人材不足に有効な対策とは?企業の成功事例も交えて解説

人材不足に有効な対策とは?企業の成功事例も交えて解説

近年は人材不足によって、人的資源の枯渇に悩む企業が増えています。人材不足が企業に与える影響や人材不足に有効な対策について、企業の成功事例も交えて解説します。

目次[非表示]

  1. 1.人材不足に有効な対策とは?企業の成功事例も交えて解説
  2. 2.日本企業における人材不足の理由と現状
    1. 2.1.少子高齢化による生産年齢人口の減少
    2. 2.2.社会全体における雇用のミスマッチ
  3. 3.人材不足が企業に与える影響
    1. 3.1.労働環境の悪化
    2. 3.2.従業員のモチベーション低下
    3. 3.3.離職者数の増加
  4. 4.人材不足に対する有効な対策
    1. 4.1.労働条件や職場環境を改善し、魅力ある職場作りに取り組む
    2. 4.2.業務のIT化
    3. 4.3.アウトソーシングを活用する
    4. 4.4.国が推奨する女性の積極的採用
    5. 4.5.シニアの積極的採用
    6. 4.6.業務プロセスを見直し、人的資源を効率的に活用する
    7. 4.7.学ぶ機会の提供や、副業の許可
    8. 4.8.出向支援(在籍型出向)を実施する
  5. 5.人材不足解消の成功事例
    1. 5.1.高木綱業株式会社:シニアの積極雇用で、中核人材の育成に成功
    2. 5.2.株式会社下部ホテル:従業員のマルチタスク化で慣習的な勤務スタイルから脱却し、従業員満足度が向上
    3. 5.3.株式会社ユナタ:人柄優先の採用活動で、意欲ある就職氷河期世代の採用に成功
  6. 6.自社に合った対策で、人材不足を解消しよう

人材不足に有効な対策とは?企業の成功事例も交えて解説

組織運営に不可欠な経営資源として、「ヒト、モノ、カネ、情報」があることはよく知られています。この4つの言葉は、常にヒト、モノ、カネ、情報の順に語られ、人的資源の重要性を示しています。

ところが、近年は人材不足によって、人的資源の枯渇に悩む企業が増えてきました。厳しい企業間競争を勝ち抜くには、成長力の源泉である人材の不足を補う対策が欠かせません。

ここでは、人材不足が企業に与える影響や人材不足に有効な対策について、企業の成功事例も交えて解説します。

日本企業における人材不足の理由と現状

そもそも、多くの日本企業が人材不足にあえいでいるのはなぜなのでしょうか。その理由は、少子高齢化による労働人口の減少と、雇用のミスマッチにあります。まずは、人材不足の理由と現状を詳しく見ていきましょう。

少子高齢化による生産年齢人口の減少

総務省の調査によれば、急速な少子高齢化の進展によって、日本の総人口は2008年をピークに減少に転じています。人口構成も高齢人口が若年人口を上回り、2020年には全人口のうち28.9%を高齢人口が占めるまでになりました。

国内の労働力の中心となる生産年齢人口(15~64歳)も、1982年から減少の一途をたどっています。生産年齢人口は、2020年の7,406万人が2040年には5,978万まで減少すると推計されており、将来的には社会活動、経済活動に甚大な影響を及ぼすことになるでしょう。

現時点でも、中小企業は生産年齢人口の減少によるダメージを強く受けています。特に、規模の小さい企業ほど採用難に陥る傾向があり、十分な応募者数を確保できない状況にあります。

2022年の「中小企業白書・小規模企業白書」からも、今後の経営上の不安要素として「人材不足・育成難」を挙げる企業の割合が2021年から約13%も上昇していることがわかります。経営基盤の強化に向けた注力分野としても「人材の確保・育成」を挙げる企業が増加しており、中小企業における人材不足は大きな課題となっているのです。

【参照】国土交通省「国土交通白書 2013」|国土交通省(2013年7月)
https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h24/hakusho/h25/html/n1111000.html

