ストレスチェックの義務化とは?制度の内容や手順、注意点などを解説
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- 1.ストレスチェックの義務化とは?制度の内容や手順、注意点などを解説
- 2.ストレスチェックとは、労働者を守ることを目的とした検査
- 3.ストレスチェック義務化の対象は、常時50人以上の従業員を雇用している全事業場
- 3.1.ストレスチェック制度の創設背景
- 3.2.ストレスチェック制度の内容
- 3.3.ストレスチェックの対象労働者
- 3.4.ストレスチェックの目的
- 4.ストレスチェック制度に関わる人々
- 5.ストレスチェックの手順
- 5.1.1.導入前の準備
- 5.2.2.ストレスチェックの実施
- 5.3.3.結果の通知・面接指導
- 5.4.4.結果の保存
- 5.5.5.労働基準監督署への報告
- 5.6.6.調査結果を職場のメンタルヘルス対策に活用する
- 6.ストレスチェックの非対象者
- 6.1.海外の現地法人に勤務している人
- 6.2.休職している人
- 6.3.雇用が予定されている人
- 7.ストレスチェックを拒否されたときの対応
- 8.ストレスチェック制度の注意点
- 9.ストレスチェックの義務化で活用できる助成金
- 10.ストレスチェックで健康経営を実践しましょう
ストレスチェックの義務化とは?制度の内容や手順、注意点などを解説
2014年の労働安全衛生法改正により、常時50人以上の従業員を雇用する会社では年に1回以上の「ストレスチェック」の実施が義務化されました。ストレスチェックを実施しない企業や、実施しても虚偽の報告を行った企業に対する罰則も定められています。
今回は、ストレスチェックが義務化された背景から、制度の内容、法律に則って確実に実施するための手順まで詳しく解説します。ストレスチェックを行う際の注意点も具体的に紹介しますので、ぜひお役立ててください。
【参照】安全衛生情報センター「労働安全衛生法 第十二章 罰則(第百十五条の三-第百二十三条) 労働安全衛生法第120条」|中央労働災害防止協会
https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-1/hor1-1-1-12-0.htm
ストレスチェックとは、労働者を守ることを目的とした検査
ストレスチェックは、労働者が自身のストレスの状態を客観的に把握し、ストレスを溜めすぎる前に対処することを目的とした検査です。管理者側は、労働者のストレスチェックの結果を基に職場の課題を把握し、改善につなげることができます。また、ストレスが特に高く危険な状態にある労働者を早期に見つけ出し、産業医の面談を実施するなどの対策を取ることも可能です。
ストレスチェックは、ストレスに関する質問に対して、「そうだ」「まあそうだ」「やや違う」「違う」から最も当てはまるものを労働者が選択し、丸を付けていく簡単な検査となっています。
ストレスチェック義務化の対象は、常時50人以上の従業員を雇用している全事業場
ストレスチェックは、2014年の労働安全衛生法の改正により、2015年から義務化されました。対象は、常時50人以上の従業員を雇用している全事業場です。事業場の法人格の有無は問われず、全事業場が対象となります。
ストレスチェック制度の創設背景
ストレスチェック制度が創設された背景には、仕事中に起きた何らかの原因により、精神的な不調を訴えて労災認定された労働者の増加があります。2006年、その状況を重く見た厚生労働省は、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を定めて職場のメンタルヘルスケアの実施を推奨しました。
しかし、2009年から2012年にかけて、精神障害による労災認定は3年連続で過去最高を記録するなど増加の一途をたどります。ハードワークに従事していた人が業務によってうつ病の発症や急性ストレス反応などを起こして命を絶ち、過労自殺と認定されるケースもありました。
そこで、より早く、より確実に労働者のストレス状態を把握して改善につなげることを目的として、ストレスチェックとその後の対応などをまとめたストレスチェック制度が創設されたのです。
【参照】独立行政法人労働者健康安全機構「職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~」|厚生労働省(2017年3月)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000153859.pdf
ストレスチェック制度の内容
ストレスチェック制度が定める主な内容は、下記の通りです。
<ストレスチェック制度の主な内容>
- 労働者の心理的な負担の程度を把握するため、医師、保健師による年に1度の検査(ストレスチェック)を事業者に義務付ける
