ストレスチェック制度とは?ストレスチェック導入の仕方や実施の流れ

ストレスチェック制度とは?ストレスチェック導入の仕方や実施の流れ

文/杉浦詔子

ストレスチェック制度とは、定期的に労働者のストレス状況をチェックする検査で、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防ぐ目的で2015年12月に義務づけられました。2022年3月には、厚生労働省が新しい告知として「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」という資料を公表しています。労働者が質問に答えることで、自身のストレス状態を知ることができ、検査結果を分析することで、職場環境の改善に活かすことができます。今回は、昨今の健康経営の広がりによりメンタルヘルス対策として注目度が上がっているストレスチェック制度の概要や、実施の流れについて解説します。

目次[非表示]

  1. 1.ストレスチェック制度とは
    1. 1.1.ストレスチェック制度の趣旨と目的
    2. 1.2.ストレスチェック制度が義務化されている企業や職場
  2. 2.ストレスチェック制度の導入方法
    1. 2.1.ストレスチェック導入前の準備
    2. 2.2.ストレスチェックの実施
      1. 2.2.1.労働者が調査票に記入
      2. 2.2.2.ストレスチェック結果の本人通知と高ストレス者の判定
      3. 2.2.3.医師による面接指導
      4. 2.2.4.ストレスチェック結果の集団分析と職場環境改善
  3. 3.ストレスチェック制度実施にあたっての留意点
    1. 3.1.プライバシーの保護
    2. 3.2.不利益な取り扱いの禁止
  4. 4.まとめ

ストレスチェック制度とは

ストレスチェック制度の趣旨と目的

仕事や職業生活に対して強い不安や、悩み、ストレスを感じてしまう労働者に向けて、心の健康の保持増進を図るメンタルヘルスケアの実施が促進されてきました。しかし、仕事のストレスが原因で労働者が精神障害になったり、労災として認定される事例が増加傾向にあることから、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防ぐことが重要な課題として浮上。労働安全衛生法の一部が改正され、新たに「ストレスチェック制度」が創設されました。
厚生労働省によると、ストレスチェック制度とは「労働者のストレスの程度を把握し、労働者自身のストレスへの気づきを促すとともに、職場改善につなげ、働きやすい職場づくりを進めることによって、労働者がメンタルヘルス不調となることを未然に防止すること(一次予防)を主な目的としたもの」と定義されています。

ストレスチェック制度が義務化されている企業や職場

2014年の労働安全衛生法の改正により、2015年12月から労働者が常時50人以上の企業や職場には、1年に1回、ストレスチェックの実施が義務付けられました。ストレスチェックの対象者には、正社員に加え、非正規社員(契約社員、パート、アルバイト、派遣社員)も含まれます。
労働者が常時50人未満の企業や職場は、ストレスチェックの実施は努力義務となっていますが、できるだけ実施することが望ましいとされています。

ストレスチェック制度の導入方法

ストレスチェックと面接指導に係る流れは以下の通りです。

図1:ストレスチェック制度導入のフロー

ストレスチェック制度導入マニュアルストレスチェック制度導入マニュアル
出典:厚生労働省「ストレスチェック制度 簡単!導入マニュアル」をもとに筆者作成


ストレスチェック導入前の準備

導入前の準備段階では、ストレスチェック制度の実施体制の確立と、労働者へストレスチェックの実施を周知します。
まず、ストレスチェック導入の方針などを社内で表明し、衛生委員会で話し合い、社内規定を作ります。個人情報保護等に対する検討、実施者や実施事務従事者を決めるなどの社内のストレスチェックの体制も明確にします。ストレスチェックの実施者は、医師、保健師、一定の研修を受けた歯科医師、看護師、精神保健福祉士または公認心理師の中から選定します。
そして、労働者にストレスチェックの実施を伝える際は、労働者に社内の体制や個人情報の保護について十分な説明をし、理解してもらう必要があります。このように、ストレスチェックを円滑に執り行うためには、導入前の準備が大切なのです。