【参照】総務省「令和3年版 情報通信白書」|総務省(2021年7月)
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd132100.html

【参照】総務省「平成30年版 情報通信白書」|総務省(2018年7月)
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd101100.html

【参照】経済産業省「2022年版 中小企業白書・小規模企業白書」|経済産業省中小企業庁(2022年4月)
https://www.meti.go.jp/press/2022/04/20220426003/20220426003-2.pdf


社会全体における雇用のミスマッチ

企業が人材不足に悩んでいるといわれる一方、「働きたいのに仕事がない」「何度も面接に落ち続けていて、どこにも採用されない」といった悩みを抱える人も多くいます。

この現象が起こるのは、求職者が集まりやすい業界ほど、企業が設定している求人要件と求職者が有する能力や経験に乖離があるからだと考えられます。企業側から見ると、「募集はしているものの、採用したい人材がいない」という雇用のミスマッチが生まれているわけです。特別な資格や経験を必要としない単純労働ではこうした傾向は少なく、専門職や技術職ではよく見られます。

また、業務の特性によって離職率が高く、常に人材不足となっている業界もあります。代表的なのは、サービス、医療・福祉、卸売・小売といった業界です。それぞれ、下記のような背景で人材不足に悩んでいます。

・サービス業

「令和2年賃金構造基本統計調査」によると、産業別平均賃金における宿泊・飲食を含むサービス業の賃金は最下位です。一方、拘束時間は長いため、「労働に見合った対価が得られない」と感じる人が多くなっており、応募者が少なく離職率が高い状態が続いています。

【参照】厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」|厚生労働省(2022年4月)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2020/dl/13.pdf

・医療、福祉

医療従事者が不足している背景としては、高齢化社会の中で需要に対し供給が追いついていないことが挙げられます。特に、看護師の有効求人倍率は深刻な状況となっており、2017~2021年のあいだで2倍前後を記録し続けています。看護師は需要に供給が追いついていない人材不足の状況が続いているのです。

一方、介護の現場はどうでしょうか。介護保険の施行後、介護職員の数は飛躍的に増加しました。しかし、日本の高齢化の急速な進展によって、医療サービスや介護サービスを必要とする人は、それ以上に増えています。

以前に比べれば人員が増強されつつあるといっても、ぎりぎりの人数で要介護者を見ている施設が多いのが現状です。そのため、良好な労働環境の提供が困難となっているといえます。介護保険制度によってサービスの価格設定に上限があり、給与が上がりにくいことも、採用を困難にしている背景のひとつでしょう。

【参照】ナースプラス「看護師が不足する原因とは? 政府や事業者による対策も紹介」|マイナビ(2022年1月)
https://kango.mynavi.jp/contents/nurseplus/workstyle/20220118-2145268/

・卸売、小売

卸売・小売も、将来にわたって人材不足が予想されている業界です。その背景には、長時間労働になりやすい、年中無休の店舗で土日に休みづらい、決まった曜日に休みが取りにくいといった労働環境の問題があると考えられます。

人材不足が企業に与える影響

人材不足により仕事が集中している従業員のイメージです。

慢性的な人材不足は、企業にどのような影響を与えるのでしょうか。ここでは、考えられる影響を大きく3つ紹介します。

労働環境の悪化

人手が不足した場合、必要な労働力をカバーするのは、ほかの業務に従事している既存従業員です。結果として、「業務量が増えて勤務時間内に終わらなくなり、残業や休日出勤せざるをえない」「有給が取得しづらくなった」といった、労働環境の悪化につながることが多いでしょう。自分の本来の仕事が後回しになり、生産性が低下することも大いに考えられます。

従業員のモチベーション低下

人材不足で既存従業員一人あたりの労働の質や量が変わる場合、それに見合った報酬や待遇で報いることや、今後の組織編成の方向性を示して納得してもらうことが重要です。

人材不足を改善する有効な対策を打ち出せないまま、既存従業員で業務の穴埋めをしていると、「やりたいことができない」「正当に評価されない」といった不満が社内に蔓延するようになります。

