未病とは?未病対策が必要な理由や判明した際の対策法を解説

未病とは?未病対策が必要な理由や判明した際の対策法を解説

超高齢社会の日本では、日常生活に制限がかかる期間をなるべく短くするために、平均寿命と健康寿命の乖離を小さくする工夫が求められています。
バランスの良い食事や運動習慣の定着といった基本的な生活習慣の見直しに加えて、最近では「未病」の状態を把握し、早期に改善を図ることに注目が集まっています。

しかし、一口に未病といっても、その定義や未病への具体的な対策などがわからない方は多いでしょう。本記事では、未病の概要から病気への移行を防ぐ未病対策が必要な理由、未病が判明した際の対処法まで詳しく紹介します。

目次[非表示]

  1. 1.未病とは、病気ではないものの健康から離れつつある状態のこと
    1. 1.1.厚生労働省による未病の定義
    2. 1.2.日本未病学会による未病の定義
  2. 2.未病が注目される背景
  3. 3.未病と予防の違い
  4. 4.健康診断で未病の早期発見を
  5. 5.未病への具体的な対策
    1. 5.1.働く世代の未病対策
    2. 5.2.シニア世代の未病対策
  6. 6.未病対策につながる健康経営の取り組み事例
  7. 7.従業員の健康寿命を延ばすため、未病の予防や対策に着手を

未病とは、病気ではないものの健康から離れつつある状態のこと

未病は、心身が発病には至らないものの健康な状態から離れつつある状態を指します。まずは、未病の定義について詳しく見ていきましょう。

厚生労働省による未病の定義

厚生労働省によると、未病は「健康と病気を二分論の概念で捉えるのではなく、心身の状態は健康と病気の間を連続的に変化するものとして捉えるものであり、それらのすべての変化の過程を表す概念」と定義されています。

未病とは?未病対策が必要な理由や判明した際の対策法を解説

未病とは?未病対策が必要な理由や判明した際の対策法を解説

また、厚生労働省は、ICTやビッグデータを活用し、エビデンスにもとづいて自分の現在の未病の状態や将来の疾病リスクを数値で評価したものを、「未病指標」として策定を進めています。未病指標の定義と未病指標の要件は、下記のとおりです。

<未病指標>
個人の現在の未病の状態や将来の疾病リスクを、数値で見える化したもの

<未病指標の要件>

  • 未来予測が可能であること
  • 個別化されていること
  • 連続的かつ可変的であること
  • 使い易く費用対効果が高いこと
  • 一定の科学的根拠があること

【参照】厚生労働省「未病指標について」|厚生労働省(2019年11月)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000572154.pdf

日本未病学会による未病の定義

医師、歯科医師、薬剤師、臨床検査技師、栄養士、看護師、保健師などによって運営されている一般社団法人日本未病学会は、未病を「健康から病気に向かっている状態」と定義し、下記のいずれの状態も未病に含まれるとしています。

<未病に含まれる状態>

  • 自覚症状があるが、検査値に異常はない場合
  • 自覚症状はないが、検査値に異常がある場合

なお、自覚症状があって検査をし、検査値に異常が見られる状態は「病気」です。なお、未病について同学会は「病気に向かうベクトルを健康方向に向け直すこと」としています。

【参照】一般社団法人日本未病学会「未病とは?」|日本未病学会
​​​​​​​https://j-mibyou.or.jp/mibyotowa.htm

未病が注目される背景

未病が注目される背景には、超高齢社会の進展があります。内閣府の「令和5年版高齢社会白書」によると、2022年10月1日時点の65歳以上の人口、いわゆる老年人口は3,624万人で、総人口に占める割合(高齢化率)は実に29.0%です。
今後、日本の高齢化率は上昇を続け、2040年には65歳以上の人口が全人口の約35%となるという推計を厚生労働省は発表しました。