- ストレスチェックの結果を通知後、労働者からの希望があれば医師の面接指導を実施する。また、医師の意見を聞いた上で、必要に応じて配置の転換や作業の転換、労働時間の見直しなどの措置を講じる
- 国は、ストレスチェックを行う医師・保健師などに対する研修の充実化・強化を図り、労働者に対する相談・情報提供体制の整備に努める
【参照】厚生労働省労働基準局安全衛生部「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度に関する検討会報告書」|厚生労働省(2014年12月)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000181867.pdf
ストレスチェックの対象労働者
ストレスチェックの対象者は、正社員だけではありません。労働者との契約期間が1年以上の場合、アルバイトやパート、契約社員、派遣社員なども対象です。出勤する日数が週に1度であっても、契約期間の条件を満たしている労働者であればストレスチェックの対象となります。
具体的には、常時使用する労働者であることを前提として、下記のいずれかの条件が定められています。
<ストレスチェック対象労働者の条件>
- 期間の定めのない労働契約により使用される者
- 期間の定めのある労働契約により使用される者であって、当該契約の契約期間が1年以上である者、または契約更新で1年以上の使用が予定されている者、および1年以上引き続き使用されている者
【参照】厚生労働省「ストレスチェック制度導入ガイド」|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/160331-1.pdf
ストレスチェックの目的
ストレスチェックの目的は、労働者が自らのストレスの原因や状態を把握し、セルフケアでメンタルヘルス不調を未然に防止することにあります。また、高ストレスの場合は面接指導を希望することで、就業上適切な措置を受けてストレスの原因となっている事象の軽減を目指します。
労働者からの申し出やストレスチェックの結果を企業側で分析すれば、職場の環境改善につなげたり、労働生産性を向上させたりすることにも結び付くでしょう。
ストレスチェック制度に関わる人々
ストレスチェックに関わる人々は、大きく「実施者」「実施事務従事者」の2つに分けられます。それぞれどのような役割を担うのか見ていきましょう。
実施者
実施者の役割は、調査票や評価方法、高ストレス者の選定基準に意見を述べたり、高ストレス者への面接指導の有無を判断したりすることです。
実施者としてそのような仕事に従事できるのは、法令で定められた医師(産業医)、保健師などです。精神保健福祉士、歯科医師、看護師、公認心理師も、一定の研修を受ければ実施者になることができます。
なお、医師や保健師など、実施者になれるスタッフが事業場内にいなければ、外部機関に委託します。その際、ストレスチェックのデータはもちろん、従業員の個人データも正確に管理できる外部機関であるか、セキュリティ体制の有無をチェックしましょう。
実施事務従事者
実施者の指示を受けて、ストレスチェック実施に伴う事務的作業を行うのが実施事務従事者です。個人の検査結果データの入力やデータ保存などが主な仕事で、特に必要な資格はありません。一般的には、社内の衛生管理者、産業保健スタッフから選ばれることが多いでしょう。
ストレスチェックの手順
ここからは、ストレスチェックの実際の流れを見ていきましょう。ストレスチェックの手順を、大きく6つに分けて紹介します。
1.導入前の準備
まずは従業員に対して、メンタルヘルス不調の未然防止に向けてストレスチェックを導入することを周知しましょう。続いて、ストレスチェックの実施体制などについても話し合い、社内ルールを決めていきます。
2.ストレスチェックの実施
ストレスチェックは紙とウェブ、いずれかの媒体で実施できます。紙で実施する場合は質問票を配布し、ウェブで行う場合は該当するURLを従業員に知らせます。
3.結果の通知・面接指導
ストレスチェックの調査票を集計し、一人ひとりの状態を把握します。それらの状態を踏まえて、実施者や実施事務従事者が従業員に結果を通知します。個人の「ストレスプロフィール」「ストレスの度合い」「面談指導の対象かどうかの判定」の3つについては、必ず通知しなくてはなりません。
結果を見た従業員から面接の希望があれば、産業医との面談をアサインして受診につなげます。必要であれば職場内の環境改善も実施しましょう。
4.結果の保存
面接指導をした結果内容については、事業場ごとに5年間の保存義務があります。書面、もしくはデータで保管しましょう。
5.労働基準監督署への報告
ストレスチェックの実施後は、その結果と面談実施状況を労働基準監督署に報告する義務があります。