不満はやがて企業への不信感に変わり、仕事に対するモチベーションの低下につながるでしょう。

離職者数の増加

人材不足による労働環境の悪化が放置されていたり、モチベーションの低下に気づかれないままだったりすると、従業員は企業に対する愛着や忠誠心を失います。当然ながら士気も低下するため、いずれは退職を選ぶ可能性が高いでしょう。離職者数が増加すれば、「労働環境が悪い」「仕事がきつい」といったイメージが広まり、新規の採用にも悪影響を与えます。

こうなると、人材不足がさらに人材不足を進行させる、深刻な負のスパイラルに陥るため注意が必要です。どこかで抜本的な改革をしなければ、応募者数を集めることもままならず、ようやく採用してもすぐに辞めてしまう状況が続くことになります。

人材不足に対する有効な対策

人材不足に対する有効な対策をご紹介します。

ここからは、多くの企業が実践している、有効な人材不足対策についてご紹介します。具体的な対策を挙げますので、自社に合った対策の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

労働条件や職場環境を改善し、魅力ある職場作りに取り組む

厚生労働省は、従業員が「働きがい」と「働きやすさ」を実感できる会社ほど従業員の働く意欲が高まり、人材不足の解消につながるとして、適正な雇用管理にもとづく「働きやすい・働きがいのある職場づくり」を推奨しています。「評価・処遇・配置」「人材育成」「福利厚生」「業務・組織・人間関係管理」といった面から、雇用環境の抜本的な見直しと改善に取り組んでみてはいかがでしょうか。

具体的な見直しのポイントとしては、下記のようなものが挙げられます。

<働きやすい・働きがいのある職場づくりへの見直しポイント>

  • 従業員の能力に合った、やりがいのある仕事を提供できているか
  • 働きに応じた、平等感のある給与体系を実現できているか
  • 成果を正当に評価し、昇進、昇給といった目に見える評価をしているか
  • スキルアップ、キャリアアップにつながる学びの機会を提供できているか
  • 従業員のエンゲージメントが高まるような取り組みを実施しているか

魅力ある職場づくりは、取り組んですぐに結果が出るものではありません。しかし、負のスパイラルを断ち切って抜本的な職場環境の改善につなげられる見込みがあり、企業の価値を高めるために有用な取り組みであることは確かです。

健康経営の観点からも非常に重要となりますので、短期的な改善施策と併せて中長期的に取り組んでいきましょう。

【参照】厚生労働省「取り組みませんか? 『魅力ある職場づくり』で生産性向上と人材確保」|厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク(2016年2月)
https://jsite.mhlw.go.jp/ishikawa-roudoukyoku/library/ishikawa-roudoukyoku/antei/taisaku/joseikin/LL290428.pdf


業務のIT化

優秀な従業員を新しく採用できれば、人材不足は解消されます。しかし、採用難の時代に、企業が求める要件を満たした人材を期待どおりに採用することは困難でしょう。

そこで検討したいのが、業務のIT化による効率化、省力化です。近年は、バックオフィスの業務を少数精鋭でこなすためのツールや、営業活動を効率化するツールが次々に登場しています。自社の業務のうち、特に人材不足に悩んでいる業務にITツールを導入することで、担当者を増やさずに効率化を実現し、人材不足に対応することも可能です。

ITツールとしては、営業活動の自動化を支援する「SFA(Sales Force Automation)」、顧客との関係を一元的に管理する「CRM(Customer Relationship Management)」、マーケティング活動を自動化・省力化する「MA(Marketing Automation)」といったツールが代表的です。

アウトソーシングを活用する

企業の業務は、売上に直結し、企業活動に大きな影響を与える「コア業務」と、活動単体では利益を生まず、コア業務をサポートする「ノンコア業務」に分けられます。それぞれが具体的にどのように分けられているのか見ていきましょう。

・コア業務

コア業務は、非定型的で、利益に直結する業務です。業務に携わる人の高度な判断を要し、難度も高くなります。経営戦略の企画立案、営業活動、マーケティング活動などがコア業務に該当します。

