再就職支援とは?人員整理が必要な際に検討したいサポートを解説

再就職支援の活用方法とは?転職支援との違いや人員整理について解説

人員整理が必要な際に検討したいのが再就職支援です。再就職支援の概要から再就職支援が必要なシーン、再就職支援を行うべき理由、再就職支援の方法まで詳しく解説します。

目次[非表示]

  1. 1.再就職支援とは?人員整理が必要な際に検討したいサポートを解説
  2. 2.退職が決まった人の次のキャリアをサポートする再就職支援
  3. 3.再就職支援が必要なシーン
    1. 3.1.経営悪化による雇用調整
    2. 3.2.黒字リストラ
  4. 4.再就職支援を行うべき理由
    1. 4.1.解雇回避の努力義務を果たすため
    2. 4.2.会社都合での退職者をケアするため
    3. 4.3.企業としてのイメージダウンを回避するため
    4. 4.4.従業員の反発を回避するため
  5. 5.再就職支援の方法
    1. 5.1.産業雇用安定センターを活用する
    2. 5.2.再就職支援サービスを活用する
  6. 6.再就職支援と併せて、転籍出向(移籍)も検討しよう
  7. 7.再就職支援と、人材紹介や転職サイトとの違い
    1. 7.1.人材紹介
    2. 7.2.転職サイト
  8. 8.再就職支援の方法を選ぶ上でのポイント
    1. 8.1.離職する従業員の年齢や特性を見る
    2. 8.2.退職者の希望を踏まえて決める
  9. 9.再就職支援で利用できる助成金
  10. 10.企業価値向上のためにも、離職者の再就職を支援しましょう

再就職支援とは?人員整理が必要な際に検討したいサポートを解説

業績の悪化や組織の若返りなどを目的として、やむなく人員整理に踏み切る。そんな決断が必要な場面もあることでしょう。しかし、検討を重ねた結果の決断とはいえ、会社のために力を尽くしてくれた従業員をただ辞めさせて終わりにするのは避けたいものです。

ここでは、退職者のキャリアが途絶えないようサポートする、「再就職支援」について紹介します。再就職支援の概要から再就職支援が必要なシーン、再就職支援を行うべき理由、再就職支援の方法まで詳しく解説します。

退職が決まった人の次のキャリアをサポートする再就職支援

再就職支援(アウトプレースメント)は、業績悪化や自然災害による影響などでリストラ対象になった人や、早期退職制度に応募した人など、会社都合で退職が決まった人の次のキャリアをサポートする仕組みです。

元々は1960年代初頭、主に管理職の再就職を支援する必要性からアメリカで始まりました。国内においては、1980年代初頭に初めての再就職支援会社が設立され、バブル崩壊後の不況によるダウンサイジングが本格化した1995年以降にサービスが活発化しています。

再就職支援と一般的な転職支援との違いは、候補者を雇い入れる企業側ではなく、余剰人材を削減する企業側が費用を負担する点です。会社に貢献してくれた従業員がスムーズに次の仕事に従事できるよう、社会的な責任として導入する企業が多いようです。

退職する従業員はもちろん、会社に残る従業員にも安心を与える仕組みであり、従業員の心身の健康を守る健康経営の観点からも重要だといえるでしょう。

再就職支援が必要なシーン

再就職支援は、原則として会社都合で退職を余儀なくされた人に対して実施するものです。具体的には、下記の2つのシーンが該当します。

経営悪化による雇用調整

企業の業績は、さまざまな外部要因を受けて変動します。普段からリスクヘッジをしていても、予期せぬ自然災害や感染症の流行によって拠点撤退を決断せざるをえなくなったり、顧客ニーズの多様化・複雑化に対応できずに事業を縮小したりすることもあるでしょう。

このような経営悪化のあおりを受けて、通常なら問題なく雇用され続けていた従業員の退職が不可避となった場合は、再就職支援でフォローすることが望ましいといえます。

黒字リストラ

人員削減というと、真っ先に経営悪化によるリストラが思い浮かびますが、企業が既存従業員の削減を図る理由はひとつではありません。組織の若返りや先進的な技術の導入を目的として、業績が黒字であっても人員を削減することがあります。