ストレスチェックは条件を満たした企業の義務ですが、実施しなかったからといって罰則はありません。ただし、ストレスチェックを実施したか否かにかかわらず、検査結果報告書の労働基準監督署への提出を怠る、あるいは虚偽の報告をした場合は、50万円以下の罰金が科せられるため注意してください 。
【参照】安全衛生情報センター「労働安全衛生法 第十二章 罰則(第百十五条の三-第百二十三条) 労働安全衛生法第120条」|中央労働災害防止協会
https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-1/hor1-1-1-12-0.htm
6.調査結果を職場のメンタルヘルス対策に活用する
ストレスチェックの目的は、メンタルヘルス不調を防止することと、調査結果を活用して職場改善につなげることです。
従業員のストレスの原因となっていることや、人間関係の問題などはできるだけ具体的に把握し、今後のメンタルヘルス対策に活かしてください。
【参照】厚生労働省「ストレスチェック制度 簡単!導入マニュアル」|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150709-1.pdf
ストレスチェックの非対象者
前述した通り、ストレスチェックの対象者は広範です。しかし、労働者であっても対象にならない場合があります。具体的には、下記の3つのケースが挙げられます。
海外の現地法人に勤務している人
海外現地法人に雇用されている場合は 、ストレスチェックの対象外です。なお、海外在住者で日本の法人に在籍している場合や、実施期間中に出張などで不在の場合は、実施義務があります。
休職している人
産休・育休、介護休暇、ケガや病気による入院などで休職している場合は、ストレスチェックを実施する義務はありません。
雇用が予定されている人
入職前の労働者は、ストレスチェックの対象ではありません。
ストレスチェックを拒否されたときの対応
ストレスチェック実施の条件を満たす企業には実施の義務がある一方、労働者にはストレスチェックを拒否する権利があります。もし、従業員がストレスチェックを拒否したら、企業側が無理に受けさせることはできません。
しかし、受験率が低いことに対する罰則などはないものの、できれば受診率を上げてメンタルヘルス不調者は減らしたいところです。
従業員がストレスチェックを敬遠する理由として考えられるのは、判明した個人データの扱いや、ストレスの原因が職場の人間関係にあった場合の企業の対応などに対する不安です。ストレスチェックを拒否する労働者がいた場合、まずは「受けたくない」理由を聞き、丁寧にストレスチェックの目的とデータの活用範囲、管理方法について説明しましょう。
また、ストレスチェックは受けたものの、高ストレス者に推奨される面接指導を拒否する従業員もいるかもしれません。面接を受ける際には、自身に通知された結果内容を企業に知らせなければならないため、被面接指導者の心理的ハードルは高いといえます。企業側は、社内で面接指導を受けるほかに、別の相談窓口を利用する方法や、任意の医療機関を受診する方法があることも従業員に丁寧に知らせてください。
ストレスチェック制度の注意点
ストレスチェック制度を実施するにあたっては、押さえておきたい注意点もあります。下記に紹介する2点については、十分に留意してください。
プライバシーの保護
ストレスチェックの結果内容が、本人の意思を無視して企業側に伝わることはありません。そのため、実施者には守秘義務があることを、従業員にはあらかじめ伝えておきましょう。
不利益取扱いの防止
ストレスチェックにおいては、受験しないことや、面接指導を希望しないことによって従業員に不利益な扱いをすることは禁じられています。また、面接指導の結果によって退職勧奨や解雇、不当な配置転換などの対応をすることもできません。
ストレスチェックの義務化で活用できる助成金
ストレスチェックを行う場合は、労働者1人あたり500円の助成金が支給されます。また、面接実施には、1事業場あたり、1回の活動につき2万1,500円の助成金を受けることができます。
助成金支給の対象となる取り組み要件は下記の通りです。
<助成金の対象となる取り組み要件>
- ストレスチェック実施者が決定している
- 医師と契約し、ストレスチェックのうち医療が関わるプロセスを任せられる体制が整っている
- ストレスチェック実施、および面接指導等を行う者が自社の従業員以外である
独立行政法人労働者健康安全機構勤労者医療・産業保健部「令和 3 年度版「ストレスチェック」実施促進のための助成金の手引」|独立行政法人労働者健康安全機構(2021年4月)
https://www.johas.go.jp/Portals/0/data0/sanpo/sanpojoseikin/R3/stresscheck/sc_josei_tebiki_R3.pdf
ストレスチェックで健康経営を実践しましょう
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