・ノンコア業務

ノンコア業務は、コア業務を支援するための定型業務、および定型化できる業務で、利益に直結はしません。高度な判断を必要とされる場面が少なく、難度も低めです。例えば、備品の管理、書類作成、見積作成、顧客リスト精査といった業務が該当します。

ノンコア業務は、月次や年次などで発生することが多く、定期的に相当な人的コストを要しますが、属人的に処理されていて効率化されていないケースも多いです。しかし、業務の特性を考えると、ノンコア業務こそ効率化しやすく、自社で抱え込む必要がない業務であることが多いでしょう。

まずは、ノンコア業務の量と、ノンコア業務に費やしている人件費を確かめ、多すぎるようであれば外部組織にアウトソーシングすることをおすすめします。ノンコア業務を外部に出せば、これまでノンコア業務に従事していた人材をコア業務にシフトさせることができ、利益に直結する業務に人材を集中させることができます。

国が推奨する女性の積極的採用

国も推奨する人材不足対策のひとつに、これまで十分に活用しきれていなかった「女性」を積極的に採用する手法があります。

国は、「働きたい女性が個性と能力を十分に発揮できる社会」の実現を目指しており、事業主に「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画の策定・届出」および「女性活躍推進に関する情報公表」を義務付ける「女性活躍推進法」が改正されました。

これを受け、大企業をはじめとした多くの企業が、女性を含めた有能な人材が活躍できる環境づくりに注力し始めています。

女性のキャリアは、男性に比べて結婚や出産、育児といったライフイベントに影響を受けやすく、「働きたいけど、子供をよそに預けられない」「夫の転勤で、仕事を辞めざるをえなかった」といった理由で、キャリアをあきらめる人が少なくありません。

これは、企業の戦力になりうる優秀な人材が、潜在的に多くいるということでもあります。短時間勤務制度や在宅勤務制度の導入、託児所の設置、ベビーシッターサービスを利用する際の費用補助など、家庭と仕事の両立を目指す女性が働きやすい環境を整えることで、能力ある即戦力を採用できる可能性が高まるのです。

また、女性を採用することによって、次のような効果も期待できます。

・女性視点での製品やサービスの改善

社会のニーズに敏感な女性ならではの価値観や意見が、企業に革新的なアイディアをもたらす可能性があります。

・社会的評価の向上

多様性が求められる現代において、性別にかかわらず能力ある人材を積極的に採用している企業を世の中は高く評価します。偏りのない採用は、企業の価値向上につながります。

【参照】厚生労働省「【労働者数101人以上~300人以下の事業主の皆様へ】令和4年4月1日改正女性活躍推進法の義務化について」|厚生労働省東京労働局(2022年3月)
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/kinto2/joseikatsuyaku300ika.html

シニアの積極的採用

シニアについても、65歳までの雇用確保が事業者に義務付けられたほか、65歳から70歳までの就業機会確保が努力義務となりました。65歳以上への定年引上げや、高齢者の雇用管理制度の整備、高齢の有期契約労働者の無期雇用への転換などを行う事業主には、国から補助金(※)が支給されます。

こうした後押しもあって、さまざまな業界で積極的なシニア採用が行われるようになりました。

※受給には要件を満たす必要があります。要件の詳細は下記の「65歳超雇用推進助成金」でご確認ください。

【参照】厚生労働省「65歳超雇用推進助成金」|厚生労働省(2022年1月)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000139692.html

また、シニアの採用には、人材不足の解消以外に、下記のようなメリットがあります。

・即戦力を採用できる

シニアの中には、優れた知見と豊富な経験、技術、人脈を持ち、定年後も働き続けたいと考えている人が少なからず存在します。企業にとっては、そういった方々を即戦力として採用するチャンスがあります。

・若手の教育を任せられる

かつて、役職者としてチームをまとめていた人や、人事を担当していた人なら、若手人材の教育も任せられる可能性があります。従業員のスキル向上はもちろん、人材育成スキルの伝承にもつながるでしょう。