このように高齢者が増加する一方、子供の数は減少の一途をたどっています。このままの状態が続いた場合、2070年には国民の2.6人に1人が65歳以上の者となる社会が到来するとみられています。そうなると、医療費・介護費といった社会保障の負担と給付のバランスが崩れ、社会保障制度の持続可能性が危ぶまれることになるでしょう。

超高齢社会がいっそう進んだ場合においても国民皆保険・皆年金を維持して社会保障制度を継続するには、一人ひとりが年齢を重ねても自立した状態で暮らす必要があります。高齢になっても一人ひとりが生きがいを持って暮らせる社会を作るために、病気に移行する手前の未病の段階も自覚し、未病対策を行う必要性が高まっているのです。

【参照】内閣府「令和5年版高齢社会白書(全体版)」|内閣府(2023年6月)
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2023/html/zenbun/s1_1_1.html

【参照】厚生労働省「我が国の人口について」|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21481.html

未病と予防の違い

「未病」に近い意味で使われる言葉に「予防」がありますが、「未病」と「予防」は似て非なるものです。

「予防」は、例えば脳卒中などの脳血管疾患やパーキンソン病、心筋梗塞や狭心症といった個別具体的な疾患の発症を防ぐことです。
一方「未病を治す」という場合は、特定の疾患に限定せず、心身全体をより健康な状態へと近づけることを表します。

健康診断で未病の早期発見を

年に一度の健康診断は、未病を早期に発見する絶好の機会です。
未病は、健康な状態から少しずつ病気へと体がシフトしている状態であるため、自覚症状がなくても検査をすると異常が見つかることがあります。

また、未病の自覚症状は「疲れやすい」「少しだるい」「おなかの調子が悪い」「体が冷える」といった、比較的軽微に感じられるものが多いため、仕事や育児の合間に病院へ行くところまでは決断できないことも想定されます。

そこで、未病の早期発見に役立つのが健康診断です。健康診断を受ければ検査数値の変化によって、未病の状態を確認できる可能性が高まります。「去年よりも少し数値が悪くなった」といった項目に注意し、未病の段階で食生活や生活習慣、運動習慣といった未病対策を行えば、日常生活に支障がある状態は短くなり、健康寿命の延伸につながるでしょう。

【参照】全国健康保険協会「5月 はじめよう 未病対策」|全国健康保険協会(2019年5月)
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g5/cat510/h31/31050101/

未病への具体的な対策

未病には、どのような対策を行えばいいのでしょうか。働く世代とシニア世代に分けて、具体的な未病対策を見ていきます。

働く世代の未病対策

働く世代には、忙しさのあまり自分の健康に対する関心が低かったり、関心があり不調を感じていたとしても受診などの行動に移せていなかったりするケースが多く見られます。
働く世代の未病対策としては、下記の2つに取り組むことが推奨されます。

  • メタボリックシンドロームの改善
    メタボリックシンドロームとは、内臓肥満に高血圧・高血糖・脂質代謝異常が組み合わさり、心臓病や脳卒中などになりやすい病態のことを指します。メタボリックシンドロームを放置していると、生活習慣病(高血圧症、糖尿病、糖尿病性腎症等)、がん等の原因になったり、身体機能が低下して自力での移動が難しくなったりすることもあるため注意が必要です。
    メタボリックシンドロームは発症する前に自覚できれば最善ですが、メタボリックシンドロームと診断された段階であっても、生活習慣や食習慣を見直し、運動を取り入れるなどして状態を改善すれば、大病を防げる可能性が高まります。

【参照】e-ヘルスネット「メタボリックシンドローム(メタボ)とは?」|厚生労働省(2022年11月)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-01-001.html

  • うつ病をはじめとしたメンタル不調に対処できる体制づくり
    働く世代には、長時間労働や人間関係の悩み、仕事の質・量などに起因する、うつ病をはじめとしたメンタル不調を発症するケースがあります。
    企業は「メンタルの落ち込みで仕事ができないのは甘い」といった誤った価値観を職場から払拭し、すべての労働者のメンタルヘルスの問題に対処できる体制と環境を整えることが重要です。