黒字リストラは、その目的の性質上、対象となる従業員の大部分が40~50代の中高年層です。対象となる従業員は知識や経験は十分にあるものの、年齢がネックになって転職活動は難航することが多いでしょう。

転職活動は長引けば長引くほど求職者にとって不利になることから、手厚い再就職支援で早期に次の職場への橋渡しをしたいところです。

再就職支援を行うべき理由

再就職支援を行うべき理由

再就職支援を行うべき理由は、大きく4つあります。それぞれどのような理由なのか、詳しく見ていきましょう。

解雇回避の努力義務を果たすため

企業には解雇回避の努力義務があります。会社都合での退職を避けるためには、さまざまな手段を十分に尽くさなくてはなりません。解雇回避の努力義務を尽くすためにも、再就職支援は必要なのです。

解雇回避としては、下記のような一定の努力が企業には求められます。

<解雇回避の具体的な手段>

  • 残業削減や労働時間の短縮
  • 他部門への配転
  • 関連企業への出向
  • 新規採用の中止
  • 希望退職者の募集
  • 一時帰休の実施
  • 資産売却
  • 雇用調整助成金の利用

会社都合での退職者をケアするため

会社都合での退職は、対象となる従業員にとって寝耳に水の出来事であることがほとんどです。業績が悪化していることは薄々感じていたけれど、まさか自分が…と呆然とする人も多いでしょう。

主体的な転職活動を経て退職する場合と異なり、会社都合での退職者は自社で働き続けることを前提としたキャリアプランしか描いていない場合も多く、そのまま退職すれば経済的にも精神的にも追い詰められることに。また、新卒から同じ会社で働き続けている人の中には、履歴書の書き方を忘れた人や、職務経歴書の書き方がわからないという人も一定数います。

退職した従業員を支援する義務が企業にあるわけではありませんが、一度はお互いに信頼し合って雇用関係を結んだ以上、従業員の退職後の生活基盤とキャリアの安定をサポートすることは企業の道義的責任だといえます。

企業としてのイメージダウンを回避するため

人員整理をして何もフォローせずに終わりにすると、去っていく従業員には「一生懸命やってきたのに、最後にひどい仕打ちをされた」という印象が残ります。企業に対するイメージが悪化し、誰かに愚痴を言ったり、口コミサイトに厳しい評価を書き込んだりしたくなるかもしれません。

こうしたことが続くと、世間に「従業員を大切にしない企業」という評判が広がり、イメージダウンにつながります。再就職支援は、企業としてのイメージダウンを回避するためにも必要といえます。

従業員の反発を回避するため

企業に残る従業員は、リストラで大切な仲間を失ったことによって、企業に対して少なからず反発の気持ちを抱きます。自分もいつ辞めさせられるかわからないと感じ、不安になる人もいるでしょう。

再就職支援には、「やむをえない事情があっても、従業員を使い捨てにしない企業である」ことを社内に示す効果があります。結果として、企業に残る従業員のエンゲージメントを向上させ、事業課題に対して積極的に取り組む姿勢を引き出すことができます。

再就職支援の方法

再就職支援には、大きく2つの方法があります。具体的にどのような方法なのかご紹介しましょう。

産業雇用安定センターを活用する

産業雇用安定センターは、余剰人員が大量に生まれて雇用不安が増していた1987年、当時の労働省、日本経営者団体連盟(日経連)、産業団体などが「失業なき労働移動」を支援する専門機関として設立したものです。

現在では、厚生労働省、経済・産業団体、労働組合、ハローワークなどとの連携のもと、全国的なネットワークで人材の確保や再就職をサポートしています。

従業員の再就職を検討する企業は、各都道府県にある産業雇用安定センターの地方事務所に相談し、求人の橋渡しを依頼することができます。

再就職支援サービスを活用する

再就職支援サービスは、さまざまな情報源を活用して再就職を支援する仕組みです。企業の早期退職者募集に応じた人や、会社都合で退職を余儀なくされた人に対して、人材紹介会社に求人の依頼を行います。

