢印

健康経営を実行することは従業員がいきいきと働ける職場環境を整えるだけでなく、生産性の向上など、さまざまな効果をもたらします。さらに健康経営銘柄に認定されれば、機関投資家からの評価も向上することでしょう。上場企業で健康経営を実施するなら、健康経営銘柄の取得を視野に入れ、取り組んでいくことをおすすめします。

【プロフィール】
横山 晴美(よこやま・はるみ)

ライフプラン応援事務所代表 AFP FP2級技能士
2013 年に FP として独立。一貫して個人の「家計」と向き合う。
お金の不安を抱える人が主体的にライフプランを設計できるよう、住宅や保険などお金の知識を広く伝える情報サイトを立ち上げる。またライフプランの一環として教育制度や働き方関連法など広く知見を持つ。

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