ストレスチェックの実施

労働者が調査票に記入

調査票は、実施者がストレスチェックの質問紙や情報通信機器(ICT)を用いて配布し、労働者自身に記入または入力してもらう方法で実施し、回収します。ストレスチェックの調査票の内容は実施者側で決めることができますが、仕事のストレス要因・心身のストレス反応・周囲のサポートの3領域を含む必要があり、「職業性ストレス簡易調査票」(57項目)が推奨されています。なお、ICTでストレスチェックを行う場合、厚生労働省により無料で提供されている実施プログラムの利用も可能です。

ストレスチェック結果の本人通知と高ストレス者の判定

労働者が自らのストレスに気付けるよう、個人のストレスチェックの結果は、実施者が労働者本人に直接通知します。通知内容は、個人のストレスプロフィール、高ストレスに該当するか否かの評価結果、面接指導の対象となるかどうかの判定結果などです。
高ストレス者の選定基準については、厚生労働省の「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」 に記載があるので、参考にしてみると良いでしょう。なお、面接指導の対象となった労働者には面接指導の申出方法を伝えます。面接指導を受けるかどうかは労働者自身の選択ではありますが、実施者は労働者に面接指導を受けるように伝えることも必要です。

医師による面接指導

ストレスチェックの結果、労働者が医師による面接指導を希望した場合は、希望した労働者が「面接指導対象者」に該当するかを実施者が確認します。該当する場合は、面接指導を行う医師や、面接指導の日時・場所を決定・調整します。
面接指導では、医師は労働者のストレスチェック結果の確認や、勤務状況、心身の状況などを確認し、疲労、不安、抑うつ等の症状が出ていないかや、要因となる業務の過重性や心理的負担について評価します。実施者は医師の面接指導結果をもとに、必要に応じ就業上の措置を講じます。

ストレスチェック結果の集団分析と職場環境改善

ストレスチェックは、一次予防を主な目的としています。労働者本人のセルフケアを進めるとともに、実施者は、業務量や質、職場環境改善に取り組むことも重要となります。
ストレスチェックの結果は職場や部署単位で集団分析し、ストレスを高く感じている労働者が多い部署において職場の健康リスクが高い場合には、職場環境等の改善を行います。集団分析と職場環境改善は努力義務ですが、職場のストレス低減につながるため、できるだけ取り組むようにしましょう。

ストレスチェック制度実施にあたっての留意点

ストレスチェックの実施にあたり、働く人がありのままを答えられるよう、産業保健スタッフは労働者のプライバシーの保護と、不利益な取り扱いをしないよう特に留意することが求められます。

プライバシーの保護

労働者に安心してストレスチェックを受けてもらうには、労働者のプライバシーが保護されていなければなりません。労働者の同意がなければ、ストレスチェックの結果は実施者に通知されないことなどを理解してもらい、労働者が自分自身の状況を本来のままに回答できるよう、環境を整備することが重要です。もし、個人のストレスチェックの結果が上司に共有されるとしたら、回答を操作する労働者も出てくるでしょう。操作されると労働者や職場の状況を正しく反映しない結果となってしまい、職場改善にはつながらなくなります。

不利益な取り扱いの禁止

実施者は、労働者のストレスチェックの結果や、それに基づいた面接指導の結果などを踏まえた措置を講じますが、労働者にとって不利益となる措置を講じることは禁止されています。
例えば、医師の面接指導をせずストレスチェックの結果を見た実施者が、労働者を配置転換することは不利益な取り扱いとなります。措置を講ずる場合は、面接指導の結果に基づいた医師の意見を聴取するという、法定の手続きを適正に取った上で行う必要があります。

まとめ

ストレスチェック制度が義務化されている企業はもちろん、義務化されていない企業もストレスチェック制度を導入することにより、労働者のメンタルヘルス不調を低減でき、休職や退職のリスクが軽減できます。また、ストレスチェック結果をもとに職場の改善を図ることは、健康経営を行っている企業であると求職者に伝えることとなり、入社希望者が増えることにもつながる可能性があります。義務化されている企業も義務化されていない企業も年に1回のストレスチェック実施がおすすめです。

【プロフィール】
杉浦詔子

みはまライフプランニング代表
産業カウンセラー/キャリアコンサルタント/ファイナンシャルプランナー
2012年に「みはまライフプランニング」を設立。会社員とその家族等へのキャリアプランやライフプランに関するカウンセリングや講義、執筆などを行っている。恋愛等のコミュニケーション支援やFP等の資格取得支援にも力を入れている。


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