業務プロセスを見直し、人的資源を効率的に活用する

慣習的に行われてきた業務は、客観的に見ると合理的とはいえない場合もあります。当たり前だと思っている業務も一度、客観的に見直し、非効率な業務の改善を図りましょう。

プロセスの削減や自動化を進めることで、人材に余裕が生まれ、人的資源を効率的に活用することができるかもしれません。業務プロセスを見直せば、企業にとって必要不可欠な業務が明らかになるため、採用の無駄もなくなります。

学ぶ機会の提供や、副業の許可

既存従業員の能力を引き出して活躍の幅を広げることも、人材不足対策として有効です。学ぶ意欲がある従業員に対して、新たな技術や知見を得る機会を与えれば、これまでとは異なる領域でも力を発揮できる人材に成長してくれるかもしれません。

また、副業を許可する方法もあります。副業は、従業員側としては離職せずに別の仕事に就いて主体的にキャリアを形成できるメリットがあり、企業側も副業する従業員が外部から得た情報や知見によって事業機会を拡大できる可能性があります。副業で開発した能力を業務に活かしてもらえれば、効率的な人材活用につながり、人材不足対策にも効果を発揮するでしょう。

【参照】厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」|厚生労働省(2000年9月)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000192844.pdf

出向支援(在籍型出向)を実施する

人材不足への具体的な対策としては、出向支援(在籍型出向)を実施するのも有効です。これまで、人事の領域において人材は「人的資源=Human Resource」という考え方で捉えられてきました。しかし、「資源」とは、コストとして消費されるものという考え方でもあります。

一方、「人的資本=Human Capital」は、「人材は、能力を磨くことで利益や価値を生む存在である」と捉えます。つまり人材は、コストではなく投資という考え方です。在籍型出向は、人材の能力を磨くという点において優れた結果をもたらす可能性があり、人的資本の観点でも有効です。

「ステップ – 企業と人を健康でつなぐ」では、「マイナビ出向支援」によって初めて在籍型出向を実施し、研修制度の一環として在籍型出向を継続的に利用するようになった事例を紹介しています。人材不足に悩む方はもちろん、人材に対して投資をしていきたい方は、ぜひ下記を参照ください。

【おすすめ参考記事】

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人材不足解消の成功事例

EXAMPLE

ここではさまざまな取り組みにより、実際に人材不足を解消した企業の成功事例をご紹介します。人材不足解消の検討をする際の参考にしてください。

高木綱業株式会社:シニアの積極雇用で、中核人材の育成に成功

同社は、労働力は確保できていたものの、将来の幹部候補となる技術者が不足していました。要件を満たす人材からの応募がなかったため、高度な技術を有する自社の従業員にできるだけ長く働いてもらえるよう、シニアの積極採用に舵を切りました。

具体的には、定年年齢の60歳を超えても、本人に意思がある限り再雇用契約する方針を決定。シニアの働きやすさに配慮し、下記のような環境を整えました。

<シニアが働きやすい環境の整備>

  • フルタイム、週3日勤務、時短勤務などから自由に勤務形態を選択できる
  • 時間外労働は原則なし(どうしても必要な場合は上長の指示した時間内でのみ行う)
  • 有給休暇の取得を積極的に推奨
  • 産業医と連携して健康面に配慮

この取り組みの結果、高品質な製品を製造できる人材が長く会社に貢献してくれるようになっただけでなく、シニアから若手への技術指導が積極的に行われるようになり、中核人材の育成も進んでいます。

このような即戦力確保の手法としては、何らかの理由で自社を退職した人材を再雇用する「アルムナイ制度」もあります。アルムナイ制度のメリットは、自社をよく知っていて、育成にコストがかからない人材を即戦力として雇用できる点です。終身雇用制度が終焉を迎えた今、「戻ることのできる会社」は企業のブランディングとしても効果的です。