離職する従業員の勤務先である企業が、再就職支援サービスを提供する人材会社に委託費用を払って再就職先を探してもらうため、従業員は個人で再就職先を探すよりも負担が少なく済みます。

再就職支援と併せて、転籍出向(移籍)も検討しよう

再就職支援は、すでに離職が決まった従業員の転職をサポートする仕組みです。キャリアが途絶えないよう手厚くフォローすることが目的であるとはいえ、いったんは会社都合での離職を言い渡すことになるため、従業員のショックはかなり大きいでしょう。「業績が悪くなった途端、ここまでがんばってきた従業員を容赦なく切り捨てた」と感じ、再就職支援をしてもネガティブな気持ちが払拭できない従業員もいるかもしれません。

こうした事態を防ぎつつ人員整理の目的を果たし、かつ従業員のキャリアを保証する仕組みが、「転籍出向(移籍)」です。転籍出向(移籍)は、従業員が余剰人員の削減を図りたい企業(転籍元企業)との雇用関係を解消し、人手不足だったり、経験豊富な人材を求めていたりする新しい企業(転籍先企業)と新たに雇用関係を結び直す雇用の方法です。

再就職支援との大きな違いは、転籍出向(移籍)は従業員の在職中に行われるサポートであることです。転籍出向(移籍)は「従業員との合意」が必要ではありますが、リストラを伝えざるをえない再就職支援に比べて、「転籍出向(移籍)という形で、他社でがんばってほしい」という伝え方ができる点で、従業員の心の負担も軽減することができるでしょう。

また、転籍出向(移籍)サービスは、再就職支援サービスとは異なり、転籍が成約してから有償となる成功報酬型を導入しているケースも多いため、利用を検討する際のハードルが低いのも特徴です。

なお、転籍出向(移籍)とよく似た言葉に「在籍型出向」がありますが、これは出向元企業との雇用関係を維持したまま、出向先企業とも雇用関係を結ぶ契約となります。転籍出向(移籍)は原則として転籍元に復帰することはありませんが、在籍出向は一定期間終了後に出向元に復帰することが約束されています。

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再就職支援と、人材紹介や転職サイトとの違い

再就職を目指す際に利用できるサービスとして、「人材紹介」と「転職サイト」があります。再就職支援と、それぞれのサービスの違いについても見ていきましょう。

人材紹介

再就職支援と人材紹介は、いずれも人材紹介会社が行っているサービスで、人手が欲しい企業と仕事が欲しい求職者をマッチングさせる点は共通しています。しかし、この2つは、ビジネスモデルが大きく異なります。

再就職支援の場合、費用を負担するのは余剰人員の削減を図る企業(従業員が離職する企業)です。企業は、再就職支援をする会社に委託費用を支払って再就職先の紹介を依頼します。同時に、離職する従業員は再就職支援をする会社に登録することで、自分の経験やスキルにマッチした求人の紹介を受けることができます。

一方、人材紹介は、人を採用したい企業が利用するサービスです。人材募集中の企業が人材紹介会社に登録し、求人の依頼をすると、人材紹介会社は自社に登録している転職希望者の中から条件に合った人材をマッチングして紹介します。

この時点では、人材募集中の企業にも、転職希望者にも費用の負担はありません。人材紹介会社のサポートによって転職が成約した場合にのみ、採用した企業が人材紹介会社に成功報酬を支払います。

再就職支援のために人材紹介を利用する場合、登録するのは退職する従業員自身であり、退職元企業による実質的なサポートではないのです。

転職サイト

転職サイトは、人材を募集している企業の求人情報を求職者が検索・閲覧し、応募まで一貫して行えるサービスです。業界・職種を問わず豊富な情報が掲載されているサイトと、特定の業種や職種に特化したサイトがあります。