【参照】こころの耳「若年労働者へのメンタルヘルス対策 ~セルフケア・ラインケア・家族との連携など~」|厚生労働省
https://kokoro.mhlw.go.jp/youth/

【おすすめ参考記事】

  メンタルヘルスケアとは?企業に求められる対策や施策、事例を紹介 企業がとるべきメンタルヘルスケア対策を解説。メンタルヘルスケアが重要視されている背景や企業に求められるケア、企業側のメリット、成功事例などについて紹介します。 マイナビ健康経営

シニア世代の未病対策

シニア世代に特にみられる未病があります。シニア世代の未病対策としては、下記の取り組みが有効とされています。

<シニア世代が実践したい未病対策>

  • ロコモティブシンドローム対策
  • フレイル対策
  • オーラルフレイル対策

ロコモティブシンドローム(運動器症候群:略称ロコモ)とは、運動器の機能が衰え、要介護になる状態あるいはそのリスクが高い状態のことです。また、フレイルは、筋力や認知機能、運動機能が低下し、介護と要介護の中間に位置する状態です。オーラルフレイルはフレイルのひとつで、口腔機能の低下や食事の偏りなどを表します。

いずれも加齢によって起こるものですが、どれも病気に至っていない未病の段階であり、適切な改善に取り組むことで健康を回復することが期待できます。
かかりつけの内科や歯科でロコモやフレイル、オーラルフレイルのケアに取り組んだり、適度な運動習慣を取り入れたりする基本的な習慣が日常化していくことが望ましいです。また、食事のバランスを見直すことも効果的です。

【参照】千葉県「ロコモティブシンドロームの予防」|千葉県(2021年11月)
https://www.pref.chiba.lg.jp/kenzu/kenkouken/locomoyobou.html

【参照】厚生労働省「健康長寿に向けて必要な取り組みとは?100歳まで元気、そのカギを握るのはフレイル予防だ」|厚生労働省(2021年11月)
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202111_00001.html

【参照】厚生労働省「通いの場で活かすオーラルフレイル対応マニュアル〈2020年版〉」|厚生労働省(2020年5月)
https://kayoinoba.mhlw.go.jp/article/027/

未病対策につながる健康経営の取り組み事例

現在は、未病対策に力を入れている企業も増えています。健康経営を推進する中で、未病対策にもつながる事例としては、花王株式会社の取り組みが好例といえます。

花王株式会社は、2024年にも同社9度目となる健康経営銘柄の選定を受けており、ヒューマンヘルスケア事業を長年営む会社ならではの取り組みが注目されています。現在、同社は「内臓脂肪と“くらし”に関する研究」や「歩行と健康に関する研究」などで得られた成果をもとに「測る」「食べる」「歩く」の3分野でプロジェクトを展開中です。

具体的な取り組みとして、測る分野では内臓脂肪をマーカーとした「生活習慣測定会」、食べる分野では内臓脂肪を減らすことを主眼に置いた食事法「スマート和食」の提案、歩く分野では自社開発の歩行計約9,000台を社員に貸し出して、営業支店間などでの対抗企画なども開催。健康経営の推進の中で、未病対策にもつながる取り組みを盛り上げています。

【おすすめ参考記事】

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従業員の健康寿命を延ばすため、未病の予防や対策に着手を

健康経営の実践は、従業員の健康寿命を延ばす未病の予防や対策としても有効です。健康でいきいきと働く従業員を増やすため、未病対策を視野に入れた健康経営の取り組みを実践してみてはいかがでしょうか。

「マイナビ健康経営」は、人と組織の「ウェルネス(健康)」をさまざまなサービスでサポートしています。未病対策をはじめとした従業員の心身の健康向上をお考えの際には、お気軽に悩みをお聞かせください。

また、健康経営推進の検討をしている方や、セルフマネジメントを高める研修などを検討している方は、健康経営における講師の紹介・斡旋サービスをご提供している「Bring.」をご利用ください。

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