【参照】ミラサポPLUS 中小企業向け補助金・総合支援サイト「高度な技術を有するシニア人材を無期限で再雇用。若手社員への技術指導による中核人材育成にも着手。」|経済産業省(2020年5月)
https://jirei-navi.mirasapo-plus.go.jp/case_studies/540

株式会社下部ホテル:従業員のマルチタスク化で慣習的な勤務スタイルから脱却し、従業員満足度が向上

旅館業務では、接客スタッフを中心に「中抜け業務」と呼ばれる勤務スタイルが常態化しています。中抜け業務とは、朝食の提供後6時間の休憩を挟み、その後に夕食の提供に従事する働き方です。この働き方は拘束時間が長く、休み方が変則的なため、従業員満足度の低下と採用難の原因となっていました。

同社はこれを改善するため、まずは接客・フロント・内務等の部署を「サービス部」に統一。1人が横断的に業務を担うマルチタスク型の組織に改革するとともに、中抜け業務を原則廃止してシフト制を導入しました。

これにより、繁忙期も増員せずに顧客対応することが可能になり、人件費を増加させずに人出不足をカバーできるようになったそうです。中抜け勤務と残業時間が減り、年間休日が増えたことで、従業員満足度も向上しています。

【参照】ミラサポPLUS 中小企業向け補助金・総合支援サイト「社員のマルチタスク化によって、中抜け勤務が削減し、年間休日数も増加。社員の満足度が向上。」|経済産業省(2020年5月)
https://jirei-navi.mirasapo-plus.go.jp/case_studies/556

株式会社ユナタ:人柄優先の採用活動で、意欲ある就職氷河期世代の採用に成功

提案営業ができるシステムエンジニアがなかなか採用できずにいた同社。そこで、やりたい業務が明確な中途従業員に対象を絞り、近畿経済産業局主催の就職氷河期世代向け合同企業説明会「30代・40代からの『正社員ライフ』応援就職・転職説明会」に出展しました。

合同説明会からの採用においては、前職の雇用形態にとらわれず、人柄重視の採用を行う方針を徹底。社長、および同世代従業員2人とのフランクな座談会の時間を設けて人物の理解に努めるとともに、応募者の「やりたいこと」「できること」を確認し、就職氷河期世代のシステムエンジニアを採用しました。

企業側は応募者の人柄をよく知った上で安心感を持って採用でき、応募者側は企業の魅力や働く意義を理解して入社しているため、入社後も長期的な活躍が期待できます。

【参照】ミラサポPLUS 中小企業向け補助金・総合支援サイト「人柄を重視の採用で就職氷河期世代のシステムエンジニアの採用に成功」|経済産業省(2020年5月)
https://jirei-navi.mirasapo-plus.go.jp/case_studies/1612

自社に合った対策で、人材不足を解消しよう

人材不足解消して、社員が笑顔になるイメージです。

人材は企業経営の要です。課題を放置したまま人材不足が進んでいけば、日本企業の多くが経営の危機に直面することになります。少子高齢化が進む日本において、人材不足への対応は喫緊の課題となっています。ぜひ今回、ご紹介した対策を参考にして、人材不足解消に踏み出してください。

雇用過剰の企業と人材不足の企業とのあいだでは、雇用シェア(人材シェア)を行う「在籍型出向」の導入も効果的です。対策の選択肢のひとつとして、早期に導入を講じてみてはいかがでしょうか。

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出向支援でご希望に合う人材が見つからない場合や、より専門的なスキルが必要な場合は、
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<監修者>
丁海煌(ちょん・へふぁん)/1988年4月3日生まれ。弁護士/弁護士法人オルビス所属/弁護士登録後、一般民事事件、家事事件、刑事事件等の多種多様な訴訟業務に携わる。2020年からは韓国ソウルの大手ローファームにて、日韓企業間のМ&Aや契約書諮問、人事労務に携わり、2022年2月に日本帰国。現在、韓国での知見を活かし、日本企業の韓国進出や韓国企業の日本進出のリーガルサポートや、企業の人事労務問題などを手掛けている。



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