いずれも、人材を募集している企業がサイトを運営する会社に掲載費を支払うことで成り立っています。

再就職支援と大きく異なる点としては、人材紹介と同様に、登録や利用は退職する従業員自身が行うことです。退職元企業は従業員の転職活動に関わらないため、従業員をサポートすることにはなりません。また、人材紹介会社のように、キャリアアドバイザーによる書類作成の添削や面接対策といった手厚いサポートが期待できないことにも注意が必要です。

再就職支援の方法を選ぶ上でのポイント

再就職支援の方法を選ぶ上でのポイント

ここまでご紹介したように、会社都合で退職する従業員のキャリアを退職元企業が主体的にサポートする方法には、「産業雇用安定センター経由での再就職支援」「人材紹介会社の再就職支援サービスの利用」「転籍出向(移籍)の提案」の3つがあります。

どの方法でサポートするべきか迷ったら、下記の2つのポイントを押さえて検討しましょう。

離職する従業員の年齢や特性を見る

リストラの対象になることが多いのは、賃金が高く、平均年齢を押し上げている中高年層です。40代、50代になると、専門スキルや高いマネジメント力、豊富な人脈といった突出した力がない限り、転職は容易ではありません。

年齢が高めで、ごく一般的な経験とスキルしかない従業員をリストラした場合、その後の転職が難航するのは明らかです。こうした場合は、再就職先の選択肢を増やすためにも転籍出向(移籍)の活用をおすすめします。

退職者の希望を踏まえて決める

退職する人がどのようなサポートの形を望むかも、考えるべき要素のひとつです。人材紹介会社に再就職支援を依頼した場合、転職が決まるまで企業側に進捗報告が入ります。人によっては、退職元企業との関係をいったん終わらせて、個人で転職活動をしたいと考えることもあるでしょう。

サポートをすることによって、反対に退職者の負担を重くするのは避けたいところです。まずは、退職者に希望を聞いて、最善の方法を選択してください。

再就職支援で利用できる助成金

会社都合でリストラをすることになった企業が下記のいずれかに該当する場合、国の「労働移動支援助成金」の支給を受けることができます。

<労働移動支援助成金の支給対象>

  • 事業規模の縮小等によって離職する労働者に対する再就職支援を、職業紹介事業者に委託した場合
  • 求職活動のために休暇を付与したり、再就職のための訓練を教育訓練施設等に委託して実施したりした事業主

労働移動支援助成金の支給を希望する場合は、再就職援助計画を作成して公共職業安定所長の認定を受けるか、もしくは求職活動支援基本計画書を作成して都道府県労働局に提出します。

【参照】厚生労働省「労働移動支援助成金(再就職支援コース)」|厚生労働省(2019年10月)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21924.html

企業価値向上のためにも、離職者の再就職を支援しましょう

再就職支援は一定期間雇用関係にあった従業員に対する企業が最大限の敬意を示す方法です。

会社都合での退職は、言い渡された従業員の精神的ダメージが大きい上、経済面やキャリア構築の面で不安が残ります。対象のほとんどが、再就職が難しい中高年層であることも、懸念点のひとつでしょう。

再就職支援は、一定期間雇用関係にあった従業員に対して企業が最大限の敬意を示す方法です。こうした姿勢で従業員と向き合い続ければ、やがて企業価値の向上にもつながります。

健康経営の観点からも、人材を使い捨てにせず、企業としての社会的責任を果たすことは非常に重要です。健康経営とは、「人という資源を資本化し、企業が成長することで、社会の発展に寄与する」というもの。再就職支援は、企業が健康経営を目指す上で、避けては通れない仕組みとなっていくに違いありません。

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<監修者>
丁海煌(ちょん・へふぁん)/1988年4月3日生まれ。弁護士/弁護士法人オルビス所属/弁護士登録後、一般民事事件、家事事件、刑事事件等の多種多様な訴訟業務に携わる。2020年からは韓国ソウルの大手ローファームにて、日韓企業間のМ&Aや契約書諮問、人事労務に携わり、2022年2月に日本帰国。現在、韓国での知見を活かし、日本企業の韓国進出や韓国企業の日本進出のリーガルサポートや、企業の人事労務問題などを手掛けている。

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